第7話 崖のぼり②  *(和香)






二度目の英の木が透明現象には正直呆れた。

この木、すごく大きいでしょ!

逆に大きいからどうしてか気づかないのかな?

でもその気持ちが思いっきり伝わってしまったのか、英はビクッと肩を揺らした。

「あ…」

と納得の顔で声を漏らしたかと思うと思いっきり顔を顰めた。

ちょっと気にさせすぎちゃった…?

「や、ええっと、木に登れる…?ごめんちょっとやらかしたから…。」

ほんと申し訳ない。これは完全なミスだ…。

でも、いくら木が見えてなかったとはいえ、英なら普通に木登りしてそう。

校庭のジャングルジムとかでよく見かけるし。

と思って英にもう一度視線を向けると、

ビミョーな顔をし頭をかいている。

すごく気まずげに、でもすごく悩んでる風だった。

あれ?

思ってた反応と真逆…。

やる気満々に得意分野!って顔できそうと思ってたんだけど。

なんか色々と私が思ってた英と本当の英は違うみたい…?

でもいく気のない彼を無理やり上らせるのは危険だ。

「難しそうだったらいいよ。違う方法を探そう。」

普通に伝えたつもりだったけど、英の何かに引っかかってしまったのか、ものすごい形相で首を横にふった。

「いや!行く!いける!」

覚悟を決められたような顔でこっちを見られ正直たじろいだ。

や、え…?そこまで何をそんなに。

「えでも無理したら危ないよ?ほんとに大丈夫…?」

全然大丈夫そうには見えないけどな…。

握りしめてる彼の手は微かに震えている。

さっきからも息を整えようとする音が聞こえてきてた。もしかしたら体を動かすのはあまり得意じゃないのかも?

私は水泳とバスケットボール習わせてもらっててそこそこ体力はついてる。

けど…。いけると言ってるのにこれ以上心配したら失礼なのかも。

「わかった。行くよ。」

できるだけ何も悟られないように言い、さっき伸ばして作ってきた岩の地面を歩いて木に向かう。

「あ、ああ。」

やはり不安そうな声に戻った英。

んんん大丈夫かな…。

近くまで寄ると、木までは十センチくらい隙間があった。

まぁこれくらい電車とホームの間くらいだし大丈夫でしょ。

木の周りを一周見渡し、窪みを探す。

あった!ちょうど良いとこにあるし、幹の分かれ目の間に一旦入れそう。

安全にいけるかは、どれだけ虫とかがいるかだけど…!

いや迷っててもしょうがない!早くここから出ないと…!

あれ、早く出る…?そりゃそうだよね、早く出ないと、みんな…。

えっと…?

んんとりあえず地上へ!頑張る!

喝を入れ初めの出っ張りに足を乗せ、その1メートルほど上にあるもう一つの窪みに手を掛ける。

こんなに楽な場所に凹凸があってくれたら、英も大丈夫でしょ。

と思うけど…。というか、だと良いけど…?

登り始めてから数分、順番に順調に登れてきてる。

下をついてくる英の顔は見えないけど、多分大丈夫そう。

そこまで荒れた息遣いじゃないし。って、ちゃんついてきてるよね?

ゆっくりバランスを崩さないように首を下に向けると、英は2メートルほど下に居た。

あ、これじゃあんまり息遣いなんて聞こえないかも…。

でも見てると手が震えてる。怖いんだろうな、でも私も正直怖い。

手に食い込む木の型?も痛いし。

これ落ちたら相当やばいし。まぁこの面で行けば伸ばした崖の岩にぶつけるくらいで済むのかな…?

でもこの高さなら、怪我は免れないかも…。

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