第2話大場くん
話しかけてきたのは隣の席の大場拓也くん。
明るい性格で好青年だ。まさか彼から話しかけられるとは思わなかった。少しオドオドしながら「何?」と聞き返した。
「教科書忘れちゃったから見せてくれない?」と大場くんから言われた。
「いいよ」と僕はすぐ返した。二人で教科書を見ながら授業が進んでいく。
授業が終わってすぐ、大場くんから「谷口くん、ありがとう!」と笑顔で言われた。
初めての経験だったので、動揺しながら「うん」と僕は言った。
この時初めて感謝されて嬉しいという感情が少し芽生えた。
ある日、大場くんからまた話しかけられた。
「谷口くんはいつも1人だよね?友達いないの?」と聞かれた。
「うん。1人もいないよ。」と素っ気なく返した。
すると大場くんは「そうなんだ。寂しくない?」と聞かれたが、寂しいと思ったことは一度もない。
「全然。むしろ人といる方が疲れるから。」と僕が答えると「ふーん。そうか。」と大場くんは小さくつぶやいた。
少し冷たく返しすぎたかなと後悔。
夕方になり、帰る準備をしていた。
すると大場くんから「谷口くん。一緒に帰ろ!」と誘われた。
「えっ?」。僕は思わず心の声が漏れた。
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