アルケミア達はアインと向かい合っていた。それぞれ隙を疑いながら、少しずつ立ち位置を変えて、自分のすきをつぶしつつ、お互いににらみ合っていた。
先に攻撃を始めたのは、アルケミア達だった。
「旋空・神速!」
カラフトが旋空シリーズが一つ。旋空・神速を使い先手をかける。その斬撃は、本来の旋空よりも速く、かつ鋭いものだった。
だが、アインは盾で攻撃を防ぐと、剣で切りかかる。本来食らったらそこそこの盾でも一撃で粉砕!とはいかなくても、かなりの損傷を与えることができるはずだったが、アインが持っている盾は傷ひとつつかなかった。カラフトは一瞬だけ目を見開くが、すぐに切り替えた。どこかの転移者のおかげで、予想外のことへの耐性が付いていたのだろう。
アインがカラフトに向かって剣を振り下ろす瞬間。
「…飛翔障壁」
オビッサが飛翔障壁を使い。アインの右側の死角から切りかかってきた。
「
アルケミアが片手に光剣を出現させて左の死角から切りかかる。おまけに、ステイの援護射撃付きだ。
だが、アインは盾と剣を使い起用に攻撃をかわし、反撃をしてくる。
「『神速』」
アインが使ったのは、ツヴァイが使用したスキルと同じ、『神速』だった。
その剣筋はカラフトとアルケミアを軽く引き裂いた。オビッサは飛翔障壁を使い、回避していた。
「ちっ。こいつ結構できるな。こりゃ短期決戦狙わないと無理そうだな」
「カラフトの言う通りかもね。それじゃ。大魔帝、アルケミアの名において、四魔王のガイストの使用を許可する」
アルケミアは、声色を変え、まさに女王と言える雰囲気でガイストの許可をだす。
「「「「はっ。『ガイスト』起動!」」」」
「
「
「
「
「…双月・コネクタ起動」
「「フルアーマー起動」」
四魔王全員がガイストを起動。オビッサは双月を起動し、大鎌の形にする。ザシュとステイがフルアーマーを使い、守護鉄壁、遠距離狙撃銃+の二刀流、二丁持ちをする。それぞれ準備が整ったところで、アルケミアが駆け出す。それに合わせて、カラフト、オビッサも駆け出す。ステイはその場で遠距離狙撃銃+を構え、ザシュは隙を窺っていた。
「旋空・十文字!」
「・・・飛翔障壁」
「
それぞれ今できる最大の攻撃を放つため、隙を作ろうと奮闘する。
だが、アインも盾と剣を使い、攻撃をいなし、防ぎ、反撃をしてくる。神速を使わないことからまだ余裕だということがわかる。アルケミアもそのことに気が付いたようで、苦虫を百匹くらい嚙み潰したような顔をする。
「どうやら、僕たちは敵として認識されていないみたいだね」
「そうみてぇだな。こりゃどっちにしろ、一人おとりが必要か」
カラフトがそう言うと、魔族側のニンゲンは一斉に考え始める。体はアインに攻撃をしたまま。まずアルケミアをここで失うのは損失がでかすぎる。カラフト、オビッサはアルケミアほどでなくても攻撃の要を担っている。ステイの援護もないと隙を作るどころの派内ではないだろう。どちらにせよ、防御を捨てるのなら——。
「私が行きましょう。この戦いで役に立てる唯一の機会でしょうから」
ザシュがそう提案する。アルケミア達もその結論にいたっていたようで、申し訳なさそうな顔をしながら、
「ザシュ。ごめんね」
と短くつぶやいた。ザシュは少しだけ笑みを浮かべた後、守護鉄壁を剣の形にし、アインに向かって襲い掛かる。おそらくスラスターを使ったのだろう。普段の彼からは想像もできない強攻さ、素早さだった。
ザシュはその素早さを生かし、アインに切りかかる。
「
その手にあったのは、二本の月光だった。
ガイストを剣戟特化に変更すると、その前に手にしていた月光が黒色に変化する。根元から何本も線が入っていくように変化していった月光はまがまがしい雰囲気をまとっていて、通常の月光ではないことがひしひしと伝わってくる。
それから放たれた旋空は速さ、威力ともに桁違いのものとなっていたようで、アインは盾を構えて防ごうとしたものの、大きく吹き飛ばされた。
「…想定外です。いつの間にトリガーを強化したのですか?」
「答える義理はありません。さあ。いきますよ!」
