51 夏休みが終わるって?(1)
「なぁ……なんか俺ら、夏、遊んでなくね?」
「え?」
ケントの声で、3人が顔を上げた。
ほぼ、宿題も終わり、会えば毎日しなくてはならない英語の宿題をやってゲームをするか漫画を読むかで日々を過ごしていた。
「ケント、遊んでんじゃん」
亮太が言う。
実際、会った時はケントが一番ゲームで遊んでいるのだ。
「どこか行きたい?」
インドア派の礼央が言う。礼央も、特に外に出たいと思う事はない。
「俺の部活量舐めんな」
最後にサクが突っ込んだ。
夏休みも部活三昧で、1日4人が揃う日もそれほどはない。
「外で遊ぶの、よくない?」
ケントがニコニコ言う。
「って言ってもなぁ……。遊園地とか?」
自分で言っておいて、正直この4人で遊園地のイメージは湧かなかった。悪くない提案ではあると思うんだけど。
「海は?」
言ったのは、サクだった。
とことん、身体を動かすことが好きな奴なのだ。
「海はちょっと……」
正直、自分の事が好きな奴の前で服を脱ぐのは気が引けるわけで。
「よし!じゃあ体育館だな!」
そう言ってやって来たのは、市が運営している近所の体育館だった。
たまたまこの時間、他に使っている人も居なくて、借りるのもすんなり借りることができた。
サクは、本当に、とことん身体を動かすことが好きな奴なんだよ……。
「よく持ってるな、ラケットなんて」
「朝練用」
「けど、2本じゃん」
「予備ないと、ガット切れた瞬間に練習放棄になるだろ」
「なるほど」
「うおー!めっちゃ楽しみ!」
屈伸から飛び上がったケントが叫ぶ。
ケントは、目の前の事に夢中になれる、楽しそうならなんでもいいタイプだ。
「球技大会ん時さぁ、俺、二人がサクにバド教えてもらってんの、ちょっといいなーって思ってた」
それを聞いて、亮太が「ふっ」と笑う。
「さみしんぼー」
「なっ……、りょーくんだって、俺居なくて泣いちゃった事あったじゃん」
「え……ないよ、そんなの」
そんな記憶、ないぞ?
「小1の遠足ん時」
「いや、覚えてないって」
その時、大きな声が響いた。
「じゃあ、はじめよっか!」
礼央の声だった。
……れおくんがあんな大きな声出すなんて珍しいな。
なんだかんだ、れおくんも4人で遊ぶの嬉しいのかな。
ケントと戯れ合うのはそこまでにして、4人で集まる。
まずケントが、サクによるルール説明を聞いている間、亮太と礼央が二人でラケットで遊ぶ。
それからすぐ後に、ケントのゆるゆるとした練習を見ながら、二人で笑った。
「ちょっと待って!むっずい!」
「よーし、いいぞー!さっきより真ん中当たった!」
サクは褒めて伸ばすタイプなのだ。そうじゃなかったら、球技大会の時、亮太と礼央もヤバかっただろう。
亮太にしろ、礼央にしろ、ケントにしろ、体育会系のスパルタ方式について行けるほどの体力は持ち合わせていない。
「もしかして、俺ってバド向いてる!?」
それにしても、ケントにそこまで言わせてしまうサクの力はすごかった。
「よーし!バド部入るか!」
「ごめん、無理!」
◇◇◇◇◇
みかみくんとケントが戯れあってるのが気に入らなくて、つい大きな声で引き離そうとするれおくんなのでした。
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