第4話 小日向 凪

 あぁ、いい夢を見た。

お金は結構飛んでいったし、全員知り合いだったし...、予想外のことばかりだったけど...。


 しばらくは大人しく生活するか。


 そう思っていると、一通のメールが届く。


【彼女からリクエストが来ています】


 リクエスト?


 どうやら、レンタル彼女のシステムのようで1回デートした女の子からデートのお誘いが来る的なシステムらしい。

 ちなみにこの方法でデートすると普段より安くなり、お得だとかなんとか...。


 送ってきたのは【凪】だった。

それと共にRINEのIDと書かれたメッセージが届くのだった。


「...?」


 一体どういうつもりだ?と思いながらも、とりあえずRINEにIDを入力して、友達追加するとすぐにメッセージが送られてくる。


『メッセージ見てくれてありがと』9:15


『何事だ?』9:20


『何事って。普通に連絡とりたかったから。色々近況報告っていうか。ほら、あそこじゃ話せなかったし』9:35


『こういうことして大丈夫なのか?顧客と個人的に連絡取るとか』9:38


『顧客ってか普通に同級生じゃん。てか、やばいからこそメッセージにID書いてるから』9:40


『そっかそっか』9:41


 小日向こひなた なぎ

小学生の時の同級生であり、俺の初恋の女の子だ。


 4年で同じクラスになり、校外学習か何かで同じ班になってから話すようになったことがスタートだった気がする。


 俺が小日向に抱くイメージといえば、孤高で、自由奔放で、いたずらっ子な女の子という感じだ。

基本的には何事にもやる気はないのだが、ハマるとのめり込むタイプである。

 俺にとっては初めての異性の友達であり、いろんな思い出がある。


 ◇むかしむかしのこと


「今日はこのゲームやろうと思う。全クリするまで」


「なにそれ?」


「スーファミの名作」


「...スーファミ?」


「スーパーファミコン。知らない?私はお父さんがレトロゲーム好きだから、こういうのいっぱいあるの。てことで、本体も持ってきたから早速やろ」


「えー、外で遊ぼうよ」


「やだ。外嫌い。虫いるし。それに...」


「何?」


「何でもない。とりあえず今日はこのゲームやるの。いい?」


「...しょうがないなー」


 凪とはこうして家で遊ぶことが多かった。

今思い返せば、なんとなくその理由に想像がつく。


 凪は外での体育は基本休んでいた。

更になるべく日光が当たらないように日傘を差していることもしばしばあった。

 想像するに日光アレルギーとかそういうものだったのだろう。


 しかし、公にはそういったことを公表していなかったようで、そうなると小学生の俺には察するということができず、結果的には何だかよく分からないけど外が嫌いな女の子という印象が強く残っていた。


 そうして、いつも2人でゲームをしていて、学校でも話の中心はゲームだった。


 しかし、友達の多い俺とは対照的にあまり友人が多いタイプではなかったようで、俺といるか1人でいるかという感じであった。


「...このゲーム難しくない?」


「レトロゲーは大概難易度鬼畜だからねー。はい、次は宗也の番」


「...う、うん」


 正直、俺は別にレトロゲームが特段好きなわけではなかった。

けど、凪と一緒にいたいから何となくやっていただけなのだ。


 いつから好きになったとか、何があって好きになったとかはなく、何となく一緒にいることが心地よくて、いつの間にか好きになっていたのだ。


 そうして、小学校6年の夏休みもこうして2人でゲームに勤しんでいた。

特に父は単身赴任で、母はパートをしていたことで昼間は2人きりになることが多く、小学生の俺らにとっては学校の遊び場所だったのだ。


「うわっ、むず...。これどうしたらいいかな?攻略とかないの?」


「攻略見たら面白くないでしょ。そういうのを見ずにやるから面白いんじゃん」


「...そういうもんかな」


「うん」


 好きなだけで俺たちの間にそういった恋愛ハプニング的なことは起こることはなく、きっと凪も俺が好きなことを一生知らずに卒業するんだろうなと思っていた。


 まぁ、告白も焦ることはない。

中学に入ってからでも遅くはない。

この時まではそう思っていた。


 それから9時間ほどぶっ通しでゲームをしていると、親が帰ってくる。


 そんなタイミングで1つ目のエンディングに到達するのだった。


『勇者と魔法使いのレインは結婚し、2人の間にまた新たな勇者が生まれるのだった...。エンディング1:幸福』


「...ふぅ、終わったね」


「うん。...結婚か。そういえば、宗也って好きな子とか居ないの?」


「え!?//い、いないよ...別に//...そ、そういう凪はいるのかよ」と、少しドギマギしながら質問する。


「...いるよ」


「...え?それって...「凪ちゃんごはん食べてく?」


 そんなタイミングで母さんが入ってくる。


「...はい。いただいてもいいですか?」


「うん!遠慮せずに食べていきなー!」


 すると、小声でこう言ったのだった。


「...宗也ではないからね」


 そうして、俺の初恋は告白前に終わりを迎えたのだった。


 ◇現在


『そういえば、まだレトロゲーは好きなの?』10:25


『もち。当たり前じゃん。あっ、そうだ。これこの前宗谷に選んでもらった服なんだけど。どう?似合ってる?』10:48


【写真】

https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093077587661005


『ちなみにパッドで胸盛ってます』10:49

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