第4話 再び邂逅

目を瞑る、寝るってよりは瞑想に近い。少し心を落ち着かせる為にし始めた。

瞑想をしたくらいで気持ちが落ち着くほど、能天気な頭をしていない。

だけど、多少は効果が合ったのか、さっきの学園の謎に対する興味。探り出そうとする考えは減った。

何事もなかったように別のことをなんか考えよう。

とはいえ、他のことが思い付きもしない。

さっきまで椎名くんと喋ってたし、彼との出会いを思い出して見るか?

うーん。なんかそれはそれで嫌だな。――結局その後何も思い付かずぼっと過ごし。午後からの授業だけは出た。

委員長タイプはポカーンと口を開き、驚いていた。

今、思い出しただけでちょっと滑稽だなと思う。

授業を受けてもやっぱりつまらない、この程度ならば別にやらなくてもテストでいい点が取れる。

家で勉強していた方がまだ捗る。

次の日。

いつも通り、学校に来て、教室に向かおうとした時、思わぬ人物と遭遇する。


「あ」


腑抜けた声が出てしまう、相手は少し苦笑をしていた。


「どうも」


会釈をしてくる、それに対し、俺は立ち止まっていた。

頭の中では行動をしようと考えてはいるけど、体が思った以上に動かない。

硬直――フリーズ状態になっている、数秒遅れて会釈をした。

体感では何十分も動けてない感じがする、実際は数秒。

目の前にいる少女はあの日に出会ったずぶ濡れの子、少し雰囲気が違い、一瞬誰か分からなかった。

雨のずぶ濡れ程度でそこまで変わるのか? 


「こないだはありがとうございました」


深々とお辞儀をしてきた、感謝をされることをした覚えがない、と言おうと思ったが、喉に引っ掛かった。

少女は顔を上げ、こちらをじっと見ってきた。

顔に掛かった髪を耳に掛ける。その仕草を見てドキッとした。

少女は首を傾げている、不思議そうな表情を浮かべている、胸が高鳴る。

鎮まれ、


「大丈夫ですか?」

「……ああ大丈夫気にしないでくれ」


嘘だ、全く大丈夫ではない、少女から目が離せない。

ずぶ濡れの時も感じていたが可憐な少女――可憐っていうより美少女じゃね?

どこが生気ないだよ!? 全然あるじゃないか! 何を一人でボケてツッコミをしているんだろう?


「あの時傘を貸してくれてありがとうございました」


そこで俺は彼女にお礼を言われる理由が分かった。そう云えば傘を貸したなという認識。


「あのこれも何かの縁なんでよかったら名前を教えてくれませんか?」

黒衣詩音くろいしおん。君は?」

桜井凛音さくらいりおんって言います」


少女――桜井凛音、それが彼女の名前。

桜井さんは柔らかい笑顔を浮かべていた。少しばかり彼女を観察することにした。

背丈は俺とそこまで変わりはない。女子の平均身長くらいだろう。

肩にまで伸びた黒髪には光沢の艶が合った。

美少女と云われるくらいに顔立ちは整っていた、もしタイプ分けをするとすれば童顔。

非常にモテそうだなと感じた。


「よろしくお願いします、詩音さん」

「ええ、よろしく桜井さん」


義務状の挨拶、もう少し……話の輪を広めようとした。


「やぁそこで何をしているんだいお二人さん」


声を掛けられた、声の主は誰か、すぐに分かった。俺の大嫌いな生徒会の会計!!

勢い良く、声のする方に体を向けると、顔に包帯をぐるぐる巻き状態のミイラ男がいた。


「ふっ、く、あははは、何その状態!」

「うるさいですよ? 静かにしましょうか」

「ここは図書室じゃないからいいだろ?」


包帯で顔が隠れている為、表情は見えない。多分。苦虫を潰したような顔をしているんだろうな。

それにしても面白すぎる。椎名くんにボコされた時点で笑いものなのに。

姿を使っても笑わせてくれるとは思わなかった。声量を抑えながらも笑いが溢れる。


「それで何か用だった?」

「そこにいる桜井さんに少しね」

「あーあそう。またね桜井さん」


桜井さんに別れの挨拶をし立ち去る。ここで粘っても良かったが、ぐちぐち云われる未来が見える。それでもただで帰るのは癪だから邪魔者と云う視線を飛ばす。

一応教室にでも向かいますか、いつも通り屋上でサボる予定だけど。

教室に入ると相変わらずやかましい、そこには勿論、口うるさい委員長タイプもいる。

安定の無視をすればいい、誰かいないかなと見渡すと谷崎を発見。

気怠そうなな表情に無駄に長い髪。


「よっ谷崎。今日もゲームをしているのか?」

「黒衣か、そうだよ。ゲームは楽しいからね。それより大丈夫だったの?」


普通、曖昧な表現をされたら分からないと思う、特にこいつはよく主語がない。

だから理解するのに苦労する時がある。今回は一つしかない、生徒会とのトラブル。


「まぁなんとか逃げれているかな」

「喧嘩を売るのは自由だけど、あんま巻き込まないでね」

「椎名くんたちによく喧嘩を売る常習犯が何を抜かす」


ハハっと乾いた笑いが教室に響く、クラスにいる全員が一斉にこっちを見た。

何事もなかったかのように話したり勉強をしている。

当の本人はひたすらゲームに夢中。話掛けても反応悪そうだなー、仕方ないから自分の席へと戻ろうした、その時。


「そう云えばさ黒衣は噂を知っている?」


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恋愛想〜二つの音が交差する〜 リア @sigure22

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