第2話高原の花畑

「う〜んっ気持ちいい!」

シエラは腰まで伸びた銀髪と黒のプリーツスカートが風になびくのもお構いなしに両腕を思いっきり上げて伸びをする。

「シエラせめてスカートを手で押えてください。可愛らしい白のパンツが丸見えです。」

「えっ見えてた?」

指摘されたシエラはスッと手でなびくスカートを押さえる。

「私が言うのもなんですが、もう少し恥じらいを持っては?」

同じくメイド服のスカートを手で押さえたままサラはシエラに意見する。

「えーだって別に減るものじゃないし、そもそも今ここに私達以外いないし良くない?」

シエラは後ろを振り返りつつ返事をしてくる。

「はぁ…まあそうですけど。」

その返答にサラがため息をついているとシエラが前方を指差して言う。

「それより見てよ!花がきれいよサラ!」

その指差した先にはきれいな白い花が群生していた。

この景色は晴天の下、白い花々が風にゆらゆらと揺れていてとても美しい。

「そうですね。きれいなだと思います。」

「えーなんか反応薄いわね。」

「そうでもないですよ、きれいだなと見惚れているだけです。」

「そう、なら良かったわ。」

二人はその景色を眺めながら並んで言葉を交わす。

遡ること1日前、王都を出発したシエラとサラは小さな宿場街にたどり着いていた。

「サラ!旅って楽しいわね。王都にいるときには見れなかった景色がたくさん見られてとっても満足だわ!」

宿の部屋に入るなり、シエラはサラに向けて楽しそうな笑顔を浮かべたまま話しかけてくる。

「そういえばシエラは王都から出る機会ってそんなになかったですもんね。」

「そうなのよ。だからずっと出てみたかったの!」

そう言いながらシエラは部屋の窓に駆け寄り、夜の宿場街の景色を眺め始める。

「それは良かったです。ところでシエラは花って好きですか?」

「ええ好きよ、突然どうしたの?」

サラの質問にシエラはくるりと振り向いて少し首をかしげつつ返答する。

「いえ、次に行くところを少し考えてまして、この近くにカロス高原へ行く列車が出てまして今時期だときれいな花畑をみることができるんですよ。花が好きなら次の目的地はそことかどうですか?」

シエラは少し考えるように左手を自身の顎に当てながら次の目的地への提案をしてくる。

「いいわね。次はそこに行きましょ!」

その提案を聞いたシエラはキラキラと目を輝かせて提案を受け入れる。手を上下にブンブンと振りながらのおまけ付きで。

「わかりました、次の目的地は高原の花畑にしましょう。」

そんなシエラの反応が可笑しかったのかサラは苦笑を浮かべつつ次の目的地を決定する。

「ふふんっどんな花なのかしら。楽しみ!」

とまあこんなやり取りがあったので二人は列車に揺られつつここカロス高原の花畑にやってきたというわけだ。

「あっ帰ってきた。ねぇサラここいいところね。花はきれいだし人もそんなにいないし、なんというか時間がゆっくり過ぎていくような感じがするわ。」

しばらくどこかへ行っていたサラが帰ってきたところにシエラが話しかける。

するとシエラが頷きつつ、自分のでに持っている紙製のコップを差し出してくる。

「シエラこれどうぞ。」

「これって?」

「あの白い花を使って作られた花茶ですね。そこの売店で買えるんですよ。」

紙製のコップに入ったお茶を受け取るとサラの言葉に関心したようにへぇーとつぶやきその後一口飲む。

「へぇーあの花ってお茶になるのね、いただきます!」

それから二人は花畑が見渡せる位置に置かれたベンチに座ってお茶を飲みながらのんびりとした時間を過ごす。その間二人の間に会話はあまりなかったがその沈黙は心地の良いものだった。

「さてそろそろ帰りますか。」

「そうね、そろそろ帰りましょうか。」

そんなやり取りをした後、二人は立ち上がり美しい花畑に別れを告げると来るときに利用した駅に向けて並んで歩き出す。


「ふうっ疲れたけど今日も楽しかった〜!」

宿に帰ってきた瞬間シエラがベッドに頭からダイブする。

「シエラ、疲れたのはわかりますがそのままベッドに寝転ぶのはやめてください。」

後から部屋に入室してきたサラがベッドに頭から突っ込んでいるシエラを見て呆れたように注意する。

「それもそうね、汗もかいたしお風呂入ってくるわ。」

そう言ってヘッドに手をついてガバッと体を起こすと自身の着替えを持って浴室へと歩いていく。

水の流れる音とシエラの鼻歌が聞こえてくる。

それを聞きながらサラは部屋に備え付けられたテーブルに地図を広げそれを眺める。

「さて次の目的地を何個か選んでおきましょうか。」

しばらくしてシエラが上がってきたのでサラも入浴を済ませる。

それから二人は一階の酒場であらかじめ買っておいた料理をテーブルに並べて夕食にする。

「いただきます!」

「いただきます。シエラ食べながらでもいいので聞いてください。」

「なに?」

「次の目的地についてですが、どこか行きたいところありますか?」

「うーんとね。行きたいところっていうかきれいな星を見たいかも。」

「なるほど星ですか…少し待ってください」

そう言うとサラは部屋着のポケットから小さな手帳を取り出しパラパラとめくりあるページで手を止める。

「それならキャンプ場とかどうですか?たしかここのキャンプ場はきれいな星が見えたはずです。」

サラは手帳から顔を上げた状態でシエラに提案する。

「いいわね。星が見えるキャンプ場!私キャンプしたことないからやってみたいわ!」

シエラは座っていた椅子から立ち上がり前のめりになる。

「わかりました。では次の目的地は星の見えるキャンプ場にしましょう。それはそれとして食事中に立ち上がらないでください。一応あなたは一国の姫なのですから。」

サラは手帳を閉じてしまうと前のめりになっているシエラに注意する。

「なによ!この旅の間はサラあなたとは対等な立場なはずでしょ!なら今の私は姫じゃなくて世界を旅する旅人よ。」

シエラは自身の胸に手を当てて立ち上がったままの姿勢で反論を開始する。

「あといいじゃない城ではこんなこと絶対にできないんだから。」

そして最後の一言は少しすねたような感じだった。

「ふふっそれもそうですね。失礼しました。これからは気をつけますね。」

サラはその反応に笑みをこぼしながら自身の発言を反省する。

「ならいいわ!」

シエラはサラの態度に満足そうに笑顔を作ると席に座り直す。

それから二人は食事を済ませ、寝る前の準備をすると明日に備えてベッドに入った。

ちなみにシエラとサラは旅費の関係で一人部屋を二人で使っているため一つのベッドを二人で使うこととなった。

シエラいわく別に部屋を分ける必要とかないじゃないとのことらしい。

そうしてこの日の旅が終わりを迎えた。

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