第13話 商品③ 殺人鬼からの手紙・Ⅱ


 きみは友達の家に泊りにいったことはあるかな? 


 そうか、まだないんだね。

 小学生だものね。

 焦らなくても大きくなったら、何度でもそういう機会があるよ。


 試験前に親友の家に泊りに行って、遅くまで一緒に勉強をしたりね。

 え? そんなことをしたら、遊びに夢中になって、勉強がはかどらないだろうって? 


 もちろん、無駄話をしたりもするだろうけど、お互いに問題を出し合ったり、分からないことを教え合ったりして、意外と勉強がはかどったりするんだよ。

 途中で友達のお母さんが夜食を持ってきてくれたりして、楽しいものさ。


 ああ、聞いてほしいのは、そんな楽しい話じゃないんだ。

 そう、怖い話なんだよ。

 これはね、マンションで独り暮らしをしている女性の部屋へ、友達が泊まりに来たときに起こった恐ろしい話なのさ。


 ジュースを飲み、お菓子をつまみ、夜遅くまで雑談をしていた二人は、交互にお風呂に入るとパジャマに着替え、そろそろ寝ようということになったんだ。

 部屋の主はベッドに、その友達は床に布団を敷いてね。


 ところが、あとは布団に入るだけというときになって、友達が「明日の朝食を買いに、コンビニへ行こう」と言い出したんだ。

 もう、お風呂も入って、パジャマに着替えた後だよ。


 マンションの持主の女性は、「明日でいいじゃない」と反対したけど、友達は、どうしても「今、行こう。すぐに戻るから」と言ってゆずらないんだ。


 結局、根負けした女性は、また私服に着替えると、玄関のドアを開け、友達と二人で外に出たんだよ。


 そうしたら、急に友達が女性の手をつかんで、「早く、早く」と駆けだしたんだ。

もう、エレベーターが来るのも待たず、転げるように階段を駆け下りてね。


 女性はびっくりして、マンションの建物を出たところで「一体、何をするのよ!」って怒り、友達の手を振り払ったんだよ。

 手を振り払われた友達は、真っ青な顔でこう言ったんだ。


 「ベッドの下に、斧を持った男が隠れていたのよ!」


 ……恐ろしい話と思わないかい?

 二人とも気づかずに眠っていれば、とんでもないことになっていただろうし、もし、友達が気づいた瞬間に悲鳴をあげたりしていても、バレたと分かった男が斧を手に飛び出してきて……、やっぱり、恐ろしいことになっていただろうね。


 友達の機転が二人の命を救ったんだよ。


 でもね、私の知っている話は、この続きがあるんだ。

 友達の方はトモ子といって、ごく普通の会社に勤める女性だよ。


 マンションの持主の女性は、小学校の先生なんだ。

 名前は朝美にしようか。

 そう、きみの担任の先生の名前だよ。


 うん。だから、さっきの名前を聞いたんだ。

 本当は名前なんて何でもいいんだけど、きみが想像しやすいかと思ってね。


 二人は学生時代からの友達だったんだよ……。

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