19 ホットケーキを積み上げて(2)
そんな静かな時間は、ドヤドヤとリビングに入ってきた少年達の声で終わる。
「けっこうゲームあるのな」
「受験明けでちょっとおかしくなっちゃってたかも」
「俺、狩り行きたい」
「ここで一人でやるゲーム始めてどうすんだよ」
「れおくん、終わった?」
亮太が声をかける。
「え、あ」
礼央は、あと2枚程あるお皿を見ると、隣から、
「あとやっとくから」
と、声が掛かった。
亮太の母は、なんだか機嫌がいいようだった。
そんなわけで、リビングに、4人の少年達が大型テレビを覗き込む事になった。
ケントが先陣を切る。
「れおくん、ゲームとかする?どんなの得意?」
ずらっと並べられたゲームには、パーティーゲームから格闘ゲーム、パズルゲームなど多種多様。
ケントはどんなゲームでもすっかりやる気満々で、コントローラーを振り回している。
ケントは自ら動いてくれるし、けっこう便利なやつではある。
うるさいけれど、この性格がありがたい時もあるから、文句は言えないのだ。
「こんなの、かな」
と言って、おずおずと礼央が選んだのは、FPSだった。
え、れおくん、何気にやる気だな。
つい先日の、ゲームセンターでの出来事を思い出した。
「おう、やってやるぜ」
ケントが、いい顔でコントローラーを握り直す。
礼央がコントローラーを握る。
その瞬間、礼央の顔つきが変わった。
……なんでそんな…………。
「対戦でいいよね」
礼央が、いつになくハッキリと言う。
「おう」
ケントの顔も、真面目な顔つきになった。
対戦が始まる。
始まって間もなく、その力の差が歴然としている事に、ケントとサクの二人も気付いた。
その緊張感に、サクと亮太も息を呑む。
結局ケントが負けるまで、数分もかからなかった。
ケントがそのあっけなさに呆然とする。
礼央は王者の風格で「ふっ」と息を吐いた。
まるで、今まで息を止めていたかの様に。
長い睫毛が伏せられ、手の中のコントローラーを眺めた。
……え。
え???
亮太の頭の上には、ハテナが浮かぶ。
れおくん……なんでそんな本気なんだよ。
ケントの事、あんまり好きじゃなかった?
いや、けど、いつもは普通に話してるし。
……ゲームとなったらいつでも本気になっちゃうタイプ?
混乱していると、
「うおおおおおおおおおー」
と、ケントの雄叫びが聞こえた。
けど、険悪になったらどうしよう、なんて心配は杞憂に終わる。
「れおくん、つっよいじゃん!なになに、なにそれ!」
ケントが興奮し、
「ほんと、すっげ、かっこよかった」
と、サクが大きな声で笑った。
ケントの方を見た礼央は、
「絶対負けない」
と、シリアスな声で宣言する。
え、何?拳銃持つとヒトが変わるタイプ?
「よし」
と、ケントもなんだかいい顔で応じる。
「次はこれで勝負だ」
◇◇◇◇◇
ケントは亮太と仲がいいですからね。負けられない相手なんでしょうね。
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