第6話 川上 萌
「相変わらずだらしないですね。お・に・い・さ・まw」
「...」
◇
いつも通り家でゴロゴロとしていると、突然インターホンが鳴る。
いまおれはいませんよー、いまおれはいませんよーと、心の中でつぶやいているとインターホンはリズムを刻み始める。
「ピンポーン、ピンピンピンピンパンピパピパピパピパピ」
「...うっさいわ!」と、勢いよく扉を開けるとそこに立っていたのは、キャリーバックを持った義妹であった。
「おっそいんですけどー。すっごく待ったんですけどー」
「...何で家を知ってるの?」
「おじさんに聞いたからです。てことでお邪魔しまーす」
「ちょいちょい!勝手に入るなよ!」
「はぁ?かわいいいもうとになにさまぁ〜?」と、ズカズカと家に上がり込んでくる。
はぁ、と小さくて深いため息をつきながら仕方なくその後ろをついていく。
「...んで?萌ちゃんは何しに来たの?その荷物は何?」
「別に。しばらくここに泊めてもらおうと思ってるだけです」
「...はぁ!?ダメに決まってるでしょ!」
「お母さんと喧嘩して家出してきたの。このままじゃ、野宿なんだけど。それでいいの?てか、何であんたは一人暮らしなのに私だけ実家なのよ!そもそも!私とあんたは3ヶ月しか誕生日変わらないのになんでお兄さんとか言わなきゃいけないのよ!」
いよいよ突っ込まれた。
まぁ、一応形式上は俺が兄となっており、俺の父や萌ちゃんのお母さんは俺たちに仲の良い兄妹的な感じになって欲しいらしく、そういう空気を察した俺らは2人の前ではそういう感じで装っていたのが...。
「...あのな、萌ちゃん。俺たちは兄妹といってもつい1年前くらいに出来たばかりの即席兄妹なわけ」
「そうだね。それで?」
「だからつまり...その...」
「はーん。可愛い私のことを妹なんて目で見れない。いつでもお前をエロい目で見てんだぞ。ぐえっへっへってことね」
「そういう意味ではない。けど、その...まともに会ったのだって1回くらいだろ」
「5回は会ってますけど?」
「それは本当に挨拶するぐらいのやつだろ。ちゃんと話したのは初めて会った時とこの前の...」
「そうだね。初めての日と、お兄様が妹をレンタルした時だけだね」
「...」
「あっ、そうだ。もし私を追い出すならこの前のことお母さんとおじさんに話すから」
「おい。それはマジでやめろ」
「妹を彼女にしちゃうエロエロ兄貴なんですーって。しかも、4股してたんですーって」
「...分かった。分かったよ。気が済むまで居てくれていいよ...」
すると、どさっとソファに座ると早速俺に命令をしてくる。
「ちょっと、ここの家はお客様にお茶の一つも出さないのかしら?」
【挿絵】
https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093077649295608
「...嫌な姑か」と言いながら仕方なしにお茶を出す。
すると、父さんから電話がかかってくる。
「もしもし?」
『もしもし。そっちに萌ちゃん行ってるか?』
「うん。来てるよ」
『申し訳ないが、しばらく泊めてあげてくれ』
「...はぁ。まぁ、父さんも強く言えない立場っていうのは分かるけどよ...」
すると、大きく息を吸い込んでから、小声で「息子さんの彼女にさせられたんですけど〜」と、言い始めたので「おけ!俺に任せて!」と電話を無理やり切る。
「...おい。約束と違うぞ」
「小声で言ってたから聞こえてないってー。おにいさまはビビリだなーw」
「...」
既になんとなく分かっていると思うが、1年ほど前に父は再婚した。
その相手こそ、萌ちゃんのお母さんである。
そうして、俺たちは血の繋がらない兄妹になったわけだが、兄弟といっても同い年であり、お互いに18の成人であったため今更兄妹仲良くなんてするつもりはなかったのだが...どうやらお互いの親はそれを望んでいるようで...。
まぁ、そんな感じだ。
人の部屋の漫画を勝手に取ると読み始めて、「...ねぇ、この続きの漫画ないのー?」と催促を始める。
「まだ買ってないから」
「んじゃ、買ってきて?おにいさま♡」
「都合のいい時だけお兄様とか言ってもだな」
「...胸チラ」と、いいながら前屈みでTシャツを引っ張る。
まさに胸ちらであった。
「はい、弱み2個目。妹の胸をチラ見するやつ」
「...」
「かってこい♡」
「...くそが!!」と、俺は近所の本屋に走るのだった。
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