異界の黄金タロット - 死神猫と裏切り者の女神 -

第6話：（1/4）新たな力と運命（悠人の挑戦）

　悠人はついに自身の運命と向き合い、新しい世界での冒険に備え始めた。彼の前には、神秘的な力を宿したタロットカードが浮かんでおり、「ワンドペイジ」と「審判」が彼の運命の鍵となる。悠人はこの力を受け入れ、異世界で「自分自身を創造せよ」という挑戦に立ち向かう決意を固めた。

　彼とリリスは階位を上げ、新たなタロットカードを入手するため、ダンジョンに潜む凶悪な魔獣の討伐を目指す。凶悪な魔獣はダンジョン内に多く生息し、多くの探索者たちがそれを狩ることで生計を立てていた。悠人はタロットカード「ワンドペイジ」と「審判」の力を試すため、魔獣との対決を選ぶ。

　翌朝、悠人は生存を確認するためにゆっくりと目を開けた。「俺は、まだ生きているな……」と自身の手を見つめながら、ベッドから起き上がり、窓の外に視線を移した。外では人々の活発な往来が見え、彼の心は冒険への期待で高鳴った。

　リリスは「ん？　起きたの？」と声をかけ、「雑貨屋で水筒と防具屋で防具、薬屋でポーションをまずは買いましょう」と提案した。悠人は「わかった、案内を頼む」と答え、リリスはベッドから優雅に床へ着地し、先導を始めた。悠人は彼女の後を追い、一緒に部屋を出た。

　リリスは「まずは薬屋ね、ついてきて」と言い、二人は五分ほど歩いた後、Xの形に交差する試験管の絵が描かれた看板が目に入った。悠人が木製のドアを開けると、扉の鐘がカランコロンと響き渡った。

　店内は十二畳ほどの広さで、竹の筒が所狭しと並んでいた。リリスは「悠人、ここの一番高い回復薬を十本買うわ」と指示した。筒は黄色く塗られており、一本金貨十枚の価格が設定されていた。悠人はカウンターにそれを置き、「これを買う」と告げた。

　リリスは素早く百枚の金貨をカウンターに積み、「これ、お代ここにおくわ」と言うと、老婆は金貨を数え、「ありがとさね」と笑顔で応じた。

　二人はその後、雑貨屋に向かった。悠人は「リリス、これは相当な効き目なのか？」と尋ねた。リリスは「うん、それは蘇生以外なら何でも治せるわ。病気も怪我も欠損もね」と答えた。悠人は「こんなに高いけど、本当にいいのか？」と続けた。

　リリスは深刻な表情で、「こういうのはけちってはいけないの。いざというときに役立たないもの。だから、可能なら最高のものを用意しておくのよ」と説明した。

　確かに、死と隣り合わせの環境で、誰にも助けられない中での自己防衛は必須だ。悠人もこの厳しい現実を認めざるを得なかった。そんな中で、彼とリリスが到着したのは、籠の絵が描かれた古めかしい看板を掲げた店だった。「ここで買うのは水筒だけね。選んであげるから、またカウンターに置いてね」とリリスは軽やかに言った。

　店の木製の扉を開けると、心地よい鐘の音が響いた。中は先の薬屋ほどの広さで、多様な商品が並んでいた。リリスは慣れた手つきで商品を指し示し、「この正面にある茶色の水袋と銀色の袋の二つをカウンターに乗せて。ここもお代は私が払うわ」と言った。

　悠人は指示に従い、商品をカウンターに置いたが、応対する人が見当たらなかった。リリスが「ねえ、誰かいないのー？」と店内に呼びかけると、奥から若い女性の声が答えた。「はい、はーい今行きます。」

　代金として金貨十枚を渡し、リリスはそれを店の女性に渡した。「ありがとうございましたー」と店員の元気な声が背中越しに聞こえた。

　リリスは「次は防具屋よ。最後ね。レザーチャップスとライトレザーアーマーを買うわ」と次の目的地を告げた。悠人は「レザーチャップス？」と疑問を投げかけると、リリスは「ええ、ズボンの上に着用する革製の保護服のことよ」と説明し、ほどなくしてその店に着いた。店の看板には上半身の防具を模した絵が描かれており、分かりやすかった。

　購入後、二人は井戸で水を汲み、先ほど購入した緑色の水袋に水を満たした。悠人はリリスの手際の良さに内心で感心した。

　リリスは「これで最低限の準備は完了。さあ、ダンジョンへ行きましょう」と先頭を切って歩き出した。悠人は彼女の後を追い、町の中にある小高い丘の麓に位置するダンジョンの入り口へと向かった。周囲には多くの小屋があり、さまざまな物を売る商人たちがいた。

　リリスは「おそらく、悠人の持つ力だとかなり深層の階層主も倒せるわ。ただし、今日は様子を見て、階層主戦は数回で帰還しましょう」と提案した。悠人は「ああ、やってみるさ」と応じた。

　ダンジョンの内部は想像以上に明るかった。壁面に生える光苔が放つ光が暗闇を照らし出していた。通常の近接格闘技を駆使して進むことに決めた悠人だが、タロットカードに宿る力により、予想外の高い攻撃力を発揮していた。ワンドペイジのカードが持つエネルギーが彼の動きを加速させ、一撃で魔獣を粉砕するほどだった。そのため、普通の魔獣たちは彼にとっては手応えのない相手で、ただ道を切り開くように進んでいった。

　しかし、その強大な力にも悠人は若干の不安を抱えていた。これでは訓練にならず、本当の強敵との戦いに備えることができないのではないかと危惧していた。それでもリリスの計画通り、彼らは十層の階層主の部屋の前に立つまで、敵を次々と倒して進んだ。

　リリスは「ここまで順調ね。ね？　階層主以外は楽勝でしょ？」と軽やかに言い、その表情には安堵と期待が入り混じっていた。悠人は「ああ、そうだな」と返事をしながらも、彼女の期待に応えたいというプレッシャーを感じていた。

　悠人は、タロットカードの力を手に入れる前の自分を思い返していた。元の世界で平凡な学生だった彼は、突然異世界に飛ばされ、その運命を受け入れることに戸惑いを感じていた。しかし、リリスとの出会いと彼女の導きにより、次第に自信を持ち始めていた。

　リリスもまた、悠人に対する期待と同時に、自身の過去の冒険を思い

　出していた。彼女が過去に失った仲間や経験した困難が、今の彼女を強くし、悠人を導く力となっていた。

　ダンジョンの中では、壁面の光苔が放つ青白い光が幻想的な雰囲気を醸し出していた。悠人はその光を見つめながら、内心の不安を押し殺し、前へ進む決意を新たにした。彼の心には、「自分自身を創造せよ」という言葉が響いていた。

　次々と現れる魔獣たちを倒す中で、悠人はリリスの戦術と自分の成長を実感していた。リリスの冷静な指示と共に、悠人はタロットカードの力を最大限に引き出し、強敵との戦いに備える準備を進めていた。

　ついに十層の階層主の部屋の前に立った二人。リリスは「ここが本番よ。悠人、あなたの力を信じて」と言い、悠人は「わかった、やってみる」と力強く応じた。彼の目には決意の光が宿っていた。

　階層主との戦いが今、始まろうとしていた。