第7話 妄想の天使
正直な話をすると、私のムッツリ変態な頭はそうしながら、ひどくド変態なストーリーを考えていた。
こんな市民プールに、
全くあり得ないのだが背の高く背筋も腹筋も整った身体にスパッツスタイルのカラーリングも鮮やかな競泳水着を着たタレ目の甘い顔の「天使」が何かの偶然で降り立ってて、
しかも彼女が何の理由かサッパリわからないが私と話をして、
それでこれもわからないのだが何かで盛り上がり、
全く意味不明だが少し付き合いはじめ、その挙げ句にラブホかなんかに誘われてしまうという、
救いがたくどうしようもないストーリーを妄想していたのだ。
この時点でここまでのまともな氷河期世代のおっさんが妄想を隠しながらのリアルな日常を描くというこの中間小説のコンセプトラインは完全崩壊である。
期待した読者には大変申し訳ないが、私はそれだけとんでもないムッツリ変態なのだ。
そしてその窓をベニヤで塞いでカーテンを掛けてあるような安普請のラブホで、
よりによって競泳水着を着たままの性行為に及び、
すこしスポーツドリンクで潤した喉を見せる彼女に抱きつかれて競泳水着のロゴの入った胸の柔らかい二つの膨らみを押しつけられ、
甘い顔に苦みを持った若干残酷さを持った微笑みでささやかれながら、
そのついた筋肉が美しく力強いラインを描くスパッツのつややかな太ももで、
情けなくしなびた私の男根をしごかれ責められて性欲を軽くもてあそばれ、
徹底的に焦らされていたぶられ、
恥ずかしさと興奮の中、絶頂を迎えて彼女の深い藍色の水着の生地に射精を噴いて果てる、というシーンを思い描いてしまう。
それが現実になるわけないのは重々承知しているのに、にもかかわらずこの水泳レッスンの前の日に興奮だけしてしまって、
自宅のせんべい布団の上のiPadでそのシーンを思いながら、
スパッツスタイルの競泳水着の商品写真から無料エロ動画にすすみ、
それを使った性交のシーンのイラストをpixivで探して、
それがなかなか見つからなくてイライラして、
それでそのイライラを性欲に転換してしまい、
私の妄想と煩悩で描いた落書きの競泳水着姿で情けない短い自慰をして時間を無駄遣いして果てたりするのだから、本当に救いようがない。
こんなド変態なことを公開したら先生も職場の人間もみんなドン引きも良いところだし、私も恥ずかしくて顔向けできずに首吊るか電車に飛び込むかしかなくなるのだが、
それでもその天使の彼女の競泳水着をハイカットスタイルと考えて、
ボトムのクロッチの布をずらして彼女の膣をあらわにし、
そこに人生最後の怒張の男根をねじ込む妄想をできないことに、年齢による衰えを感じたりしてるから、ど変態も極まれり、なのである。
年相応に妄想が情けない方向に解像度が上がってるのが、またなんとも情けないのだ。
そんな妄想ばかりしてる私にとって、競泳水着はそれをまとう女性がいなくても、
いや、かえっていないことで妄想が高速増殖して非常に扇情的で、
セックスのための衣装にすら思えてしまうのだ。
セックス着という身も蓋もない言葉さえ突然脳内に思い付くから、一刻も早くしにたくなる。
それ故、このプールの売店の誰も着てない売り物のハンガーに掛かった競泳水着やトレーニング用のスポーツブラは大変危険なものであり、
反面どっしりずっしりのおばあさんの着ていた水着は存在感が空気以下なのだ。
私の性欲とはそういうもの。
お婆さんに欲情するのはさすがに無理で、それより気持ちとしては、末永くお達者で、と言うところでしかない。
また子供が水着を着ててもそれに欲情することも全くない。良い子だからちゃんと帰ったら歯磨いて宿題やって寝てお父さんお母さんを困らせないようにね、ぐらいにしか思わない。
変態ではあるがストライクゾーンはじつはかなり狭い。
狭い上に妄想もするのだからストライクなんて入るわけもなさそうだが、といいつつ女性という不条理な存在に妙な好奇心が沸いてしまうスケベだから、ストライクゾーンなんてものは意味がないのかも知れない。
そう言う私なので、実はこのプールの塩素臭い匂いとか、プールサイドを歩くときの独特の不安定さとかを体験してる自分を観察して楽しんでいたりする。
先生にはとても申し訳ないが、私の頭は先生の言うことに熱心に聴き入って水泳というスポーツに興味を持ってきているのだが、それとは別に心はこのプールというこれまであまり来なかった非日常の空間を、こんな調子でど変態に楽しんでいるのだった。
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