第17話 対談
駆け足でトイレまで向かっていると、前方から一人の女子生徒が話しかけてきた。ここで会うのが少し予想外だった翔雲は少しだけ驚いた。
「柊君、こんにちは」
「阿澄?なんでこの棟にいるんだ?2年生の教室は東棟だろ」
「なんでって、決まってるじゃないの。あなたに用があってきたのよ」
「そうか。で、用件は?手短に頼むぞ」
翔雲がそう言うと阿澄は少し雰囲気を変え、完全に白銀の阿澄モードに入った。
「爆弾魔ムッシュ、鉄壁のカール。この二人の名前はもちろん知ってるわよね」
「あぁ、もちろん」
爆弾魔ムッシュと鉄壁のカール。この二人は今賞金稼ぎの間で話題になっている暗殺者だ。賞金首36億のスティーブ・ジェイソンの首を取ったこの二人は現在、裏ギルド公認の最強の暗殺者として名を馳せている。
「その二人が、来年ミシェルが来日してくる情報を掴んだらしくて、今日本にいるらしいの」
「……なるほどな。で、それをどうするつもりだ?まさかとは思うが…」
「えぇ、そのまさかよ」
翔雲は頭を悩ませた。本当にそれが正しい判断なのか、そして彼らはそれを快く承諾してくれるのか。
「仲間になってもらう、ってことか?」
「えぇ。正直言って、私とあなたの二人だけじゃ絶対にミシェルを攻略出来ないの思うの」
「一応後一人、仲間を引き入れるつもりだったが、まぁそいつがいても勝てるかどうかは怪しいな」
「そのもう一人が誰かは知らないけれど、あの最強と名高い二人を仲間にして協力してもらったら、確実にミシェルの首を取れる可能性が高くなると思うの」
「だが俺らは中の上程度の暗殺者だぞ?アイツらからしたら嫌な足枷が付くもんじゃないか?」
「少なくとも私は白銀の阿澄として、名が通っているから問題ないと思うわ」
「なっ…!?て、てめぇ俺が気にしてることを平然と言いやがって…」
「実力はほぼ同じなのに、なぜここまで私の方が有名なのかしら、不思議ねぇ…」
阿澄は挑発的な態度を取り翔雲を誘い込む。確かにカールとムッシュの実力は本物であり、仲間にすれば確実にミシェル攻略の鍵となるだろう。だが翔雲は不安だった。
暗殺者、賞金稼ぎというのは今この二人が口論をしているように、プライドが高い者が多い。そして心がまだまだ幼いため、「お前は俺より下。イコール雑魚だギャハハ」というマウント精神が豊富なのだ。
素直に仲間になってくれるか、それとも反感を買い、阿澄の時と同じように殺し合う羽目になるのか。
もしも後者が起こってしまった場合、翔雲たちは殺されるだろう。その可能性を、翔雲は危惧していた。
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