第12話 新たな側室
宮に新たな側室が入る時は、正妃が既に宮入りしている場合は、まず後宮の主である正妃に挨拶にくる。
あれ……じゃぁ私は……?
私の場合はいろいろとイレギュラーが重なったのでいいとシロハンキさまには言われたので、私にとっても初。
今回は勝手に決め
漆を中心に、シロハンキさま、そして何故か私もその隣に座らせてもらい、本日宮に入ると言うあやかしの側室を出迎える。
……しかし、あやかしか。ツタイバラやユウリンたちは親切だけど、やはり知らないあやかしに会うのはびくびくしてしまう。矢神楽での、あやかしたちからの仕打ちのせいなのだろうか。
「安心しろ、琳。こいつの目が腐っていたら、たとえこいつが独断で決めたとしても叩き出す」
腐……っ、うん……腐っているのなら、大歓迎だけども……!いやしかし、シロハンキさまから瞬時に『そう言う意味じゃねぇ』と言う視線をもらってしまった。ぴえん。
「恐いことを言うな、
「あぁ、そうだな」
だからこそ、シロハンキさまの正妃と言う立場がそのままになっているのだ。シロハンキさまが優秀で頼りになるって言う部分もあるのだろうけど……!
「だが……側室だからと言って後宮に住むことは絶対じゃない。お前が部屋を与えたとしても、住まわせてやる義理はない。後宮の主人は俺だからな。だから……後宮から叩き出す。側室のまま、な」
「……鬼か貴様は」
「だから鬼だっつの」
このやり取り前にも見たなぁ。定番の鬼ジョークなんだろうか……?
「まぁまぁ、いいこかもしれないじゃない!」
「そうだぞシロハンキ。まぁダメだったら締め出すかどうかは任せる」
いや、ちょ、漆~~っ!?決めたのにそこちゃんと加味してないんかい!
しかしそんなやり取りをしていれば。
「お三方、そろそろ……」
またいつの間にいた青鬼さんにそう言われ、ハッとして口を噤む。
そして襖を開けた先で、優雅な座礼を披露したのは、紫色の髪に、桜色の鬼の角が生えている。
漆の言葉で
まりあも相当な美女。だけど性格が【
まりあなんて霞んじゃうくらいの美女、まさに人外のことわりと言うやつだ。
しかも髪より淡い色のお着物もきれい……!
「よくぞきた、フウビキ」
ふう……封、び?何だか……中二心を揺さぶるようなその
「本日からそなたを側室として迎え入れる。宮はあやかしの側室宮、一の宮。その他後宮での詳しいことは、シロハンキから聞くといい」
と、漆がシロハンキさまを見やれば。
「王の言葉の通り、一の宮に入るように。以上」
以上なのシロハンキさま!?詳しい説明何もないけれど……!?そして漆もあちゃーとばかりに頭を抱えている。ど、どうするのよ、フウビキさまは……っ。
「承知いたしました」
あれ、普通に座礼を返して……供のものと思われしあやかしたちを連れて行ってしまった。供には鬼が多そう。何か私、供の鬼に睨まれていた気がするのだけど、気のせいかな……?
