第2話 いつもの癖と異空間 *(英)

チャイムがなって、六時間目が始まった。

大慌てで運動場に出る。

「おい~英のせいだぞっ直前まで遊んでーーっ!!」

笑ってるのと怒ってるのが混じった様な妙な勢いで叫んでくる親友の十河。

「ははごめんって~」

少し気持ちを込めながらも、ふざけた調子で返す。

「はぁぁ」

盛大にため息を吐かれるが、中々すごい芸当だ。

全力疾走の中ため息なんて。

いや、そんな事より許してくれたかな?

いつもお調子者って言われてるけど、オレも結構気つかってるんだよな…。

表せてないのかな。まぁそこまで気遣ってるかって言われれば、違うかもだけど。

あっ今はそんなことより先生に怒られるーー!

運動場へ駆け込むと同時に、一斉に既にいた生徒の目線が此方へ向く。

「遅い」ドスの効いた単語だけの先生の声は怖い、うん。


チャイムが鳴り終わる2秒前で、ギリギリセーフであってほしい…。

「はいっ準備体操〜」今学期の体育係、小山さんが号令を出した。


数十分後、今日はサッカーの練習だった。

試合じゃなくて、二人一組でボールをパスする練習みたいな。

オレ、サッカー得意じゃないんだよな~残念なことに。

何度もボールを相手のいる場所とは程遠い所へ蹴ってしまう。

流石のペア相手の十河も、呆れ顔になってきた。

う…。

でもしょうがないじゃん?

小さい妹がいるからって、ボール系ほとんど禁止されてたんだからさ。

最近良いってなったけど。

十河みたいな小一頃から習ってるやつに叶うわけないだろぉ。

心の中でぐずぐず言い訳を零しながら、なんとか蹴られ返ってくるボールを蹴り返す。いや、しようとした。

でも等々、遠くに蹴り飛ばしてしまって、十河は

「あぁあー」

と、いかにも取りに行くのは嫌そうで。

「はいはい〜」

当然な気もするがそう言いながら、ボールがいった方向へ走った。

すると目の前をもう一つボールが、オレが今向かおうとしている先へ転がっていった。

そこへ走って追いかけているのは、女子、いや和香の姿だった。

和香…クラスで一番しっかりしているから、オレと真逆だなってみんながいう相手。

ふざけるとすぐ注意してくる。

もう無視するようにしてしまっている。

毎回毎回反応できないよ。一生懸命ふざけてるってのに。

うん、可笑しな言い訳だけども。


まあそれは置いといて、早くボールとって戻ろ。

そう思った瞬間だった。

ふわっ。

何かに落とされた感覚を喰らった。

手にボールを持ったまま、ぐわんと重力が消える。

え、何かに落ちた?

ん?それに、くるくると景色が回転し始めた?!

は?え?

「えぇっ?!」

思わず声を上げ、身を捩るが無意味。

見えていた校庭が、落ちていくことで視界から消えると、真っ白な筒のようなところに入った。

え、入った????

「ひゃー?!」

声に前を見ると和香が、目の前で絶叫している。

なんで?和香も?いや、なんでオレと和香なの?

って言うか、まず、え?何これー?!

自分がどんな顔をしてたかなんて判らないけど、とんでもない顔をしていたと思う。

気づくと筒が穴のようなサイズになって、其処を落ちていっていた。




大分しばらく、本当にとてもしばらく経って。

いつまで続くの…?びっくりを超えて、うんざりしてきた。

この不思議な通路はずっと続いている。

さっきから、数十分立ったのではないかと思うほど長く、オレらは落ちていってる…気がする。

和香も流石に落ち着きを取り戻した。髪が靡きながら落ちている。こうして見ると結構綺麗にしてるのかな?あんまり外見気にしてない奴かと思ってたけど。そんな所に目をやってしまうほど暇だ。グチャとした白のような背景の元、落ちていっているが、それを眺めるのも飽きた。流石に沈黙が辛くなってくる時間だ。

「ねぇなにこれ?」

和香が低いトーンでこっちを見ながら聞いてくる。タイミングめちゃ良いな。

っと思ってるのに。

「はぁ?オレが知る訳無いだろ」

驚きで思わずむすっとしたように返してしまった。

「そう、よね、」なんとも言えない空気になる。

悪かったな…。

でもほんとになんで和香となの?ってかそもそもどこに連れてかれてんのー?

そもそも連れていかれてんのか?

色々文句に変わり始めていた瞬間、

オレの手にあったはずのボールが消えた。和香のボールと同時に。

「「あっ?」」

ハモってしまって、また沈黙になる。

和香は一瞬かなりあっけに取られたが、オレを気にしているようで、平然とした顔を装った。

というか、物体が消える感覚ってこんなに不思議な感じなんだ…。

それにしても。

はぁ。

オレって和香にはどう映ってるんだろう?偶に注意される時考えてしまう。

大体の女子は少し怒りを含みながらも笑って流してくれるけど、和香はそうはいか無い。

思い出すだけで、ため息の連続になる。

せめて今この落ちて行ってる場所へ辿り着くとかしてほしい。なんとかこの状況から脱出したい…。

それにしてもこの空間、暑いなぁ。オレは寒い方がましだな…だから今の季節である秋って一番好きだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る