第10話 会話ある時間

忘れてたけど、なんで木があんなに苦手なのか聞いてなかった。

何か昔あった感じだよね、流石に。

でも…まいっか。

一人と半分くらいまでの綿を並べた地面を見る。

うん、まぁ、寝れそう…?

「なぁ、此処の時間ってさ、多分正常じゃないよな。」

運び作業を終わって、私の隣で同じ綿だしに移った英が話しかけてくる。

彼とは真逆だ、なんて思っていたけど案外似ているのかもと思い出した今。

「そうだねー、数時間しか経ってない気がするのに感覚夜だしね。」

「だよな」

相槌を打つと、また黙々と作業を続ける。

手元が狂いそうになる程繰り返したこの、身を割ってワタを出す作業だけど、初めて一時間ほどで、漸く終わりがチラつき始めた。

そして20分後。

「よっし!!!できた!!」

「できたぁぁ!!」

二人して思わず声を上げた。

英が運んできた実を破り終わり。ベッドらしき形に整え終わり。

やっと!!終わった!!

英を見ると、屈託ない笑顔を浮かべている。

それにつられて私も笑った。

角の方に固めたそれに、取り敢えず座ってみる。

「ね、英。私もさ、そんなしっかり者じゃないんだよね」

ふと漏れた言葉に、英は目を丸くする。

「だよな、今日思った」

「ふふっそれって失礼じゃなくて?」

「えー違うだろ〜」

初めじゃ考えられないような会話に、また口元が綻んだ。

「俺もさ、妹いるとしょうがないんだけど、ボール系禁止だったんだよな。木登りも、真似すると危ないからって。」

「えーそっかぁ、わかる気もするけど…普通にその妹さんがいない所ならいいんじゃないの?」

「俺も思ったよそれ。言ったんだけど、なんか言いくるめられて。」

「英って案外素直だからね」

「褒め言葉だよな?」

「うーん?でももっとちゃんと素直に、木登りできません!って教えてくれたらよかったんだけど。」

「それはホントごめんって…」

「お陰でこんなとこで寝るんだよ?」

「ふかふかな、な。」

「確かにね」

二人からそれとなく寝るまで、適当な話題で話していた。なんなら、この夜が続いてほしいみたいな、修学旅行の夜みたいな気分になっていた。


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