「…境界剣。秘奥が肆。『境界』」


俺がそうつぶやく。するととんでもないことが起こる!わけではなかった。何も起こらなかった。


「どうしたの?それがその剣の最後の技なの?何も起こらないみたいだけど。それなら、ブースト(強)+ボルト(弾)ダブル!」

「…飛翔障壁」

「ヘヴィバレッド」

「スラスター!」


アルケミア達が一斉攻撃をしてくる。相手の攻撃に合わせて境界線の秘奥が発動する。

そう。『境界』だ。相手の攻撃に合わせて、鏡が生成される。そのあと。アルケミア達の攻撃が襲い掛かる。アルケミア達は、「やったか!」みたいな顔をしている。だが、俺は傷だった。アルケミアたちは、「なぜ!?」みたいな顔をしている。俺は優しいから、こいつの能力をすべて説明する。


「境界剣の秘奥が肆『境界』の能力は、コピー能力を持った鏡を生成することだ。俺自身の意思で出すこともできるが、基本自動防御だ。お前たちが攻撃すると、同じ破壊力の攻撃をお前たちが受けることになる」


ここまでの説明だけでも、アルケミア達は絶望の表情を浮かべている。普通に考えたらそうだろう。ある種の絶対防御なのだから。


「っでも!それは防御しかできない!なら、魔力が尽きるまで耐えれば、僕たちに勝機はある!」


確かに、今の情報だけならそう勘違いしてもおかしくない。だが、恐ろしいのはこれからだ。


「この技は基本、自動防御だ。あくまで基本だ。そしてこの技の複製条件は魔力を伴う物体であること、だ。だから、血界剣、秘奥が壱、『血剣』。境界複製!」


境界複製は、境界剣の『境界』による任意複製のことを言う。これで起こることは、血剣の複製ができる。しかも血の量も単純に増える。これで無限の血を得ることができる。そして、今、俺は、血界を使って、血を自由自在に操れる。

アルケミアだけがこの重要性に気づいたようだ。だが、もう遅い。これから始まるのは、一方的な蹂躙のみだ。


「アルケミアは気づいたみたいだな。だがもう遅い。血界剣。秘奥が肆。『血槍』。境界複製。合わせ鏡!」


これで何が起こったか。血の槍が合わせ鏡によって無限に複製される。そしてその槍は血界の効果によって。操ることができる。これによって、広範囲殲滅ができるわけだ。


「これから始まるのは一方的な蹂躙だ。さて、まずは、血槍、一斉発射!」


合わせ鏡を使って複製した槍を一斉に飛ばす。その数は数えきれないほど。


「ブースト(強)+シールド(盾)トリプル!」

「…ッ!飛翔障壁!」

「シールドモード!」

「ッ!」


アルケミアは盾の印を使い、魔力の盾を生成。オビッサは飛翔障壁を使い回避を、ザシュは守護を盾の形にして、防御。ステイは無言で、遠距離狙撃銃を構える。どうやらすべての槍を打ち落とすつもりらしい。アルケミア達が各自槍に対する準備を終えたとたん、槍が降り注ぐ。すさまじい轟音とともに砂埃が舞う。砂埃が晴れると…アルケミアは盾が半壊しながらもどうにか無傷で、オビッサは数発受けたものの、何とか、ザシュは余裕をもって耐えていた。ステイは途中まで何とか食いついていたものの、途中からついていけず、ハチの巣になっていた。そのままステイは戦線を離脱した。アルケミア達はどうにか耐え抜いたとホッとしていた。だが、


「第2射。発射!」


そう短くつぶやく。アルケミア達が一生懸命耐えているうちに、第2発目の準備を整えていた。再び防御、回避の体制をとろうとするが、不意打ち気味だったこの攻撃に対応できるはずもなかった。再び激しい振動と煙、いや赤い霧が舞う。

霧が晴れると、アルケミアは一部体をえぐられながらも、ギリギリ戦闘を実施できるくらいに被害を抑えていた。ザシュはレイガストにひびが入っている程度に被害を抑えている。つまり無傷だ。ただ、これ以上同じ攻撃を食らうと、レイガストではもたないだろう。そして、オビッサは…右足がなくなっていた、どうやら、すべては回避できず、右足に槍が命中したらしい。一方の俺は、第2射を放った場所から移動していた。具体的に、アルケミア達の後ろへ。もちろん第3射を準備しながら。今回はただの血槍ではなかった。


「神雷、血槍。第3射。発射」


神雷で加速した。いわゆるレールガンのような状態にして、操作性能を低下させる代わりに単純に威力を強くした。再び降り注ぐ血の槍。アルケミアは再び防御を試みるが、明らかに間に合いそうにない。このままでは全員やられるだろう。ただ、ここでザシュがある技を使った。


「スラスターオン!」


魔力を放出して加速する技。スラスターだ。ただ加速するための技なのになぜ使ったのか。その理由はすぐに分かった。アルケミアとオビッサの前に出た。どうやら二人をかばうつもりらしい。ただ、今のレイガストだと二人をかばいきれないだろうだろう。だが、ザシュはそれから再び口を開く。


「ヴィーデ。オン!」


と。初めて聞く技だが、俺の知識が正しければ、単純な強化というか、そんな感じだけど。


「ガーディアンシフト!フルパワー!」


そういうと守護の盾の部分が大きくなった。多分強度自体も強化させているだろう。どちらにせよ、ひびが入っている状態の守護だとこの血槍を耐えることができないが。どうにか守護の強化が終わった瞬間、血槍が再び降り注ぐ。とんでもない速度で守護にあたる。一瞬だけ耐えたものの、すぐに破壊され、ザシュに槍が突き刺さる。そのまま戦線離脱をするが、血槍は止まらない。ただ、ザシュが作った数秒でアルケミアは防御の体制を整えていた。シールド(盾)を何重にも展開していた。次々に槍が刺さる。どうにか盾は持ちこたえていた。


