33 自分だけの舞台(4)
それから、2日間。
家に帰ってから、夜遅くまで2人でゲーセンに篭った。
確かに、上手くなってはいる。
クリアするまでに、死ぬ回数も減った。
いやいや。
クリア出来るのもれおくんのおかげだし。
大会に出るのに死亡があるのはちょっとヤバいだろ……。
少しでも、人前に出られるくらいにはなっておきたかった。
「ぬ〜〜〜〜〜〜ん」
唸り出すと、
「へっ!?みかみくん、どうかした!?」
と、素っ頓狂な声が聞こえてきた。
「いや、ちょっと焦っちゃって」
つい、礼央の反応に笑ってしまうと、礼央の笑い声も聞こえた。
こんな時に、怒るでも怒鳴りつけるでもなく、笑ってくれるのって、こいつの長所だよなぁ。
目の前は荒らされたホームセンターのようなステージ。
それに、ドヤドヤと出てくるゾンビの群れ。
そして、それが楽しいと思っている自分だ。
「よし!ラストステージ!」
ここまで一度も死んでない!
だんだん、リロードのタイミングにも、ゾンビの唐突な出現にも、慣れてきていることに気づく。
このまま……!
タン!タン!タン!タン!
と小気味いい音を立て、なんとかゾンビを一掃した。
「やった……!」
言った瞬間、周りから、わっ!と声が上がる。
「クリアおめとー!」
拍手の音。
な……なんだ……?
周りを見渡すと、思いの外、人で囲まれていた。
「レオンじゃん!おめでとー!」
すでに顔見知りになりかけていた常連さん達だ。
きっと礼央を見つけて寄ってきたんだろう。
「え、明日の大会出んの?応援するわ」
「ははっ」
愛想よく笑う礼央が、なんだか眩しかった。
最後に、ゲームセンターの隅にあるドリンクコーナーで、二人でコーラを飲んだ。
「やったね」
礼央が、こちらを向いた。
……いい笑顔じゃんか。
「明日、頑張るよ」
「僕も」
コーラが、シュワシュワと弾ける。
「うん」
礼央が、何かを決意したみたいだった。
「勝ち行こう」
そのあまりの無謀さに。
笑いが込み上げてくる。
「おう」
一人になって見上げた夜空は、数少ないながらも星が顔を覗かせていた。
ドキドキしている。
これは、心配や恐怖じゃなくて、ただ、ワクワクと興奮しているんだと思う。
ゲームセンターの音が大きいし、周りの空気に飲まれてしまうからそのせいかと思っていたけれど、どうやらそれだけじゃないようだ。
思ったより俺は、明日の大会が楽しみらしい。
れおくんと舞台に上がる、その大会が。
2、3日で、なんとかなるわけない。
なんとか体裁が成り立っているように見えるのも、れおくんがいてくれたからだろう。
きっとダメダメだ。
けど、それでも。
大会を楽しみたい、全力を出したい、って。そんな風に、思えるようになっていた。
◇◇◇◇◇
吊り橋効果かな!?
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