第8話 商品② コックリさんの十円玉・Ⅱ


 『コックリさん』は有名だよね。

 もしかしたらきみも、一回や二回はやったことがあるんじゃないのかな?


 細かい方法は地方によって違うらしいけど、基本は同じだね。

 紙に『鳥居の記号』、『はい』と『いいえ』、1から10までのアラビア数字、そして『あ』から『ん』までの平仮名を書くんだ。


 最初に十円玉を鳥居のマークの上に置き、参加する三人が、その十円玉の上に人差し指を乗せる。

 そして「コックリさん、コックリさん、いらっしゃいましたら、『はい』の方向へと、お進みください」と唱え続けるんだよ。


 すると、コックリさんが現れて十円玉を操り、色んな質問に答えてくれるというわけだ。


 コックリさんは、誰かの秘密や、未来のことまで答えてくれるんだよ。

 もっとも当たるかどうかは分からないけどね。


 ……ねえ、そもそもコックリさんとは、何なんだろうね。

 漢字では狐狗狸さんと書くらしいよ。

 狗とはイヌのことだね。狐、狗、狸を音読みにしてコクリ、つまりコックリだ。


 だから動物霊という人もいれば、いや、そうじゃなく参加している人の守護霊という人もいる。

 そのあたりを漂っている雑霊が、呼び寄せられてくるんだという人もいるね。


 コックリさんではなく、エンジェルさんと唱えれば天使が降りてくるとか、十円玉ではなく、百円玉、五百円玉を使えば、高級な霊が降りてくるという話も聞いたこともあるけど、そういうものではないだろうね。


 結局、何が降りてくるのかって?


 ……ふふふ。

 何も降りてこないというのが本当のところだと思うよ。

 十円玉が動いたときは、三人の中の誰かがソッと動かしているのさ。


 でもね、たまに妙なものが降りてくることもあるんだ。

 とても奇妙なものがね。


 どんな話か聞きたいのかい?


 ん? 聞きたくないって? 

 はははは、ウソを言ってもダメだよ。聞きたいって顔をしているじゃないか。

 顔を見れば分かるんだよ。

 仕方がない。話してあげよう。


 きみが嫌だといっても話すからね。

 きみが嫌だといっても話すからね。

 大事なことだから二回いったよ。


 さあ聞きなさい。

 きみと同じ六年生の男の子の話だよ。

 

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