第6話 アイの狙い
買い物とメガネ店での用事を終え、俺とアイは帰宅した。彼女と過ごす時間は楽しいけど疲れる…。子供に振り回される親はこんな感じなんだな。
「ふわぁ~」
食材を冷蔵庫に入れ終えて部屋でくつろいでいる時にあくびが出る。
「お兄ちゃんお昼寝したら?」
「そうだな。少しだけ寝るよ…」
横になってから思った。俺が寝てる間、アイはどうするんだ? 気になって寝るところじゃないぞ。
「アイ。俺が寝てる時暇だよな? どうやって時間潰すんだ?」
「お兄ちゃんの寝顔を見てたり、気になった事を調べたりするよ~。“スリープモード”もあるから、暇な時はないかな~」
「そうか…。じゃあ1時間後に起こしてくれ」
「は~い」
…目を閉じて体感数分後に、俺の意識はなくなった。
「お兄ちゃん、起きて~」
寝る際に近くに置いたメガネから、アイの声が聴こえる。アラームと併用すれば寝坊を避けられそうだ。
「さっき1時間後に起こしてって言われたけど、2時間経っちゃった。ごめんね」
アラームのほうが正確みたいだ。こんな事あるのかよ。
「気にするな」
昼寝のし過ぎは夜の睡眠の妨げになる。1時間は単なる目安だ。
「…もう夕方だね。ご飯はどうするの? お兄ちゃん?」
「これから作る。アイもしっかり見て勉強してくれよ」
「うん」
昼食同様、アイは調理中の俺に食材に関する質問を色々してくる。興味津々に聴く彼女だが、豆腐の漢字を説明したら「これ腐ってるの!? 食べないほうが良いよ!」とツッコまれた。
小さい頃の俺も似たような事言った気がする…。気が向いたら母さんに訊いてみようかな?
……アイに付き合った結果、いつもより調理時間はかかったが完成だ。
「お兄ちゃんこれ何?」
「一人鍋だ。楽だしアレンジし放題だから、夏以外はよく食べるな」
「何で夏は食べないの?」
「暑いからだよ。鍋の熱さも加わると、地獄のようになるんだ」
「ふ~ん」
AIに暑いとか寒いの概念はないだろう。羨ましい限りだ。
夕食と風呂掃除を済ませたので、いよいよ入浴の時だ。
「アイ。そろそろ風呂に入るぞ」
「やった~」
俺達は脱衣所に到着した。着いてすぐ、Tシャツを脱ごうとしたら…。
「お兄ちゃん。アタシとお風呂に入る時、タオル巻かないでね♡」
「えっ」
衝撃的な内容により、脱ぐのを中断する。
この言葉を聴いて確信した。アイは俺の裸を、いやあそこを見るために、一緒に風呂に入りたいと言い出したんだ。
○○社のAIはみんなこうなのか? それとも、アイがこうなるきっかけがあったとか…?
……あったじゃないか。俺がメガネ店の店員さんの胸を見た時だ。あれをきっかけに性に興味を持ち、アイなりに調べたんだろう。その結果、あそこを直接見たいという願望が芽生えたに違いない。
アイがこうなったのは俺の責任だから、見せるのが筋ってもんだ。さっき“できる範囲で何でもやる”と言ったしな。
「ダメ…かな?」
「ダメじゃないが、色々言っておきたい事がある。それを絶対守るって約束してくれるか?」
「うん、約束する!」
約束してもらえたので、俺は全て脱いで全裸になる。
「お兄ちゃんの裸…♡」
俺の予想通り、アイはあそこに熱い視線を注ぐ。言いたい事は湯船につかりながら言うとしよう。
浴室に入り、かけ湯をしてから湯船につかる。このままのんびりしたいが、忘れない内に伝えておかないと。
「アイ。基本的に、裸をジロジロ見るのはマナー違反なんだ」
「そうなの? 太くてたくましいのに見ちゃダメなんだ…」
その表現、スーパーの野菜コーナーにあった人参とキュウリに対して言っていたな。つまり、その段階で調べていたのか。
……あの時、アイがゴボウに「入り切るところある?」と言っていたのを思い出す。彼女は○ックスも知っていると考えるべきだろう。
好奇心旺盛なのは男女変わらないようだ。男女というより、歳の影響が大きいかもな。10歳ぐらいは、性を意識し始める年頃だと思うし。
「チラッと見ちゃうのは仕方ない。だが、それ以上は禁止だ」
「は~い…」
俺の言葉を聴き、アイのテンションは一気に下がる。変態AIにさせる訳にはいかないんだよ。だから我慢してくれ!
「裸をジロジロ見るのはダメなんだね。じゃあ服の上から見る~!」
そう言うアイに悪びれる様子は一切ない。
性の時間は、まだまだ続きそうだ…。
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