第5話 冒険者(仮)になりました。

 ニーナさんに冒険者ギルド登録を完了してもらい、身分証になる板をもらいました。

 名前と年齢、それと仮登録とだけ刻まれている黒い板です。


「依頼を受注するとギルド内に保存されている個人情報に履歴として残るのよ。それと依頼を完了しても失敗確定でもきっちり報告してね。でないと報告不備で減点繰り返す悪質者は罰金があるわ」


 この身分証がわりの板は魔道具であるそうです。

 記録が残っていくので依頼は終わる時は報告が必要らしいです。罰則金もですが終わっていない仕事の残骸が積み重なるのはちょっといやですね。


「この身分証があれば街の防壁の出入りが無料になるからなくさないようにね」


 魔道具は安い物とはいえませんし、手間はかかっています。他人が使えば困ったことになるかといえば個人の魔力と年齢性別情報が異なれば本人確認で異常を検出するそうです。

 専用の読み取り魔具は街の出入り口や役所、学舎や貴族街の出入り口に設置されており、出入り確認されているそうです。

 冒険者ギルド員であれば、狩りや採取依頼で街の出入りが多いために通行料が免除されるそうです。

 魔具にギルド員である板を通すことで出入り口の使用記録にこれから蓄積していく情報確認。つまり、エンジョーにおける違反行為犯罪行為、貢献行為は記録されて、違う街でも共有されていくということらしいです。

 とても便利ですね。


「一定の依頼を受けて完了させると仮登録から正規登録になるの。年齢と依頼の受注完了量によってはカシオンくんは手数料を払うことになるわ。二十日に一度くらいしか依頼をこなさなかったりすると魔具の使用料と税金の支払い分を相殺できないから」

 つまり、貸与なんですね。この魔道具。

「はい」

「あと、仮登録のまま五十日経過してしまうと仮登録自体も無効化されるからせめて十日に五百デランくらい分の依頼を受注完了させてくれると嬉しいわ」

 屋台の肉の串焼きが一本二百デランから三百デラン。つまり、日々の食費は稼げるよう依頼を受けていきましょうということですね。

 そして本来、門の出入りにかかる費用は一回五百デランです。


「未成年者用ですか?」


 五百デランは税金分と考えると事務労力を考えると手数料伝達費で消えそうな金額設定のような気がします。


「ええ。そうよ。ジョートには幼年舎と総合舎があってギルド登録していても学業で依頼を受けてられない子達には免除があってね。学舎に行っていなくても対応年齢層にも同様の対応なのよ」

「学舎」


 子供が家業以外に就くなら手習いの機会は必要でなにが神の祝福であるか適性はなにかを探ることはこの国でも重要視されているそうです。

 特化した子は早々に王都に招かれより高度な学習、訓練につくそうです。どの国もそのあたりは同じなんですね。


「あとの決まり事はちゃんと登録された時にしましょうね。守ることは十日に五百デラン分の依頼と犯罪行為に手をそめない。あと街の中では野宿禁止よ」


 ありがたいことに一度に詰め込みはしないようです。


「あのニーナさん」

「なにかしら」

「私でもできそうな依頼を紹介とかしてもらえるんでしょうか?」

「そうねぇ。通常ならおすすめの依頼は斡旋するのよ? でも、カシオンくんの場合はツロかクリスのどちらかが保護者になるでしょう? 依頼選択の方針があると思うのよね。……困っちゃうわよね」


 ツロさんとブラバルースさんはまだ別室で言い争っているんでしょうか?

 私とニーナさんは視線を合わせて苦笑いを向け合います。あの二人の話し合いが私の行動に大きな影響を与えることは間違いないでしょうから。


 それでもニーナさんは教えてくださるようで一番難易度の低い依頼、『冒険者ギルド内雑用』は報酬金百デランからあるそうです。

 ただ違反行為罰則で『冒険者ギルド内雑用』を行う場合報酬金は出ないとニーナさんは説明してくれました。

 犯罪ではないが反省を促す事態に対しての罰則になるくらいには雑用依頼を受ける冒険者の方は少ないそうです。

 五百デランを稼ぐのは意外と難しいのかと思えば、半日も雑用をこなせば軽く稼げると説明されました。

 通常選べる最低ラインの依頼は報酬五百デランを下回ることはないとのことです。

 つまり十日に一度は依頼をこなさないような人物はギルド員として認められないということですね。

 わかるような気がします。

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