アインはザシュに問いかけるが、ザシュはその問いに応じることなく、再び手にした守護鉄壁を使い加速する。今度はアインの周りを回り続ける。
アインが全方位を警戒していると、いきなり全方位から光の弾丸が降り注ぐ。
その弾丸は、ザシュが召喚した遠距離狙撃銃を使ったものだった。
アインはその弾丸のわずかなタイムラグを見分け、剣と盾を使い、すべてを防ぎきる。
ザシュは、その行動が予想済みだといわんばかりに月光を使い、アインの背後から切りかかる。
「旋空!」
再び旋空を使いアインに切りかかる。
「何度やっても同じです。それに、もう見切りました」
アインはそう言うと、盾ではなく剣を構える。ザシュは不思議そうにしたが、いまさら旋空を止めることはできず、そのまま切りかかる。
「不動要塞」
アインがつぶやくと、アインの体と剣にエンチャントが施される。そして、もう一つスキルを使う。
「『神速』」
その瞬間、アインが振るった剣は神でさえ認知できないほどの速度まで加速。ザシュの体を引き裂いた。幸いにも強制離脱だけで済んだものの、それ以上に、パワーバランスが崩れたことを意味している。
アインは、アルケミア達のほうを振り向くと。そのまま切りかかる。アルケミアがとっさに前に出て、
「
シールドを張る。この中だと唯一防御系の技を持っているのがアルケミアだったので、しょうがないが、この中で間違いなく最強戦力戦力がここで行動不能になるのは避けないといけない。カラフトはシールド内部でアルケミアの内部に出る。
「『神速』」
アインが神速を使い障壁を切り裂く。その勢いのままアルケミアに切りかかろうとするが、カラフトがシン・月光で受け止める。オビッサが飛翔障壁を使い素早く後ろに回り込む。アインはオビッサの攻撃を盾で受けるとそのまま吹き飛ばす。
「『神速』」
再び神速を使い、カラフトに攻撃を仕掛ける。カラフトに防ぐ手段はない。カラフトが切り裂かれるその瞬間。ステイがアインとカラフトの間に割り込んできた。そのままステイは切り裂かれ、強制離脱をした。
「くっ。ステイまでやられるなんて。どうすればこの子に勝てるの!」
アルケミアが思わずつぶやく。5人の状態でどうにかパワーバランスを保っていたのに、2人がいなくなったとなると勝機はほぼないといってもいい。アルケミア達はそれでも戦わなければいけない。再びそれぞれ武器を構える。
「…飛翔障壁!」
オビッサが飛翔障壁を使い、光の足場を作る。魔族側の三人は足場を使い、アインに素早く攻め入る。
「旋空・カムイ!」
神速を五回連続で使用し、カムイを放つ。
ほぼラグがない5連撃がアインを襲う。アインは盾で攻撃を受けながら後ろに下がる。それでもすべてを受けることができず、最後の一撃だけ受けてしまった。胸元に赤い線がはしり、そこから血が噴き出す。同時に口からも少しだけ血を流す。
「…想定外です。ですが、まだ戦闘の継続は可能ですね。『治癒の盾』」
盾が光だし、アインの傷を癒していく。光が収まると、胸元の傷はきれいさっぱりなくなっていた。
「回避不能の攻撃に回復能力持ちね。カラフトに聞きたいんだけど、勝てる?」
「ははっ!そんなの、無理に決まってるだろ」
「…どうしたものか。とりあえず、神速を使わせないようにしないとかな」
「そうだな。となると、飛翔障壁が重要になってくるか」
「そうだね。オビッサは飛翔障壁で足場を量産、やられないように適度に移動して。カラフトは隙を見て僕と同時に攻撃。いいね!」
「…了解」
「おうよ!いくぞ!」
「…飛翔障壁」
オビッサが飛翔障壁を使い足場を量産する。アルケミアとカラフトは飛翔障壁の足場を使い、素早く移動する。アインは、盾を構えながら周りを見渡す。縦横無尽に移動しているアルケミア達の動きを常に把握しながら、次の一手を考える。
この状態が少し続いた後、カラフトが動いた。
飛翔障壁を使い、アインの死角から切りかかる。だが、アインはカラフトの動きを把握しているようで、カラフトを視線の中心におき、盾を構える。
「旋空・刺突!」
光速の突きを放つ。盾とぶつかり、激しく火花を散らす。アインはわずかに後ろに下がっただけで、盾にもアイン自身にも大したダメージは入っていなかった。
