「やったな」
「やったみたいだな」
「それにしても、味方をやるなんて、案外アルケミアも残酷だな」
「戦略としては良いと思うが、私個人としては好かない戦略だ」
俺はツヴァイとつぶやきあいながらアルケミアとアインの戦いを見つめる。もちろん槍は刺さったままだ。
「それにしても司殿。その槍は刺さったままで大丈夫なのか?」
「あぁ。俺が死んでいる風にしておかないといけないからな。」
「・・・しかし、奴にはばれているのでは?」
「俺が見た未来では一回だけ奴の目を欺けた。一回でも欺けるならやる意味がある」
少しでも、計画通りに進めるためにはたとえとても低い確率でも実行する。それが、司です。
アルケミアはトリーガーを解除する。魔力体から本来の肉体に戻ってゆく。アインは、不思議そうにアルケミアを見つめる。なんといっているかはわからないが、なぜトリガーを?みたいなことを聞いているのだろう。アルケミアが質問に答えるとアインが切りかかる。アルケミアは何もせずに、ただアインを見つめ続ける。アルケミアの周囲から槍が生成されてアインに向かって飛んでいく。アインは盾を構えながら突き進んでゆく。だが、アインの足元の地面からとげが生える。とっさにジャンプでかわすが、そのとげが、伸びてゆきアインを吹き飛ばす。
「やはり、錬金術というのはなかなか反則だな」
「いや、あれは、アルケミアの頭脳あってこそだ」
錬金術は、すべての物質の原点、通称マテリアルを魔力や周りの物体を使い生成し、それをまた新しい物質に組み替える、というものだ。作り出したい物質のマテリアルの構造を理解していないと作りたいものが作れない。さらに、作り出したいものの明確なイメージも重要になってくる。つまり、戦闘しながら錬金術を使うためには、莫大な集中力、知識、才能が必要になる。そして実際に戦闘ができているアルケミアは、、、
それはともかく、アインが再びアルケミアに向かって走り出す。こいつよく考えたら魔法使ってないよな。
「ツヴァイ。もしかして、アインは魔法を使えないのか?」
「あぁ。アインが、というより、基本的に私たちは魔法を使えない。例外は、ドライをはじめとした魔法特化型のみだ」
なるほど、だとしたらアルケミアはかなり優位だな。遠くから錬金術で殴ってれば勝てるわけだからな。
アインは、アルケミアに向かって走り続ける。アルケミアは再び槍を生成、アインに向かって飛ばす。アインは槍をすべてよける。アルケミアは槍を生成し続ける。アインは、切り捨てたり、防いだり、避けたりしながらアルケミアに向かって走ってゆく。アインは、己の剣の間合いまであと少しのところまで接近に成功する。アインはもらった!と言ってそうな表情をほんのりと浮かべる。
「やったな」
「そうだな。やってしまったな。そこでそういう表情をすると、、、ほら~」
何が起こったかというと、落ちた。それはもう素晴らしいほどに落ちた。二度見するレベルでスムーズに落ちた。
アインが表情でフラグをたてるかなそうなる。ほんとにやれやれだな。今は真剣勝負中なんだぞ?
アインは、壁を蹴りながら地上に這い上がる。その目の前には、当たり前のように槍の雨があった。這い出したばかりで体制が整っていないところにこの攻撃はだいぶきつい。盾を使いどうにか防ぐが、かなり後ろまで飛ばされた。
「それにしても、なぜマスターはとどめを刺さないのだ?」
「アインは今洗脳状態にある。解除するには
「なるほど。洗脳を解くことが目標だから下手に傷つけることもできない、と」
「そういうことだ。さて、洗脳に関しては俺だ手助けするか?」
司は無限収納を展開し中に手を突っ込む。そして取り出したのは、『二丁拳銃 α』。そのっ拳銃をアルケミアの手元に転移させる。アルケミアが手に違和感を感じて右手を見ると、拳銃が握られている。錬金術を使うからか、その銃についてを素早く理解する。アルケミアと俺の視線が合う。俺は口パクで、すきにつかえと伝える。
「わかった。錬金術!」
アルケミアは小さく頷くと錬金術を使用する。
銃はよりアルケミアに合った形に変形、いや、組み替えられていく。立った一発しか弾が込められていない銃(演出)は最終的にライフルのような形になる。アルケミアはその銃をいったんどこかにしまう。おそらく、収納系のスキルを持っているのだろう。
「限界突破!」
アルケミアの周りに茶色の靄がかかる。その靄は、限界突破によって強化された魔力がアルケミアの魔力量を上回ったことによって自然に漏れ出たものだ。アルケミアはその魔力をうまく使い、次々と錬金術を使用する。無数の剣や槍が生成され次々とアインに向かって飛んでいく。
「これはっ!?」
アインは初めて驚いたような表情を浮かべ、盾を構える。次々と盾に武器が当たる。少しずつ盾にひびが入っていく。それから少しして盾は破壊された。
