第6話答え
カロスの去っていったドアを見ながら、ホワスは呆然としてしまった。時が止まったかのように、立ちすくんでいた。いや、立ってはいない。棒になっていた。
(なんだったんだ今の)
嵐のごとくやってきて、なんかすごいことをサラッと言い、また嵐のように去って行った。
なお、シーニーはホワスとは違う意味で呆然としているようだった。今にも「はあ?」と言いそうな表情をしている。
「ねえねえ二人ともお。なんでそんなに黙ってるのお?ていうか、今の人だれなのお?」
「あー、ごめん。私黙ってた?」
「うん。みんなずうーっと黙ってたよお」
チョウラが持ち前のでっかい声で空気をぶち壊した。ではなく、ぶち壊してくれた。
空気の読めないチョウラは、こういうところでたまに役に立つ。
もちろん少ないが。
「どんくらい黙ってた?」
「えっとねえ、十五秒くらい。」
「いや、それずっとって言わないって」
「そおかなあ」
「どっちでもいいだろ」
(正直、カロスの話のほうが気になるし)
とりあえず、今のホワスの脳裏には”?”しかない。
「とにかくやばいぞ。返答は明日だったのに、今日の夕方になった。早く決めないと」
シーニーが状況を説明してくれる。
「この調子じゃ何にも始まらないし、もうバッサリ多数決で決めよ。」
「そうだねえ」
「じゃあまず、クソ狐女の話に乗るやつ、手上げて」
「ん」
ホワスは、ゆっくり手を挙げる。
「うちも行くよお」
チョウラも、手を挙げた。
「マジか。ホワスも乗る感じなの?」
「うん」
「どういう心境の変化で?」
(いや、変化はしてない)
「とにかく俺は、乗る」
「ふうん」
「ねえねえ。行こうよおシーニー」
チョウラがシーニーの腕をぶんぶん振っている。なお、チョウラは馬鹿力なので本気でぶんぶんやられるとくそ痛い。
「まあ、二人が言うなら。多数決って言ったの私だし。」
「じゃあきーまりっ!」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「入れ」
その声とともに、ホワスたちは部屋に入る。
「さあ、答えを教えてもらおうか」
部屋に入って三十秒、いきなり直球で来た。期限を早めたことについての謝罪はないのだろうか。
「私達は____。」
「その話に乗る、だろう。」
(こいつ)
ホワスは、278年生きてきた中で一番むかつく人物を
「さあ、私は明日の朝から数え始める。20年。これがお前たちにある時間だ。いつここを出るかは、お前らに任せよう。」
そう言うと、狐女はごとりと三つの
「この中には、必要最低限のものが入っている。足りないものは自分で準備しろ。」
開かれた鞄の中には、厚手の布と一日もあれば無くなってしまいそうな少量の飲食料が入っていた。
「あと、これを渡しておこう」
狐女の手に、六つのブローチがあった。そのすべてに人の絵が描かれていた。
「これは、、、」
「お前ら、今この世界は黒の世界と戦争が起きていることは、知っているな。」
ホワスとシーニーは顔を引きつらせていた。残酷な話だ。
「では、百年前から爆弾、例えば鉄砲や、魚雷、地雷。まあとにかく爆発する武器の使用は禁止されていることはしっているか?」
シーニーはこくりとうなずいている。
「その状態で、人は魂の能力を使って戦ってきた。だが、それは敵国も同じこと。ここ、白の世界と黒の世界の戦争はずっと平行線だ。だから、お前たちには魂石をヒルアスへもっていってほしい。あれには魂の力を弱める効果がある。丁度いいだろ」
ここは予想道理だった。今、ヒルアスだけ戦況が酷い。というか、ヒルアスでしか戦乱は起きていない。
「それで、そのブローチは?」
「それには、人の絵が描いてあるだろう。」
「その絵は、黒の世界への出入り口を閉じることを専門職にしている者たちだ。子供であるがお前らには十分であろう」
黒の世界への出入り口、確かに異世界同士なのだから、いくら生態系が似ているといえど海を渡ればいるという訳ではない。必ず白の
「このブローチの絵を自分の額の絵と合わせれば、こいつらが出てくる。、、、、そうだなぁ、シーニーには、
そう言い、シーニーの前にブローチを投げつけた。
「ホワスには、
今度は、ホワスにブローチを投げつけてきた。
「チョウラには、マイ・フリルとユイ・フリル。こんなもんか」
言い終わってチョウラに最後のブローチを投げつけた。
(扱いひどいな。)
投げて大丈夫なのだろうか。
「これで最後だ。重要だから、よく聞いておけ。」
「はい」
「この依頼には条件が三つある。一つ目は、途中であっても私の出す任務は必ず実行してもらう。」
「二つ目。ヒルアスに着くまでは、自分の命を最優先に考えろ。危険なことがあれば、迷わず逃げて行け。」
「最後に三つ目。この任務が終わったら、お前らは全員元の場所に返す。わかったか?」
(元の場所に返す、ねえ)
元の場所と言えば、狐女に集められる前に居た場所ということだろうか。少し意外な条件だ。
「じゃあ、そういうことで。よろしく」
バタンと扉を閉じて行ってしまった。
ホワスたちは、カロスの時と同じように呆然としてしまっていた。それだけかよ、という思いを抱きながら。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます