第3話 落下 *(和香)
なんなのー?!これ何?何これ?
ほんとになんなのこれ。
さっき明那ちゃんがボールをけとばして取りにきたらこの様。
どうして英があのタイミングでこっちにきたの?
もし違う子だったら、その子とこの状況に陥ってたのかな。
あーあ、早くこの空気変わらないかなぁ。
しんどい…。
沈黙の中、景色はずっと変わらない。白いぼやぼやした空間を落ちていっている。
うーん、それにしてもこの空間不思議で仕方ない。
もちろん、普段あり得ることじゃないけど、落ちて行っているのに、髪が逆立ったりしない。服も、すんなり落ちていっている。
まるで重力がないみたい…
ーぼんっ!
急に大きな音がして、心臓が跳ね上がった。
はいっ?!
周りを見渡すと、
えっ?
ん?
え?
驚きすぎて思考が止まったように何も考えられなくなって、声が出てこない。
私の目の前には大自然の『高地』が広がっていた。
何処を見ても、自然の色で埋まっている。
土、緑、水。
空がずっと横で広がっている様に見える。でも雲はない。
木々が茂っているようにも見えるし、草むらの様にも見える。
どっちなのか判らない。
其処には自然がある筈で、多分地球上な気がするけど、異質感があった。
景色に見入っていると、肌に当たる服の感覚が変わっている事に気づいた。
体操服だったはずが、何故か、今日着てきたキュロットとゆるい長袖になっている。
いつの間に?!
見ると、英も長ズボンとパーカーになっていた。
あれ?なんか違う、と思ったのは、スパッツみたいなのを履いてたのがない。
それにしても、ここ、暖かい。すごい落ちていってるのに、寒くない。
地面が遠すぎる。
まだまだ着きそうにない。
今度はちゃんと重力がある。
でもなんか少ない…?こんな高さ、一つの無人島みたいなのが一面見れるような高さから落ちているのに。
スピードが弱い。
ビューじゃなくてヒュウみたいな。
怖っ。
私は、何より理由がわからないものが嫌いで怖い。
今までで一番と入って良いほどの恐怖を感じているかもしれない。
しかし英を見ると、面白がってる…。
呆れを超えて、感心になりそう。
何か言いたいけど、言えない。
偶ににお互い遠慮してるのかなと思うけど、お互いな訳無い。
私だけが、遠慮してると思う。
英のあの性格で、私なんかに遠慮するはずないよ…。
いや、思い込みは良く無いけどさ。
そうは思っちゃうよ。
本当に英とは殆ど会話したことが無いから、わからないけど。
あっ、気づくと地面が近い。
と思えば、
んンンンン?あっあな?穴?!
見ると深さ数十メートルくらいありそうな穴に落ちていってる?!
うわあ?!
少しもがいたけど、意味を成さず。
直径も数十メートルくらいはある。
さっきなんで気づかなかったんだろう?!
もう目の前は固そうな地面。
あ、も、もうだめだ。
横を見ると流石の英も青ざめていた。
穴とは気づかなかったけど、落ちてる時点で想像できなかったの…?
言いたくなるほどの天然度。
さっきまではしゃいで面白がってたのは、何処いった。
ーボン!
何かが弾かれた音がしたと思えば、私たちの体はふかふか浮きながら地面に到着していた。
「えっうっわ?!」
英も流石に驚いている。
っていや待って、はぁ?!ねえ無事着いたのはいい、めちゃくちゃ良かったけど!
「今の何!」
思わず叫んでしまって後悔する。
でも!ていうかどこに着いちゃったのー?!
学校のみんな、急に消えたって騒いでるんじゃないかな?!
周りを見渡す限り、瓦礫。なにか実みたいな物の山ずみ。
でも緑も紛れている。
赤っぽいのもある…。
どこ、此処。
直径は広いけど、狭い感は半端ない。
ほとんど妙な瓦礫で埋まっている。
「うおー何これ?」
独り言のようにつぶやいた英の方を見ると、長い棒を持っている。
いや、何それ? 聞きそうになって慌てて止めた。
英もわからないから聞いたんだもんね…。
棒と言っても普通じゃなさそうな、とっても綺麗な円柱だった。
直径5cm位はありそう。
それをいじりながら立てている。瓦礫の上に。
「何してるの」
遊んでるでしょ、どうして立てる。
「え別に?」
適当な返事を寄越して、何やら弄り始める。
どういう思考回路、えぇ?
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