第22話 商品⑤ 遊園地のチケット・Ⅰ


 「きみは遊園地が好きかな?」

 そう聞かれて、ぼくは答えるのをためらった。


 もちろん好きである。

 ジェットコースターやフライングカーペットに乗った時の、あの風を切るスリルと爽快感は最高にわくわくする。


 絶叫系や回転系だけじゃなく、観覧車から眺める風景や、トロッコに乗ってレールの上を移動し、現れる猛獣やエイリアンを撃つシューティング・ゲームも大好きだ。

 もうメリーゴーランドには乗りたいとは思わないけど、あのキラキラとした華やかな雰囲気は、見ているだけで気分が高揚する。


 でも、小学校六年生の男子にとって、「遊園地は好きです」とはなかなか言い辛い。

 自分がまだ子供であることは分かっているけど、それでも子供っぽいと思われるのが嫌なのだ。


 「なるほどね」

 ぼくが答える前におじさんがうなずいた。


 「大好きだけど、それを認めて、子供っぽいと思われるのが嫌なんだね。

 かといって、興味ないよと答えて、無理に背伸びをしているなとも思われるのも癪だといったあたりかな」

 ギョッとした。ぼくの心を読んだかと思うほどの大正解である。


 「でもね、正直に答えればいいんだよ。

 遊園地は何歳になっても楽しいものなんだよ。

 だって、ほら、大人だってデートで遊園地に行くのは、きみだって知っているだろ」

 そう言われればそうである。


 「結局は誰と行くかが大事なのさ」

 おじさんが続けた。


 「嫌いな人と行けば、どんな楽しい所だってつまらなくなるし、好きな人や仲良しの友達と行けば、つまらないところだって、それなりに楽しめるものだろ」


 ぼくは目を丸くした。

 この得体の知れないおじさんが、ここまでまともなことを言うとは思っていなかったのだ。

 どこかで中身が丸ごと入れ替わったのかと思うほどの変わりっぷりである。


 「そうですよね。

 ぼくもそう思います」

 素直に答えると、おじさんは嬉しそうな顔になった。

 「ここは、つまらない店だけど、今、きみがいてくれて、私はとても楽しいんだよ」

 本気とも冗談ともつかぬ言葉に、ぼくはどう反応していいのか分からなかった。


 「じゃあ、遊園地にまつわる『都市伝説』を話そうか」

 おじさんは嬉しそうに言った。


 断るタイミングを失い、ぼくは五つ目の『都市伝説』を聞くことになってしまった。

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