オペレーションT発動。
夕日ゆうや
俺たちの戦場
鳥のさえずり。
葉擦れの音。
春風に舞い上がる桜吹雪。
俺はゆっくりと瞼を開ける。
今日は月曜日。
仕事がある日だ。
うっ。
オペレーションTを発動する――。
俺はベッドから起き上がると、真っ直ぐに
だが、そこは戦場と化していた……。
次男のふうが前線基地を設置。頑丈なバリケードの向こう、用を足していた。
その手前、第二次防衛ラインには長男のらいが股間を押さえながら待機している。
「早く食べなさい」
妻のてんこが朝食を用意している。
朝の時間は短い。
あと一時間で出勤しなくてはいけない。
トイレはひとまず後回し。
俺は慌てて朝食を摂りにいく。
鶏肉の料理を頂くと、すぐにトイレに向かう。
長女のあられがトイレを占拠、暫定政権の樹立を宣言。
女性陣には〝戦姫〟と呼ばれる強い味方がいる。
俺は家でのトイレを諦め、会社のビルを利用することを考える。
スーツに身を通し、鞄の中身を確認する。
そして――てんこの作ってくれた愛妻弁当を受け取る。
「いってきます」
その言葉すら惜しく感じる。
会社のビルにあるトイレに駆け込む。
そこは血みどろの戦場だった。
漏れに苦しむ戦士。
残尿に嘆き悲しむ狙撃兵。
痛みでうめく衛兵。
俺は初めて知った。
こんなにもトイレが人の心を惑わす――と。
ちー。
~完~
オペレーションT発動。 夕日ゆうや @PT03wing
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