茅葺蒼のHDD
内容・階層
・Windows(C:)
・ローカルディスク(D:)
・動画編集用(E:)
・資料(時系列)
・協会(録音と録画)
・さっちゃんの寝顔と色々
・収録映像(時系列)
・投稿と配信済み
・未配信未投稿
・0
――――
0
黒映像数秒
三郎が映ってる顔が見切れている。
「カメラはここか、なんか難しいの」
顔が映る。
「よしよし、んで、撮影は…もうしとるんか。いつから…ああ、なるほど、これを押すと開始するんやな。よしよ」
カメラを持ったまま移動する。木造りの天井、細い廊下、離れと思われる。ぐるぐると回りながら部屋を撮影する。止めが少なく見辛い。
「難しいわな、で、これを編集するんは…えーと、録画を停止…分からんな。もうえええか」
スマホが天井を映している。端に三郎が写っている。机の前で何かをイジっている。
「えーと、く、クラウド…これか、おお、動画が上がっとる。これで、これを…お、お、出来た。で…」
「さっちゃん、何しとんの?」
蒼が三郎の背中におぶさる。画面を覗き込む。
「へーーーー、すごーー、もしかして映像編集しとんの?」
「…ちょっとは蒼の手伝いしたいからな。忙しそうやし」
「さっちゃんのそういう所好きよ。ってか全部好きやけどね」
頭を擦り付けてそのままするりと膝上に座る蒼。
「…ってか結構ええ感じに出来てるよ。今度、サムネとか作ってみる?」
「さ、サムネ?」
「動画を選ぶ時にはじめに出るのよ、デカいフォントとかなんか面白そうな雰囲気とかを付けるんよ。そしたらみんなが見てくれる。行っちゃえば動画の顔やね」
「あー、いつも蒼が鬼みたいな顔で唸りながら作ってる奴か」
「…それについては後で話があるけどまあその認識で会っとるよ」
少し冷や汗を出している三郎。
「そんな重要なん、俺がしてええんか。今やってるの遊びみたいなもんやぞ?」
「…だってさっちゃんが村の事以外でそんなに夢中になってるの初めて見たんやもん。本当はもっと年相応に色んな事に興味もってもええと思うんよ」
ははと笑う三郎。蒼は少しだけ悲しい顔をしている。
「それは望まんわ。俺はこの村さえあればええ。ここを豊かに出来ればそれでええ。それで十分生きてて楽しんよ。ただ、ダンジョン配信面白いかもしれんわ」
「始めは乗り気やなかったのにね」
「…良く分からんからな。分からん事は怖いんよ。でもな分かってくると気持ちが乗ってくるわ。コメントの人間にも愛着出てきたわ。顔も知らんのになんか面白いわ」
「…さっちゃんはどっか遠い場所に行きたくなる時ある?」
蒼は身体をくるりと回す。二人は向かい合い見つめ合う。
「…どやろな、昔はこの村の先に何があるんやろと思った事が結構あったんよ。でもなビビって超えれんかった」
少し気だるげに笑う三郎。
「そして今でも村からは出れんと思う。立場もある。だからな。でも、もし次超えれる時があったら俺は、超えてみたいねん。やってみたい、間違ってもええ、もしかしたら後悔するかもしれん。でも俺はその時の事を忘れんと思う。多分それが俺にとってのこのネットやと思うんよ」
口をつける蒼。涙が落ちる。
「…愛しいわ、一生あんたを守る。ずっとずっとここにいよ。私はあんたに見たこと無い物を見せ続ける。うぶなさまとみんなで幸せになろな」
「…ああ、そやな、で、サムネの話なんやけど。結構色んな動画見ててん。そしたらな」
テンションが戻る三郎。蒼も画面を見る。吹き出す。
「…さっちゃんがこれ考えたん???似合わんわー、こんなん思いつくタイプ違うやろ!!」
「あんな、動画の顔言うたやろ。こういうのは少し分かりやすい方が伝わりやすいんよ。でな、バズっとるダンジョン配信動画のタイトルに似せる。これが大事なんよな」
「…戦略まで練っとる。やりすぎよ、流石さっちゃん」
「…お前の人旦那やけんな」
スマホを持ち上げる三郎、編集画面には少しばかしわざとらしい太文字のデカいフォントでサムネイルが制作されている。
『タイトル・村にダンジョンが出来たので【うぶなさま】と一緒に配信したらなんかバズってる』
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