第15話 ねえねが来た!
――――――冬、蛇さんたちが半冬眠の時期を迎えた。
なのでカラスヘビさんはお布団に潜りながら俺がこしらえたトランプでちび蜘蛛ちゃんたちと遊んでいる。……何となく夏よりも起きてる時間長そうなのは気のせいかな!?
確実に夜更かししてまたまた俺が書いたファンタジー妖怪小説、ナイトライトランプ付けて読んでるよね!?まぁカラスヘビさんの自由だから別にいいけども!
因みにアオダイショウさんはしっかりと寝て、少し起きられる昼間にご飯を食べ、ちび蜘蛛ちゃんや、一緒にお布団に潜りに来ているちび蛇ちゃんたちと遊んであげている。
冬は寒いので、もふ脚蜘蛛をもふっていたら、真冬も白いもふ脚を出してもふられてくれるのは冬のいいところ。
たまに退魔師のお仕事を真冬とこなしつつも妖怪屋敷での冬の生活を謳歌していた。
そんなある日のことだった。
「こんにちは」
「……ねえね?」
ねえねが……姉が、来た。もちろん彼女のパートナー・オオカマキリのキリちゃんも一緒。
姉はいかにもな和風美人、キリちゃんも一見するとごく普通の妹系美少女。カマキリのカマ出すとすごいけどな。
「何で……いきなり来てんの?」
今までまるで本編に出てこなかったじゃん。俺がちらりとねえねのことを思い出す以外は存在謎だったじゃん。
「何でって、遊びに来たのよ。私はねえねなのよ?ねえねが弟の元に遊びに来るくらい、普通でしょ?」
普通の姉ならな!でもねえねは違ぇからっ!この姉に限ってはちゃうねんっ!!
「ま、事情は後で聞くから、とりま上がって。キリちゃん寒いの苦手でしょ」
「私の妹の体調を気遣うとは、できた男に成長したわね」
いや、この屋敷、寒いの苦手な妖怪が多いし。自然と気を使うことが多いのだ。
空気の入れ換えするとしても、ついつい開けたらみんなでちび蜘蛛たちが『ぎゃ――――――っ!!?』ってなったり。たまに姐さんたちに怒られた。あっははー。
「でも、妹の体調を気遣うのはねえねの義務、そして権利よ」
「はいはい、分かってるって。とにかく入れよ。キリちゃん気遣えよ」
「もちろんよっ!」
ねえね、即答。全くこの姉は。
「真冬もいいだろ?」
当たり前のように俺の後ろにいた真冬。でももう慣れたから大丈夫。それでもちょいビクンとはきたけどね。
「えぇ、ビャクの姉君なのでしょう?歓迎します。あと……彼女はオオカマキリですかね?」
「そうだよ。でもキリちゃんイイコだから大丈夫」
そう言うと、キリちゃんがぺこりと会釈する。
幼い頃より天才的な退魔師の才能を持っていた姉がじゃっかん12歳で召喚したキリちゃんは、外見は可愛らしいが妖力は強いらしい。
そして姉の例があったから諭吉くんも早くにコンちーを召喚したわけなのだ。
前世の妖怪ものだとオオカマキリって恐いんだが、キリちゃんはほんとイイコ。こんな姉のもとによく来てくれた。こんなイイコがよく来てくれた。お陰で安心してねえねを任せられる。
しかしその時、真冬がボソッと告げた。
「この屋敷、ナガコガネグモいますよ」
あぁ、ジョロウグモの姐さんとよく酒宴やってるボンキュッボンの姐さんだ。因みにジョロウグモの姐さんもボンキュッボンだ。
そしてナガコガネグモの名を聞いたキリちゃんがねえねに飛び付いた……っ!?
「ひっ!!」
「どうしたのキリちゃん?」
「……え、だってっ」
ふるふるするキリちゃん。一体どうしたんだ?
「大丈夫よ、き、キリぢゃあぁんっ、ハアハア、キリちゃんからねえねに抱き付いてぇ……うがぁ~~っ、萌え~~~~っ!?」
一体誰に似たんだか。ねえねはキリちゃんに頬擦りしながら萌えていた。このねえねは相変わらず……。
「ナガコガネグモはカマキリの天敵なんですよ」
と、真冬。
「あ、そゆこと」
自然界の天敵が妖怪にも適用されることは結構ある。蜂妖怪を恐がるちび蜘蛛も多いんだよな。オオカマキリのキリちゃんも、天敵のナガコガネグモは恐かったか。このねえねが平気なキリちゃんにも苦手な妖怪がいたとは。いや、ねえねは妖怪じゃない。人間だが……妖怪とそんなに変わらない。
「今、失礼なこと考えなかった?ねぇビャクちゃん……女装しよ?」
「やだわっ!あとねえねにとっては全部事実なんだから全く失礼じゃないっつの!」
「がっはぁっ!」
崩れ落ちるねえねを、キリちゃんが心配そうに支える。ほんとイイコだよなぁ、キリちゃん。ねえねにはもったいないが、ねえねを任せられる妖怪はキリちゃんくらいしかいないので妥協しよう。
「ま、イイコにしていれば大丈夫です」
その様子を見て真冬が告げる。
「だからキリちゃんはイイコだから問題ないって」
「またビャクの天然が暴走したのだと思いましたが」
はぇ?俺の天然?暴走?よく分からんが……
「ほら、寒いんだから。早く入って」
ねえねを手荒に中に入れて、キリちゃんを丁寧に通した。
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