第19話 後宮ヲタ活会


「な……何だこの部屋は……!」


漆は絶叫した。


「ちょっと漆ったら!勝手に入って来ないでよ!」

「いや待て待て、琳。あのな?後宮を預かる主人はシロハンキだが、王である私は後宮にいつでもどこでも来ていい。そしてその権利がある。だからこそ、側室の部屋に入ることだって当然の権利だ!」


「じゃぁ着替え中でもいいってことなの!?」

「……当然だ!私は王なのだからな!」

漆は堂々と告げた。

な……何足る色情鬼……!


「ひ……酷い……っ」

「ほら、菫なんて衣で顔隠しちゃったわよ!さすがに菫の側仕えたちにも睨まれてるわよ!?」

菫の側仕えの鬼たちも、さすがに女の敵と認識したらしい。


「王、さすがにそれは、ないかと」

ツタイバラも刺々しく告げる。

「お……男としてもそれはないかと……」

一緒に寝よーと言った日から、何故か青年の姿をとることの多いユウリンからもひとこと。


「く……っ、裏切るのかユウリン」

「もとよりぼくの主はシロハンキさまですから」

「それはそうだが……」


「シロハンキさま経由でシロキシンさまにも伝わるかもしれませんよ」

「だからなんだと言うのだ」

と、胸をはる漆だったが……。


「半殺しじゃ済まないかもなってことだ!このクロシキマ――――――――っ!!!」

「あ゛――――――――――っ!」

漆は駆け付けてきたシロハンキさまに絞められていた。遂に……鬼神でもなくなったぁー……。


※※※


「済まなかった。調子にのり過ぎた。やはり女子の着替え中は配慮しよう」

「分かればいいのよ」

「うぅ……っ、それでしたら」

菫なんて涙目じゃないの、んもうっ!


「だが、何なのだこの部屋は。人間の側室のための一の宮だぞ」


「何って……オタ活部屋よ!」


「は……?」


「あんまり浪費はできないけれど……!天狗のおじいちゃん経由で通帳が戻ってきたから……!お金をあまりかけずにオタ活よ……!まぁ必要な画材とか文具……漫画や小説は菫とお金を出し合って買ったけど。でもたくさんできた……!オリジナル同人誌とか、推しぬいとか……!」

「お……推しぬい?」


「菫と一緒に作ったの!シロハンキさまぬい」

菫も私と一緒に、オリジナルシロハンキさまぬいを見せてくれる。


「この惨状をどうしてお前が黙認したのかと思えば……あれに陥落したのか……!?」

「うるせぇ黙れ結界の力で不毛地帯を作って10円ハゲ作るぞ」

「やめろ、恐ろしい」

そうねぇ。BL同人誌は相変わらず許可が降りなかったけど、菫から聞いたシロハンキさま伝説を纏めた同人誌は許可されたし、お猫さまを愛でる同人誌は、ヒロインを架空の人物とすることでツタイバラから許可が出た!後は菫直伝鬼伝説とか、もふ狐ユウリンの折本とか作ったり……。お手製のシールグッズも作ったんだ~~。

最初はオタ活部屋にすることを渋っていたシロハンキさまだけど、こんなかわいい推しぬいも作りたいと原案を持ち込んだら……許可が出た……!菫もシロハンキさまを推す活動ならと嬉々として参加してくれたし!


「いや、そもそも、琳。何のために宮を人間とあやかしで分けたと思っているのだ」


「生活スペースじゃないし、菫と私はオタ友!もぅまんた――――――いっ!」

「まぁ、そこら辺の問題はクリアしてるが……なぁしるし

「何だよ」

「(お前、そう言うことか!?ここを居住スペース外にしたのはそう言うことか!?過保護にもほどがあるだろ!琳を一生正妃邸に住まわせる気か!)」

「ふん、何のことやら」

漆がシロハンキさまにこそこそ耳打ちしていたことはよく分からないけれど……。


「結界って10円ハゲも作れるんだー」

「私もまだそのレベルには至ってはいません。一層、修行にいそしまなくては」

菫は修行熱心だなぁ。私も隔り世のお勉強頑張ろっと。



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