15話 フラン視点:聖ラザロ修道会に到着。
メイドのフランです。
はぁぁ、鬱です……。
何よりアル様に申し訳がたちません。
本来なら、ボルトンから聖ラザロ修道会まで3日で到着する予定だったのです。
「いやぁ、すみません」
それでも旅商人のコネルトさんは呑気そうに微笑んでいます。
「ちょっとばかり、テトの街を出るのが遅れちゃいましたからね」
「あ、あの──遅れたというレベルでは──」
私だって文句を言いたくなります。
ちょっと立ち寄るだけと仰っていたのに、1週間以上も街に滞在する羽目になったんですもの。
でも、コネルトさんは立派なことをされたに過ぎません……。
「いえ──仕方がありませんわ。だって──」
◇
あれは、テトの街についた日のことでした……。
この街は奴隷の仲買で栄えています。
そんな街で、買い戻されて解放された奴隷が20人、しかも買い戻したのが高名な聖ラザロ修道会のヨハン総長ということで大いに話題になっていました。
アル様の入られた聖ラザロ修道会──。
とっても素敵な方が指導する修道会と分かり、私もホッと胸を撫で下ろしたものです。
きっと、清廉潔白なヨハン総長のもとで、健やかなる騎士様に成長されて──と。
「おっと、フランさん。噂の解放奴隷って彼らじゃないですか?」
今日はテトの街に宿を取る予定だったので、コネルトさんは宿屋街に馬車を走らせていたのです。
街路の端を見ると、確かに20人くらいの少年少女たちが並んで歩いています。
大きな男性が先頭にいますので、きっとその方が宿まで連れていき、明日には修道会を目指すのでしょうか、と思っておりました。
「い、いかんっ!! ドゥドゥドゥ!」
突然コネルトさんは馬車を止めて飛び降りると、少年たちの先頭にいる大男に駆け寄ったのです。
「ガルフっ!!」
「あ? あああ、ちっ。お節介野郎のコネルトじゃねぇか」
「御者泥棒のガルフめ! 慈悲深きヨハン総長が買い戻された解放奴隷を、お前はまたどこかへ売り飛ばすつもりだろうっ!!」
何事かと街の人たちも集まり出し、また少年少女たちも怯えた様子です。
「アホウ。俺はちゃ〜んと修道会へ届けるぞ」
「預り証を見せろ」
買い戻された奴隷を預かったという証明書のことです。
「う、うるせぇ。どこかに落としちまったんだよ!!」
「ということは、また君は何らかの不正を働いたと──」
「黙って消えろっ! 商売の邪魔だっ」
大男が恐ろしい形相で青竜刀を振り上げました。
「ガルフ。君のような男が商売を語るのは本当に迷惑なんだ。だから、今日は許さない」
そう言ってコネルトさんは、腰に差していた不思議な形の剣を抜かれました……。
◇
「正規の預り証を取り直すのも大変でしたし、ガルフさんの治療も手配されましたし、皆さんを乗せていくための馬車も──」
コネルトさんは自分の馬車の他に、20人を修道会へ連れていくための馬車と御者も手配しましたので、さながらキャラバンのようになっています。
「ははは。大商人になった気分ですよ」
「ま、ふふっ──くすくす」
いつでもポジティブなコネルトさん。
やっぱり、素敵な方です。
いったい、どこでアル様と知り合ったのかしら?
工場長さんといい、アル様って素敵な方を吸い寄せる魔力があるんです……。
だから、きっと聖ラザロ修道会の総長も素晴らしい方に違いありませんわ。
「な〜んて話をしていたら、ようやく見えてきましたよ! フランさん」
「まあ」
前方に現れた聖ラザロ修道会の尖塔を見て、私は思わず涙しそうになりました。
遂にアル様と会える。そして言い付けを果たせるのです!
「ん、おや、何だか物々しい皆さんが……」
「は、はい?」
修道会の門が開け放たれ、土煙と共に騎士騎士騎士──な方々が……。
まさか、これから聖地奪還に?
「ここを通るようです。ちょっと脇に避けましょう、ドゥドゥドゥ」
街道は常に騎士様が優先です。
コネルトさんは全ての馬車を端に寄せて、騎士方々の邪魔にならないようにされました。
ただ、私としては気が気でありません……。
万が一にもあの中にアル様がいて、そして聖地に向かわれるのだとしたら、もう2度と会えないかもしれないのです。
私は無我夢中で馬車を降りて、街道の真ん中に立ちふさがりました。
「ダメだ、フランさん! 危ないですよ」
「だ、だ、大丈夫ですっ。エルフですからっ。これでも70歳ですからっ!」
自分でも良く分からない受け答えになりました。
ああ、どんどん近付いて来ます。
地響きがとっても怖いです……。
私はエルフ。 魔法だって使えるんです。
止まってくれないなら、私の秘奥義を──。
でも、やっぱり怖いっ。
「と、止まってええええええっっ!」
「フランさああああん!!」
「ふぉふぉふぉふぉ──ふぉぉ? 止まれいっ」
ああ、良かった……。
先頭を走る随分とお歳を召した騎士の方が腕を振ると、全ての騎士様方が止まって下さったのです。
「どえらい、べっぴんエルフちゃんがおるぞい! バルバロから戻ったらワシの嫁にする。誰ぞ縛っておけぃ!!」
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