20 ホットケーキを積み上げて(3)
取り出したのは、レースゲームだった。
4人でレースに興じる。
礼央はじっと前を見据えて走るし、ケントは「ぐおおおおおお」とうるさい。
まったく正反対の二人だ。
結局それでも礼央が1位になった。
4人でパズルだのパーティーゲームだのをやった挙句、どうしても勝てないケントが躍起になって、礼央に何度も勝負を挑んだ。
すっかり蚊帳の外になった亮太とサクは、今日の英語の宿題に取り掛かる。
ふと顔を上げた亮太が、「ぶふっ」と吹き出した。
「ん?」
亮太が笑うのを止められなくなったところで、サクが後ろを振り返る。
ゲームをしている二人は真剣だった。
とうとう、ケントは、これなら勝てるだろうとリズムゲームを取り出したらしい。
二人で並び立ち、コントローラーを右へ左へ真剣に振った。
ビシッ!
無言でおかしなポーズを取る二人。
あまりにも、シュールな光景だった。
「……なんか、すっげぇな」
サクは、笑うのを通り越して、すっかり感心してしまっている。
流石にここまで来ると、ゲームの能力というより体力のある方が有利な様だった。
「くっ……」
その日初めて、礼央が悔しそうな呻き声を出した。
「はぁ……っ、はぁ……っ」
ケントの息が荒くなっていた。
まるで、ワールドカップにでも出たのかというほどの。
リズムゲームにかなり必死になったようだった。
「どうだ……!見たか……!」
ケントの勝利の叫びに、礼央が膝をついた。
礼央が、本当に悔しそうに、手を床につく。
その二人の姿を見ながら、サクと亮太はコソコソとした声で、聞こえる様に言い合う。
「偉そうにしてるけど、やっと1勝だろ?」
「それもかなりの辛勝」
それでも、れおくんにとっては、悔しかったんだろうな。
気持ちはわかるけれど、どうしても微笑ましいと感じてしまう。
「も、もう一戦!」
言い出したのは、礼央の方だった。
こういう性格だから、あそこまでゲーム強いんだろうな。
負けず嫌いというか、なんというか。
とはいえ、ケントと礼央の争いは、犬猫のじゃれあいにしか見えないけど。
「よぉ〜し、やってやろーじゃん」
と、ケントは当たり前の様にその試合を受ける。
「ふはっ」と亮太が、笑う。
「あいつら、英語で負けるぞ」
サクが呆れた声を出した。
亮太も呆れはするけれど、ケントと礼央が仲良さそうにしてるのは、亮太としても悪くない光景だった。
この間のゲーセン試合では、ずっと真面目な顔してたからな。
こんな風にいつもの顔でゲームしてるのは、やっぱり楽しそうに見える。
そしてやはり、真剣な顔の二人が、おかしなポーズを取りつつリズムゲームをする様は、なかなか面白いもので、また亮太は笑った。
◇◇◇◇◇
次回からは新展開、かな。
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