第3話 知らなかった。俺はまだ。

 それから美少女4人を侍らせながらデータを続行する。


 ファミレスを出るとそのままショッピングが始まる。


「...宗也はこういうの好きでしょ?」

「いやいや、川上くんはこういう落ち着いた方が好きでしょ?」

「お兄ちゃんはこっちの方が好きでしょ」

「待って!絶対こっちだから!」


 女子との買い物ではいつも脇役というか、意中の男子に刺さりそうな服を選ぶというものであり、そもそも俺の意見が通ったこと自体ほぼ無いわけだが...。


 こうして、俺の趣味を全開に出来るのはなかなか嬉しかった。


「俺はやっぱりその子にあったファッションがいいと思うんだ。だから、凪は暗い色の方がいいな。かつ、肌が出てる感じだとナオヨシ」

「...そんなふうに見てたんだ」


「瀬崎さんはやっぱり清楚系の白い服がいいですよね。ほら、こういうのとかいいと思います。瀬崎さんにはブラもパンツも白いのをつけてもらいたいです」

「真剣な顔で何言ってるの!?//」


「...まぁ、萌はこういうのでいいと思う」

「私にもセクハラしなさいよ!」

「いや、したら怒るでしょ」

「当たり前でしょ!」


「憂華は...うん。こういうゆるい服がいい気がする。下は履かない方が良いかも」

「うん!私こういうゆったりしてるの好きー!下ってパンツも履かない方がいい感じ?」 

「ちげーわ。変態度合いを超えてくるな」


 人生で初めてのチヤホヤ...。

こんな風に求められるなんて...本当に幸せである。


 知り合いというのがむしろよかったのか、自然とデートを楽しみつつ尚且つハーレム感を味わうことができ、俺は幸せの絶頂にあった。


 その後はカラオケに行って、密室でハーレムしながら最高の時間を送っていた。


 しかし、そんな幸せは長いこと続くわけもなく、時間が来てしまうのだった。


【16:00】


「...あっ」というと、みんなが一斉に携帯を見る。


「...時間」「あっ、本当だ」「はい終了」「わお!本当だー!」


 多分、本当に心の底から楽しんでいてくれていたと思うけど、急に現実に引き戻された気がしてしまった。

 結局はお金のためだって思うと余計に虚しくなってくる。やっぱり俺にはこういうの合わないということはよく分かった。


「...皆んな、今日はありがとうね。本当はさ...卒業式の日に好きな人に告白して...振られて...。やけくそでさ...その子のために貯めてたお金で...今日...みんなをレンタルしたんだ。チヤホヤ...されてみたくて...。本当に...ごめん」と、急に惨めになって涙が出始める。


 泣くとか...マジでダサいな。


「...もうレンタルとかはしないから...ありがとう」と、深々と頭を下げる。


 すると、凪が呟く。


「またレンタルしていいよ」


「...え?」


 顔を上げるとみんな優しい顔で俺を見つめていた。


「うん。私も本当に楽しかったから。レンタル彼女としてじゃなくて...1人の女の子として」


「まぁ...お兄ちゃんとデートとか二度とごめんだけど、話くらいなら聞いてあげる」


「そそそ!エ◯チくらいならさせてあげるよ!」


 何とも優しい人たちだ。


 俺のやってきたことは無駄ではなかった...。


「ありがとう...。皆...大好きだよ」


 ◇


 川上宗也が帰宅した後、誰が言うでもなく女子4人はファミレスに来ていた。


「...それで?みんなそういうこと...だったりするの?」


「まぁ...うん。私はその...高校の時から気になってて...今日ので確信したっていうか」


「わ、私は別にそんなんじゃないし...。全然好きとかじゃ...」


「じゃ、萌ちゃんは帰っていいよ!私も大好きだよ!ずっとずっと!いっつも宗ちゃんでおなってるもん!」

「嘘嘘!!!!嘘だから!好きだから!」


 そう。偶然にも集めた4人は俺に片思いをしていた女の子たちだったことを俺はこの時まだ知らなかった。

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