「一刀両断」
アインは剣を頭上に構えカラフトに向かって振り下ろす。とっさに右に避けたカラフトだったが、左腕を深く切られた。具体的に言うと、使い物にならないくらい深く切られた。カラフトは素早く体制をたてなおすと、再び技を放つ。
「旋空・終之型 神・円・十・円・突!」
終之型を使い、連続攻撃を仕掛ける。飛翔障壁を使いながら様々な場所から繰り出される旋空は、ただただ盾を構えているだけではどうにもできないのは誰にでもわかることだった。
アインは、後ろに下がることで回避しようとしたが、後ろからも旋空が繰り出される。すべてを受けきることはできず、アインは数か所切られた。十分戦闘を継続できる程度だったが。アインは傷を治さなかった。
「あの回復能力は回数制限があるのかな」
「だとしたら、なおさら攻めるのみだ!オビッサ!あわせろ!」
「…わかった」
カラフトは再び駆け出す。その先に飛翔障壁が展開される。少したあとオビッサも駆け出す。二人は飛翔障壁を使いながらアインに接近する。
「旋空!円之舞!」
「・・・シッ!」
カラフトは旋空・円之舞を使い横向きに、オビッサは背後から奇襲を仕掛ける。アインは剣でカラフトを、盾でオビッサの攻撃を防ごうとする。
「
アルケミアが側面から光弾を放つ。
アインは、少し目を見開いた後、剣でカラフトを受け流した。カラフトが移動した位置は光弾の射線上だった。
「この!旋空・終之型 十・十・十・十・十!」
旋空・十文字を連続で使い、簡易的な障壁とすることで攻撃を防ごうとする。六割を防いだが、残りの四割を防ぐとこができず、その身に光弾を受ける。かろうじて立っているものの、まともに動ける状態にはなかった。最後にアインがカラフトを切り捨てる。カラフトは魔力体を維持できず、離脱した。
「カラフトまで!もう打つ手が。いや、でも。これは」
「…何か案があるなかけるしかない」
アルケミアは少しばかり考えると、苦虫を数えきれないくらい一気にかみつぶした表情でつぶやく。
「わかった。アルケミア、ごめん。突っ込んでもらえる?」
「…わかった。飛翔障壁ッ!」
飛翔障壁を展開しアインに突っ込んでいく。
「…コネクタ解除」
大鎌から二振りの手斧に双月を分解し、手数重視で攻める。縦横無尽に襲い掛かる斬撃は、アインにとって相性が悪いものだった。みるみる切り傷が増えていく。
「このタイプは少々厄介ですね。『治癒の盾』」
アインは治癒の盾を使い傷を癒していく。
アインはオビッサから距離をとると、剣を構える。
「…千変刃刀改!」
オビッサは双月から千変刃刀改に武器を変更。さらに攻撃のパターンが増える。
アインはさらに追い込まれていく。もはや防ぐだけで精一杯の状態だった。だが、オビッサは少しばかり危機感を覚えていた。というのも今まで飛翔障壁を多用してきたため魔力をだいぶ消費していた。このままだと、倒しきる前にオビッサの魔力が切れる。アルケミアがいつまでたっても手を出してこない。まだか、まだか、と焦りが溜まっていく。その焦りがオビッサにわずかなスキを作った。アインはそのすきを逃さず必殺の一撃を放つ。
「『神速』」
とっさに避けたものの、体に浅くない傷を負った。傷口から魔力が漏れていく。
これで決めるしかない。オビッサはそう決意し、アインに突っ込んでいく。アインは盾を構えたまま動かない。オビッサはアインの盾にスコーピオンが触れる瞬間、飛翔障壁を使い、背後に回る。アインはとっさに後ろを振り向こうとするが、オビッサの刃が届くほうが早い。アインに刃が届く寸前、
オビッサは地面から生えた。いや地面が変形したとげに刺された。何が起こったのかわからず、とっさにアルケミアのほうを見ると、とげはアルケミアのほうから展開されていることがわかった。
「・・・な、んで」
その言葉を残してオビッサの魔力体は限界を迎え、オビッサは離脱した。
最強の錬成職(仮) 篠原 亡 @Shinonaki
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