「あなたに私の盾を破壊するほどの攻撃力はなかったはず。なぜ?」
「限界突破っていうスキルがあってね。ありとあらゆるステータスを、一定時間倍にできるんだ。まあその代わり、時間が経過した後、ステータスが一定時間もとの半分になるし、クールタイムもあるし。使い勝手は悪いかな」
「なるほど。お見事です」
アインは再び走り出す。アルケミアは後ろに下がりながら銃を取り出す。
アインはアルケミアが銃を取り出したのを確認すると、スピードを上げてアルケミアに接近する。銃を構えようとしたアルケミアは驚いた表情でアインを見つめる。そして、アインの剣の間合いにアルケミアの銃が入った。
「これで終わりです!『神速』」
神速を使う。それによって銃が中の弾丸ごと切られた。
その直後、パンッ。と乾いた音が響く。
アインがはっ!とした表情でアルケミアの反対側の手を見る。
アルケミアは反対側の手に小型の銃を握っていた。銃口はアインのほうを向いている。銃口の先を見てみてみるとアインの体に穴が開いている。
「動くの早いな」
「作者の都合だろう」
「それは言っちゃだめだぞ」
ツヴァイと俺はたわいもない話をする。もう勝負は決まったようなものだからな。
アルケミアは何かをつぶやく。アインはハッとした表情でアルケミアを見つめる。少しだけ微笑む。右手をゆっくりと上げ、その剣でアルケミアを刺した。そして憤怒の表情をしてアインはつぶやく。
「私の主は主神様だけです。不愉快です。あなたは消します。必ず」
アルケミアは血を流しながら倒れる。当たり前のように剣が貫通してたからな。それに今のあいつはトリガーを起動していないさすがにやばいかな。しょうがないな。
「シオン出番だ」
小さな声でつぶやくと。アインの背後に二本の剣を振り上げたシオンが現れる。そのまま剣を振り被る。アインは剣が当たる瞬間、横に避けようとする。完全に避けることはできず、浅く傷をつける。
「ちっ。邪魔が入りましたか。ここはいったんひかせてもらいます」
「逃がしません!」
シオンは手に一つの玉を手に取り割る。その中から魔法陣が展開される。
「司様!借ります!複合魔法ノヴァ・オブ・ディメンジョン!」
直後、アインとシオンの周辺にもやがかかる。
これって他から見たらこんな風に見えるんだ。知らなかった。
「…暇だな」
「…そうだな」
「…アルケミアさ、治してもいいと思う?」
「…もういいんじゃないだろうか」
アルケミアだけ、もやがかかってもはっきり見える。おそらく、世界からはじき出されたのだろう。
「ツヴァイ、頼んでいいか?」
「無論だ。このくらいなんてことはない」
ツヴァイはアルケミアの前まで近づく。司が魔法を発動する。
「もう少し右だ」
「あいよっと。これくらいか?」
「あぁ。ぴったりだ」
魔法陣から対象がずれていると効力が半減する。別に、俺の魔力量だと、半減しても対して差はないが、なんか、こう、めんどくさい?から?
「
俺がそうつぶやくと、アルケミアの体が光始める。光が収まると、傷ひとつない状態のアルケミアがそこにいた。
「とりあえずこれで大丈夫だな」
「そのようだな。これで、これからどうするのだ?」
そうだな、これからいろいろしないと行けな、、、あ!やべ!やっちまった!
すーーはーー。すーーはーー。落ち着け俺。落ち着け俺。まだ間にあう。今から動けば全然間に合、、、シオンが、いま、いない、だと!?
[シオン!今どんな状態だ!]
[ふぇ!?司様!?どうされたんですか?]
[すっかり忘れていたことだある。それは …]
[それは?]
そう。それは、決して無視してはいけないこと。そう。それは、単純に、
[…大会のこと、忘れてた]
[…あ]
単純に、出ないといけない大会のことを忘れていた。なぜか、予選を通過してしまったから。あとどれくらいだろう。三日くらいか?だとしたら、本来の方法では絶対に間に合わないけど。どうしたものか。
[とりあえず。今やってる戦いはあとどれくらいで終わりそうだ?]
[そうですね。神速が2回、回復が一回残っていますね]
[…まだ当分終わりそうにないと]
[そうなってしまいますね。申し訳ございません]
回復はともかく、神速が残っているのが厄介だな。アインのことだから、的確なタイミングで使ってくるだろう。具体的には、シオンに隙ができたときか、回復した直後か。さすがに神速だけは今のシオンでも対処が難しい。しょうがない、か。アインには申し訳ないが。
[シオン。全力でやっていいぞ。さっさと終わらせて移動だ]
[了解しました]
さてと、今のうちに、いろいろやっておかないとな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます