第5話 星空の下で

ハリーとサラが楽しくおしゃべりをしている頃。

餌を各々考え、とりあえずそのへんにいたミミズを餌に二人が釣りを開始してしばらく時間が経ったとき。

「うおっと!掛かったわね!私が釣ってあげるから覚悟しなさい!」

シエラは本日初となる当たりに興奮していた。

「がっ頑張ってください。シエラさん。」

エイナが隣から応援してくるのでシエラはそれに笑顔で返す。

「任せなさい!」

そう言ってシエラは本日初となる獲物もとい夜ごはん一号を釣り上げた。

「よしっやったわエイナ!ほら見てこんなに立派なのが釣れたわよ!」

「すごいですシエラさん!ここって意外と大きいのが釣れるんですね!よーし私もシエラさんに負けないように頑張ります!」

二人は河原の上で魚を見ながらわいわいと楽しそうにはしゃいでいる。

それからしばらくしてエイナの竿に当たりがあった。

「きっ来ましたよ!えっととりあえず魚を針に掛けるからえいっ!おっと引きますね。魚さん負けませんよ!よいしょ!」

エイナはなんとも可愛らしい掛け声を河原とシエラの耳に届けながら魚を釣り上げた。

夜ごはん二号を見せ、エイナは嬉しそうにシエラへ笑いかける。

「やりましたシエラさん!私も夜ごはん捕獲完了です!」

「やったわねエイナ。ほらハイタッチ、ハイタッチ!」

それからエイナは魚から急いで針を外し、サラが唯一貸してくれた水の入ったバケツに入れる。

もちろんシエラの釣った魚も入っている。

「わかりました!ハイタッチ!」

河原で二人の少女が喜びを分かち合いパチッと心地よい音の勝利のハイタッチをする。

そんなこんなでそれぞれの夜ごはんを確保したシエラとエイナは話し込んでいるサラとハリーの元へ魚の入ったバケツを二人で仲良く運びながら戻って来る。

「サラ〜取ってきたわよ〜!次はどうすればいいの?」

シエラに次の指示を求められたサラは立ち上がり石が円状に並べられているおそらくキャンプ場側が用意した焚き火スペースだろう、そこを指差して言う。

「では次は火を起こしてもらいましょうか。」

そこにハリーが口を挟む。

「エイナ、そういうことなら火起こしの仕方は君が教えてあければいいんじゃないか?」

「はっはい師匠!でもサラさんはそれでいいんですか?今は一応、サラさんに一連の流れを説明してもらっているので…」

「ふふっ大丈夫ですよ。エイナさんが教えてくれるなら私もそっちのほうが良いと思います。」

「そうですか?わかりました。ではシエラさん火起こしは私がお教えしますね!」

「ええっよろしくお願いするわ!まずは何をすればいいの?」

「えっとまずはですね。燃えそうな草と木の板、木の棒の3つを用意します。あと燃やすのに使う薪ですね。」

「了解したわ。じゃあ私は燃えそうな草を探してくるわ。」

「はい、じゃあそれはシエラさんに任せます。私は木の板と棒と薪をキャンプ場使用者が使っていい薪があるのでその中から取ってきます。」

「役割分担できたわね、それなら早速行動開始よ!」

「はい!」

そして素早く動き始める二人は今日あったにもかかわらず、息ピッタリだった。

それぞれの目的のために走り出す二人の顔には笑顔が浮かび、とても楽しそうだった。

それを満足そうな優しい笑顔で見ているメイドと巨大なハリネズミ。


しばらくしてシエラは枯れ草を、エイナは薪の束を抱えて帰ってくる。

「どう?エイナ、この枯れ草よく燃えそうじゃない?」

「いいですねシエラさん、こっちも薪の準備できましたよ!」

「エイナ、重くなかった?」

自分と比べて重そうな薪を持っているエイナを見てシエラは少し心配そうに声をかける。

「シエラさん大丈夫ですよ。いつも師匠の手伝いで荷物運びしてますから。」

エイナは抱えていた薪を地面に降ろすと二の腕でそんなにできていないというかほぼない力こぶ?をペチペチと叩きながら心配いりません!とシエラにニコッと笑いかける。

「ふふっならよかったわ!」

シエラはそんなエイナの反応が可愛らしくてクスクスと笑う。

「もうシエラさん、笑わないでくださいよ。」

「ごめんなさい、でもちょっと可愛かったわよエイナ。」

「もう!ほんとに!シエラさんからかわないでくださいよ!」

二人はサラとハリーから言わせれば仲良くイチャイチャしながら焚き火の準備を協力して進めていく。

「頑張って!エイナ!」

「はいっ!いきますよ!ふーふー」

シエラが作り出した火種を枯れ草に包んだものに応援されながら一生懸命に息を吹くエイナ。

すると枯れ草に火が燃え移る。

「やったわ、エイナ!」

「はいっ!やりました!」

シエラが喜びながら薪をセットした場所を指し示し、それにエイナが応じる。

そして下に置かれた枯れ草の火が燃え移った薪は燃え始め、暗くなり始めたキャンプ場の地面を赤い光で照らし始めた。

「おおっやったわエイナ!私たちだけで火起こしできたわよ!」

「やりました!」

二人はまたお互いの成功を喜んでハイタッチをする。

「ふふっ火起こしできましたね。さて次は魚の下処理なのですが、サービスして私がやっておきました。」

サラは片手に下処理を終えた魚を持って二人に見えるようにしつつこちらへと歩いてくる。

「さすがね!サラ!」

「ありがとうございますサラさん!」

なぜか自分のように得意げなシエラとペコっと軽く頭を下げながらお礼を言うエイナ。

「いえいえ、どういたしまして。まあ二人とも頑張っていたのでこれくらいはいいかなと。さあさっそく焼いてみましょう。」

それに対して焚き火に目をやりつつ、優しくこたえるサラ。

「ようやくここまできたわ!あと一息ね!」

「よし!おいしく焼くぞ!」

気合の入った二人はサラから串に刺さっている自分たちの釣った魚を一本ずつ受け取り、焚き火のすぐそばの地面に突き刺す。

「焼けるまで座って待ちましょうか。」

「そうね。」

「あの!見てください!星がきれいですよ。」

エイナが立ったまま、空を指さす、いつの間にかまわりはすっかり夜になっておりそこには満天の星空があった。

「ああっきれいね…」

「そうですね…」

「きれいだね〜!」

二人は息をのんだように空に釘付けになっていると、いつの間にか来ていたのかハリーも入ってくる。サラは何も言わなかったが見惚れているようだった。

しばらくそんな静かな時間が過ぎていく。

「二人とも、魚が焼けましたよ。」

そんな静かな時間の終了の合図はサラからだった。

「ああっ夢中になって忘れてた!ありがとうサラ!」

「ああっ私も!ごめんなさい!」

「大丈夫ですよ、星空に見惚れてしまうのはよくわかりますから。私も最初の頃は時間を忘れて眺めていましたから。それより熱いうちにどうぞ。」

「それもそうね!いただくわ!」

「私もいただきます!」

二人はさっそく焼き魚をサラから受け取ると

「「せーの!」」

お互いにタイミングを合わせてかぶりつく。

「ハフハフッ熱いけど、おいしい!」

「ハフハフッフーッおいしいですね!」

そんな二人を見て、満足そうに笑みを浮かべるサラ。

「懐かしいねサラ、君も最初の冒険の夜は同じ反応してたよ。」

「そうですね…懐かしいです。そして良いものです。」

「ふふっそうだね〜。」

二人は、シエラとエイナの反応を見ながら自分たちの過去を思い出す。

それはサラたちの冒険の記憶だった。

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退屈姫様と専属メイド えんぺら @Ennpera

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