「オビッサ!まだいける?」


とアルケミアがオビッサに問いかける声が聞こえた。俺の記憶だと、オビッサは右足が吹き飛ばされていたはずなのだが。


「…飛翔障壁」


一方のオビッサは、飛翔障壁を起動。生成された板を右足で踏み、俺に左手の千変刃刀を突き立ててきた。なぜ右足があるのか。そしてなぜどっちの足で踏んだ。どっちの手で突き刺したと細かく表現するのか。千変刃刀の変幻自在な特性を利用し、右足に義足を装着。その義足は右手の千変刃刀で作ったので、左手の千変刃刀で攻撃するしかなかった。オビッサは今までの攻撃パターンから右利きだったはずなので、いつもより威力がない。ただ、それでも飛翔障壁で加速したこと。もともと魔王なこと。この2点があり、おそらく一般人だと即死する攻撃となっていた。


「その様子だと行けるみたいだね。ならボクも。ボルト(弾)!」


アルケミアは初めてブースト(強)と使わず攻撃をしてきた。それほど余裕がないのか、発射速度重視か。とりあえずオビッサをどうにかしないといけない。


「血界剣。秘奥が壱。『血剣』」


空中に血剣を生成して。防御する。オビッサは防がれると察した瞬間飛翔障壁を展開し、右足で攻撃をしてきた。今オビッサの右足は飛翔障壁なのでただの蹴りだと思って受けると、深い傷を受けることになる。なので、さっきの血剣を使い、防御する。だが。


「オビッサ!ブースト(強)トリプル!」


アルケミアがブースト(強)をしてきた。なんと、ブースト(強)などは他人にもできたらしい。血剣がたやすく切り落とされ、俺は胸元に横一文字に深い傷を負った。わけではなかった。何しろ今の俺は亜神だ。よっぽどのことがない限り、傷はつかない。だから亜神になる前にできるだけ傷を作っておいた。ちなみに右足の飛翔障壁は俺にあたったところからポッキリと折れていた。これ以上はなんか俺が悪役みたいなので手っ取り早くオビッサを倒す。やっぱり悪役みたいだな。


「境界。血界。合わせ鏡」


再び無限に槍を増殖させ、打ち出す。ちょっとかわいそうだけど、オビッサはめった刺しにされて戦線を離脱した。さてと。後は、アルケミアを本気にさせるだけか。


「さて。アルケミア。この世界を見れるものは外の世界にいない。本気を出してもいいんだぞ?」

「…ばれてたんだ。僕が本気を出していないこと」

「もちろんだろ。実際の動きとやりたがっている動きが一致していなかった。あと、俺はお前の正体についても色々わかってるぞ。お前が使えている人から聞いたからな」


俺は亜神になって魔法を構築しているころ。ある人と出会った。俺の師匠といってもいい人だった。その人はアルケミアの上司らしかった。というのも「私の信者が~」という会話の中で出てくる特徴とアルケミアの特徴が一致しているからだ。


「わかったよ。じゃあ本気で行くね。錬金!」


そういうと、地中から無数の金属が湧き出す。いや、地中からではない。地面に突き刺さっている俺の血から金属ができている。こうすれば俺の戦力もそげるから、一石二鳥というわけか。


「錬金術は僕の一番最初の職業。錬金術師だったころに使えた唯一仕えたスキル。いや。今でもトリガーを使わないとこれしか使えないか。とりあえずこれが僕の本来の力だよ」


そのままアルケミアは先がとがっている物体をいくつか生成。俺に向かって発射してきた。鏡を使用して対抗しようとするが、複製できない。仕方がないので血を複製して、血の壁を作る、一瞬だけ耐えたものの、すぐに壁は破壊され、先がとがっている物体が突き刺さる。もちろん地面に。一瞬あったらよけるわな。それよりも、なぜあの物体が複製できなかったのか。考えても仕方がないか。


「血界剣。秘奥が弐。『血旋』」


とりあえず血旋で様子を見る。アルケミアはよける様子がない。このままだとすっぱり切れることになるが、刃があたる瞬間、あたるはずだった刃が消える。どうやら、錬金術を使って、刃を消滅させたらしい。その器用さに感心していると、不意に後ろから殺気を感じた。とっさに右に避けると、俺がいた場所の地面から無数の針が飛び出ていた。アルケミアの錬金術は結構広範囲に及ぶらしい。さらにめんどくさい。どんな技を使っても錬金術で無効になるか。どうやらアルケミアは思った以上に強いらしい。これはもう、最收終奥義を使うしかないな。


「時間操作」


俺はそうつぶやく。これは魔法ではない。実際には魔法なのだが少し違う。もともと発動している魔法を少しいじるだけなので時間操作によって何か魔法が発動するわけではない。ちなみに、すでに発動している魔法とは、融合魔法ノヴァ・オブ・ディメンジョンだ。この魔法によって生成されているこの世界の体感時間を遅く具体的にいうと、1時間が1秒に感じるくらいに調整した。ちなみに俺はこの影響を受けない。つまりアルケミアにとって、今の俺は超高速で動ける人、となるわけだ。それはともかく、早く終わらせたいので、


「雫魔法。ドラゴンドロップ」


水の龍を生成して攻撃する技。もちろんアルケミアは反応できない。反応できないということは、錬金術を使うこともできない。そのまま龍の攻撃を食らい、戦線離脱をした。俺の勝利となった。

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