天使のアインが城の屋根を突き破り侵入してきた。曰く、俺とアルケミア達を殺すらしい。アルケミア達は即座に戦闘準備を始める。


「トリガー起動!」


の掛け声と同時にアルケミア達は魔力体に換装される。


「コード:フェニックス」


俺はコードを使い、フェニックスの力を身にまとう。


「俺は周りの敵をやる。アルケミア達は、せっかくだ。アインに一斉攻撃でもしてみろ」

「……うん。わかった。行くよ!みんな!」


アルケミアはアインに攻撃を始める。

さて。俺も始めますか。俺の相手はアルケミアを除く天使たち。だが、殺すわけにはいかない。情報が正しければ、こいつたちは・・・

とりあえず殺さずに無効化しないといけない。面倒だ。フェニックスの力を使って、天使を回復させながら攻撃をするか。


「フェニックスアロー」


火の弓矢を使い次々に天使たちを打ち落としていく。半分くらい撃ち落とした後で天使たちが魔法を放ってきた。魔法はばらばらで、対抗魔法でも防げない。


「『魔力よ 隔絶する壁を与えよ 無属性魔法 魔素障壁マナ・シールド』」


魔素障壁を展開。対魔力にして魔法攻撃を防ぐ。煙があたりを漂う。完全に晴れないうちに天使たちが剣や槍で攻撃をしてくる。だがしかし、そこに自分はいない。といってもダミー・ドロップで身代わり作っただけだけど。


「『風と雷の力よ ひとつとなりて 敵を打て 暴風雷光ヴぉ―ト・プリズム』」


風と雷の複合魔法で天使たちを吹き飛ばし、雷で麻痺させる。幸いなことに天使たちに麻痺は通用したようで、天使たちは痙攣している。とりあえず第一陣はこれで終わりかな。最後に


「『神よ この者たちの災いを 祓いたまへ この者たちを 癒したまへ 祝福したまへ 神聖之聖域セイクレッド・サンクチュアリ』」


これでこの天使たちの洗脳を解除していく。

天使たちはプツンと糸が切れたように落ちていく。そんなことを何回も繰り返していくうちに俺に前には一人の天使が残った。その容姿はアインにそっくりだったが、目の色が違っていた。アインは青色なのに対し、この天使は赤色をしている。


「ここまでやるとは思いませんでした。私はツヴァイ。さぁ、いざ尋常に!」


どうやら武士っぽい性格のようで、ちゃんと名乗ってくれた。名乗ってくれたなら名乗り返すのが筋ってもんだよな。


「自分は星守 司。以後お見知りおきを」

「わざわざ済まない。大体の人はこんなことをすると引いてしまうのだがな」

「いや。俺が元居た世界にはそういう文化もあったからな。個性があっていいとおもうぞ」

「……はじめて言われたな。敵じゃなければぜひ仲良くしたいところだが、そんなわけにもいかないからな。いざ尋常に勝負!」


そういうとツヴァイが走り出す。手には刀を持っていた。まさに武士って感じだな。そのまま俺に切りかかる

間一髪のところでその攻撃を避ける。ツヴァイはさらに攻撃を続けてくる。間一髪のところでよけ続けていたものの、このままではじりびんだな。俺は一度フェニックスアローで距離をとる。


「コード:フェンリル」


フェンリルを使い、風の力を身にまとう。それによって素早さを強化、さらにフェンリルダガーを使い、攻撃を仕掛ける。ツヴァイは刀を使い起用に攻撃をさばききるとカウンターを放ってくる。


「なかなかやるじゃないか!これならどうだ!『震突』!」


その攻撃は魔力によって高振動の突きを繰り出すスキルを使用した攻撃だった。俺はその攻撃をよけようとしたが


「『神速』」


ツヴァイがぽつりとつぶやくと、急にツヴァイが加速され、刀が俺に刺さる。幸運だったのはそれが胴体ではなく、左腕に刺さったことくらいか。腕から血がどくどくとあふれ出す。俺はツヴァイから距離をとり、さっきの攻撃について考える。明らかに神速とやらを発動してから早くなった。いくら封印されているとはいえ、認識できないほどの速さになるなんて。しかも、大体のスキルを知っているはずの自分が知らない名前。ユニークと考えるのが安牌か。ざっと、素早さの超強化って感じかな。


「このスキルは我が魂に刻まれたスキル!あらかじめルートを設定しておくことで、そのルートの通りに斬撃を強制発生させる!使用者でさえも認知できない。それが、『神速』だ」


なんと、ツヴァイがすべて解説してくれた。隠し事なしの真剣勝負がお望みなのか、それとも、確実に口封じができるという自信の表れか。どっちにせよ、やることは一つだけだ。……今は大丈夫か。


「ご丁寧にどうも。じゃあお返しといってもなんだが、『その雫は森羅万象を模倣し すべてを読み解く 雫魔法 起動』。そうだな、説明もつけるか、こいつは俺のオリジナルスキル。『雫魔法』っつってな。水を操作し、様々な現象を起こすって能力だ。」

「君、いや。司、ほんとにありがとう。こんな私に付き合ってくれて」

「いや。お前は殺すわけにもいかないからな」

「ありがとう」


……これがこいつの本心か?まあ今考えても仕方ないか。


「『雫魔法 水之剣』」


水を生成。高圧の水の剣にしてツヴァイに切りかかる。ツヴァイは刀で受け止めると、流れるように受け流す。そのまま攻撃してくる。


「『雫魔法 水之盾』」


左手に水の盾を生成し、攻撃を受け止める。ツヴァイは気にせず次々に攻撃を仕掛けてくる。このままだと俺が攻撃できないな。一度距離をとるために大技やっとくか。


「『龍よ 我が敵を殲滅せよ 雫魔法 ドラゴン・ドロップ』!」


高圧の水の龍をづつける技。ドラゴン・ドロップを使い距離をとる。ツヴァイは攻撃を刀で受け止める。そのまま吹き飛ばされるが


「『神速』ぅ!」


と叫ぶように声を発し、再び光速の突き技を繰り出す。自分のドラゴン・ドロップはその突きの前にあっけなく消滅した。正直予想外だ。下手な攻撃ではドラゴン・ドロップは消滅させられないはずだ。それを一突きで消滅させる神速はおそらく、まともに食らったらひとたまりもないはずだ。


「『雫魔法 水之盾』」


両手に水の盾を持ち、少しでも時間の稼ぐ。少しは稼げるはずだから、そのうちに次の手を――


「ごめん」


俺がそう思った時には、体に槍が刺さっていた。

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