ジェントルおじさん

第8話はじめを見る者 終わりを見る者

「ふわあ」

ホワスは小さくあくびをして起き上がる。時計の針は、きっかり七時しちじを指していた。

「七時か。すっごく微妙びみょうな時間なんだけど、、、、。」

早いとも、遅いともつかぬ、あと三十分さんじっぷんくらいでシーニーに起こされそうな時間帯じかんたいだ。どうせなら起こされるまで寝てたかったが、まあ、起きてしまった分には仕方がない。強引にポジティブ思考で行くことにした。

「はあ」

 ため息をついてくしゃくしゃのかみを指でとかす。なお、ため息をついている時点でポジティブ思考にはなっていないのだが、まあ良しとしよう。

寝起きでボヤっとしながらかんがえていた、その時、

「ホワス!おーきーろ!」

「はあ!?」

急な怒鳴り声にガチめにビクッた。

「なんだよ急に」

「はあ?ホワス。昨日の記憶ある?」

「ある」

(前半だけだけど)

情報量が多すぎて覚えるのを放棄したのは、よく覚えている。

「じゃあ、なんで早いのかくらいわかるでしょ?」

「わからん」

即答する。実際わからない。

「はあ?」

「チョウラもわかんないよお」

「ええ?」

仲間がいた。そしてシーニーはけだるそうにこっちを見てきた。めんどくせえと顔に書いてある。

「で、なんでだ?」

「ヒルアス」

「あ」

「わあお」

なんで今まで忘れていたんだろうか。一番大事なものを忘れていた。ついでに、めちゃくちゃ大きい声が出た。

「まあ、そういうことで、」

シーニーがコホンと咳払いをする。

「早く準備するぞ!十分してこなかったら置いてくからな!」

「ええー」

「なら、早くしろ。」

「こんなに急ぐことないだろ」

「早く行ってて損はないだろ」

「まあそうだけど。」

「じゃあ、あとで」

そう言うと、バタンと扉を閉じて行ってしまった。

                ◇◆◇◆◇◆◇

「行くぞ」

「、、、、、、、、、、、、、、、。」

「どうした?」

「、、、、、、、、、、、、、、、。」

「?なんかあった?」

「は、、、、、。」

「?」

「早すぎんだよ!!!!」

「チョウラもわかるよお。シーニー、せっかちだよねえ」

「なんでこんなに早く行くんだよ!あのなあ、20年だぞ?20年!さすがに早え!」

「チョウラもそう思うよお。」

せっかちなところもシーニーのいい所だと思うが、どうしてもホワスに共感してしまう。だがまあとりあえず、ヒルアスでなんかするっていうのにチョウラはワクワクしている。色んなところに行けるなら、すごく楽しそうだ。

(見たことない蝶々が見てみたいなあ)

と、一人で考えていた。

                ◇◆◇◆◇◆◇

研究所203

入り口には、こんな文字が浮かび上がっていた。間違いなく、この部屋はあいつの部屋だ。

(あいつがいるといいが)

阿鳴あなり振蘭ふらんは、そう考えながら部屋研究室に入った。

「最近はよく来ますね。阿鳴さん」

一瞬、あいつがいるのかと思ったがそうではないらしい。居るのはいつものように男だ。

「なんだ、お前か。てっきり_。」

「すみません。まだ出て行ったままで。次来るのは、まだ先になりそうです。」

「そうか。」

「それで、何か用でもありました?」

「それなんだがな。」

フイっとノートパソコン画面を出す。

「これは、、、、」

「ああ、七千年前の書物のデータだ」

「七千年前と言えば、あの」

「そうだ。ある宝石により世界をと言われるのことについての記述を見つけたんだ」

「四人組、ですか。」

「?どうした?」

「いえ、なあんでもありません。それと、まだ研究は続けますか?」

「続けるつもりだ」

「、、、なら、種族についての記述があるか、確かめておいてほしいです。場合によっては、、、」

「わかった。そのことについても捜索をしよう」

「ありがとうございます。」

「では、私はこれで。」

「はい」

そう言って、振蘭は部屋を出た。

「ふう」

しばらく廊下を歩く。

「まさかあいつがあんなものを作るとはな。」

いつも忘れてしまう。自分がいつもあの部屋で話しているのは、だということを。


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