第4話キャンプ開始!
シエラ、エイナ、サラの3人はゆったりとした馬車の旅を終え、目的地であるキャンプ場へと辿り着いていた。
「うーんっやっと着いたわね。」
「到着しましたね。」
「ここが言ってたキャンプ場ですか、いいところですね。」
シエラは伸びをしながら、サラはそんなシエラの右隣で人差し指の側面を額に当て遠くを見ながら、エイナはシエラの左隣で素直な感想を言い、各々そんな様子で風の気持ち良い草原にシエラを真ん中にして並んで立つ。
「よし!じゃあさっそくキャンプをするわよ!」
体を伸ばし終えるとさっそく行動に出ようとしたシエラをサラが呼び止める。
「シエラ、ちょっと待ってください、今回のキャンプの注意事項というかルール的なものを設けたので説明していいですか?」
一歩前へ踏み出していたシエラが片足を上げたままの状態でサラへと振り返る。
「えっなにルール?まあいいけど。」
「では、まずこのキャンプでシエラには食料の調達から焚き火の準備まで自分自身でやってもらいます。」
サラは振り返ったままの姿勢でピタッと止まったままのシエラとそのあとに続こうかなと思っていたエイナに向けて説明する。
「ふむふむ、それおもしろそうね。でも私は焚き火のやり方も知らないし、野外での食料調達の仕方も知らないわよ。」
シエラは親指と人差し指を開いた右手を顎に当てワクワクしながら答えるがそれと同時に疑問も口にする。
それも当然の疑問でいままで王族として育ってきた彼女には野外で食べ物を調達する経験などあるわけが無かった。
「安心してください、私が教えますから。それに今回は一人ではなくエイナにもやってもらう予定なので二人で協力してやってください。」
「えっ私もですか!?」
エイナは胸に手を置き優しく言うサラの言葉に驚き、自分の顔を指で指したままシエラとサラの顔をおろおろと交互に見る。
「嫌でしたか?」
サラは本当は嫌ではないことがわかっているにもかかわらず首をかしげた状態で舌をチョロッと出しつつ、エイナへとわざとらしく尋ねる。
「いっいえ!私もやってみたいです!なのでよろしくお願いしますサラさん、シエラさん!」
エイナはぎゅーっと目を瞑ったあと、意を決したように大きく息を吸ってからしっかりとやりたいという意思表示を一気に口から音として出した。
「こちらこそよろしくねエイナ!」
そんなエイナの一連の動作を可愛らしいなと思いながらシエラはエイナに向かって一緒に楽しみましょ!という意味も込めてサムズアップする。
「はい!よろしくお願いします!」
エイナはペコッとおじぎをすると元気の良い声で答える。
「さて二人がやる気になったところで説明を始めていきます。よく聞いてくださいね。まず初めに食料の調達についてですが、これについては釣りをしていただきます。」
元気良く答えたエイナにサラはパンッと手を叩き満足そうに説明の続きを始める。
「へぇ私って釣りってしたことないわ、エイナはどう?」
シエラは釣りに興味を示したような声を上げると隣にいるエイナへと質問する。
「私もやったことないです。」
顔をブンブンと横に振り、少し大げさかなとも思わなくもない反応を示すエイナ。
「そうですか、でも釣れるとけっこう嬉しいものですよ。頑張ってくださいね。」
「ふふん!私が大物を釣ってやるわよ!二人とも見ておきなさい!」
「私も大きいの頑張って釣ります!」
シエラは両手を腰に当て自信満々に答え、エイナは両手の拳を強く握りしめてよし!がんばるぞーと意気込む。
「二人ともその調子です。では道具の作り方を説明します。まず木の棒を拾ってきてください、そのへんに落ちてると思うので。」
「ふむふむ、うーん…これでいいかしら。」
「えーと私はこれにします。」
草原の少し木が生い茂ってる場所で各々、ウロウロと歩き回り、ちょうど良さそうな長さと太さの木の枝を拾ってくる。
「いいですね、では木の棒が手に入ったらこの糸にこの釣り針を片側に結び付けてもう片方をこのように木の棒にくくり付けたら釣り竿の完成です。」
二人が木の枝を準備したのを確認するとサラは口で手順を説明しながら実際に手元に持った木の棒をテキパキと釣り竿へと変えていく。
「えっと…こうやって…こうしてからこうね!できたわ!エイナの方はどう?」
「えーとこうしてあーしてこう!私もできました!」
シエラとエイナはサラの説明を思い返しながらそれぞれの木の棒を釣り竿へと変えていく。
その後、シエラは出来上がった釣り竿を誇らしげに掲げ、エイナは出来上がった釣り竿を嬉しそうに両手でしっかりと握りしめる。
「うん、いいですね。それで釣り竿を完成です。あとは餌をつけてそこの川に垂らして魚が餌に食いつき、針がかかったのを確認して上げれば食料の確保は完了です。ここまでで質問はありますか?」
よほど釣りが楽しみなのかワクワクした様子でエイナが手を挙げてサラへと質問する。
「はい!餌はどうすれば?」
サラは初めて自分が釣りをしたときのことを思い出しフッと笑うと人差し指を立てながら先生がなにかを教えるようにエイナへと優しく話しかける。
「それは自分自身で魚が食いつきそうなものを考えてください。それも楽しみの一つです。」
それを聞いたシエラはうんうんと満足そうに頷き、やる気に満ちた表情でエイナを連れてキャンブ場の地面を勢いよく蹴りながら走っていく。
「なるほどそういうこと、わかったわ。行くわよ!エイナ!」
「はっはい!わかりました!行きましょうシエラさん!」
それにエイナが慌ててくっついて走り出す。
サラはそんな二人の様子を眺めながら楽しそうで良かったとか、今日は天気が良くて気持ちがいいなとかそんな事を考えつつ、ハリーのもとへと歩いていく。
「ハリー、お疲れ様でした。」
「うん、ありがとう。それにしてもあの子たち楽しそうだね。」
草の上にグデーッと寝転がって話しかけてきたリサの方へ首を向け答える。
「そうですね。シエラは身分的にそんなに多くの友達はいませんでしたから、私としてもエイナが友達になってくれて嬉しいです。」
少し遠くで何やらしゃがんだり移動したりしながら釣りエサになりそうなものを探している二人を見つつ、サラはどこか安心したように言う。
「……ああそうか、シエラってあれでも一国の姫様だもんね。全然そうは見えないけど。」
ハリーは少しの間のあと、ハッと何かに気がついたようにサラの言葉に返す。
それもそのはずでハリーから見てシエラに王族としての気品はこれっぽっちもなかったのだ。
「まあ王族って感じは全然しないですね。でもそれがあの子の良さでもありますから。」
そんなハリーの素直な物言いにフフッと嬉しそうな笑うとメイド服のスカートの後ろを手で押さえながら草の上に腰を下ろす。
「なるほど、道理であの子といると君は楽しそうなわけだ。」
ハリーはそんなサラの笑顔を見て納得したようにウンウンと頷く。
「まあそうですね。今、私はとっても楽しいです。」
「なら良かった。」
視線の先ではちょうどなにかを見つけたのかそれを針につけた後、シエラとエイナが勢いよく餌のついた針を川に投げ入れているところだった。
それから二人は気持ち良い風を浴びながらシエラとエイナが魚を釣って戻ってくるまでのしばらくの間、おしゃべりを続けた。
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