「
漆が困ったように告げるが。
「俺とお前の前で琳に敵意を向けるなど、ナメているだろう」
あ……シロハンキさまも気付いていらして……。
「だが、彼女と琳は同じくあやかしと人間のそれぞれの側室の筆頭。側室の中であやかしが人間に遅れをとらぬよう、牽制し合うのもまた普通のことだ。あやかし側としては、人間の側室に側室の筆頭の座は渡せんからな」
「え……えぇと、聞いてもいい?」
恐る恐る手を上げれば。
「どうした、琳」
漆が発言を歓迎してくれるのが分かった。
「その……筆頭とか言うの、まだよくわかってなくて……後宮の仕組みとか、まだ分かってない……」
ツタイバラに文字を読んでもらってルビを振っているとは言え……昨日の今日だしなぁ……。
「後宮は正妃の宮、あやかしの側室の宮、人間の側室の宮があるところまでは大丈夫だと思うが」
「それは、うん」
「後宮の主として後宮を取りまとめるのは正妃のシロハンキ。シロハンキが後宮のトップだ。その下に続くのが筆頭側室。これは人間の側室で一の宮を与えられた側室と、あやかしの側室で一の宮を与えられたものがなる。琳はこちらで暮らしているが、位で言えば一の宮を与えられる地位に相当する。今後人間の側室が増える可能性は低いが……増えたとしても一の宮は琳のもので、ほかの誰にも与えない。そちらを琳の部屋として使うことも構わない。まぁ、シロハンキが過保護だから許さないだろうが」
そう言うと漆がシロハンキさまに手の甲をつねられて『いたっ』と漏らしていたが……。
しかし、私が使っていい部屋……だとしたらオタ活のコレクション部屋にするべきか……?まぁでもまだグッズ集めも作りもしてないし、今は保留でいいかしら。まぁ寝食はやっぱりシロハンキさまの宮が落ち着くもの。
「いてて……本気でつねったな、シロハンキめ。まぁ話を続けるが、続いてあやかしの側室筆頭のフウビキには私が一の宮を与えた。だからこそ、そのふたりの側室の中で秀でた方が側室の序列一位になり、ふたつの側室の筆頭となり、より一層王である私の寵愛を受けることになる。だから、フウビキの供も、フウビキを側室筆頭にするべく闘志を燃やしているのだ」
「うーん」
「琳……?」
「私はシロハンキさまのファン筆頭なら側室筆頭じゃなくていいし……漆の寵愛……?」
「何故そんな目をするんだ。王からの寵愛だ。たーんと溺愛してくれよう」
「いや……別にいいよ。私にはシロハンキさまがいるもの。あのこが側室筆頭になりたいなら、それでいいと思う」
「いや、何故そこでシロハンキを選ぶんだ、琳。何気に傷付くぞ」
「いやそう言われても」
「諦めろクソキシン」
「
「うるせぇっ!」
んもぅ、ふたりったらまた痴話喧嘩を……。まって、これ、美味し……
「争うな
妙って、そんなことないもん!
「く……っ、仕方がない」
シロハンキさまのその諦め方、ちょっと気になるんだけども。
「だが、寵愛レベルは琳が一番だ。これは譲れん」
と、漆。
いや、寵愛レベルとかいらないのだけど。痛烈にフラグを感じるから。オタク、ナメるなよ……!?
「あと、予算もたくさん出るぞ」
「よ……予算……お小遣い……!?」
確かに私は一文無し。現し世になら口座はあるが、こちらでは使えまい。と言うか私の私物、どうなっただろうか。……取りに行きたいけれど……天狗のおじいちゃんにお願いすれば良かったかしら。でも、不思議なジュースもらったくらいで図々しい……?
「小遣いなら俺がやるから」
「シロハンキさま……!」
「だから何故シロハンキにばかり懐くのだ、そなたは……!いや……これも血のせいか……」
え?血のせいって……どういう……。
「まぁいい。今日はもう解散だ。俺は仕事を片付ける。琳はツタイバラと勉強な」
「は、はい!シロハンキさま!」
早く読み書きできるようになりたいしなぁ……。
「漆はどうするの?」
「私が講師をしてやろうか?」
と、言われたのだが。いいのだろうか……?一応、あやかしの王なのに。
「お前も、し・ご・と!」
「スケジュールがつまってございます」
シロハンキさまの言葉と共に青鬼さんが漆の傍らにさっと跪きそう告げた。
「……ぐっ」
「ほら、とっとと行け」
「お前は冷たいぞ、正妃だろ」
「てめぇのせいだろーが!責任とれ!」
あはははは……もう、漆ったら……。でもこう言うやり取りは……何だかほっこりして好きかなぁ。いつもの、ふたりだ。
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