第8話 急な窮地 *(英)

もう、ダメかもしれない…。

数メート登った時点でオレは事実に気づいた。

これは行けない、と。

でもなーうん、こんなところで止まれないんだよ!

ちょっと捕まって休もうかとも思うけど、そんなことしたら自分の身体の重さに負けて掴む手が滑りそうだ。

和香の真似をしてるつもりなのに、手際は悪いし、どんどん差をつけられる。

いやなんで…。

はい、体力ないからです。

自問自答してる余裕がまだあるのが救いだ。

後ちょっとしたら無くなりそう。

いやいく!いける!

また根拠のない自信で奮い立たせて数分。

よしっ、和香との差が1メートルほどに縮まった。

正直もう筋肉ちぎれそうだけど、ここは踏ん張るしかな…。

「うわああっ?!」

「えっ?」

気を抜いたつもりはなかったのに、手が滑って重力に逆らえなくなる。

勢い余って焦った挙句、目の前に見えた枝を掴んだ。

「うわっえ、ちょっ英?!」

瞬時に和香がこっちを向いた直後、彼女まで手が木から離れてる!

パニックの目に後悔の色が走って、オレと同じように落ちてくる。

引っ張られたようにオレに向かって落ちてくる。

ん…?

ちょっと待ってなんで…?!まさか今の枝って…!

今度はちゃんと重力のある、垂直落下。

まずい。やばい。どうしよ。

しかも今の、オレが和香の持ってるあの棒を掴んだせいだ。

あれだけ登ったのに、地面があと1メートルほど。

「ぇいっ!」

和香の声が微かに聞こえたけど、ショックかパニックなのかどんどん意識が遠のいていった。

ごめん…!確かそれは言えた気がする。

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