執筆者・国立迷宮研究所所員兼ダンジョン協会専任研究者【金満優】

1. 背景

ダンジョン内での大規模な湧き現象などで長期間の滞在を余儀なくされた冒険者が地上への帰還後、身体の変化・精神的異常を語る事例が多い事が分かりました。

2. 目的

そのような背景から国立迷宮研究所は事例の統計的な調査及び大規模な人体実験を用いてそれらの事例の抜本的な対策の発見を目指しました。

3. 方法

本調査では対象者にダンジョン協会が管理している超小規模ダンジョン・埼玉185番ダンジョンにブラックリスト冒険者D（26歳）を配置。その後、身体的な変化及び精神的変化を記録した。その際、装備一式を渡し、定期的な映像記録を行わせた。以降記録映像。

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映像、男が映っている

「あ、えーと、一ヶ月目ですけど身体的変化ありませーん。精神も異常なし。マジ元気です。ってか、これ終わったらマジであの罪全部チャラになるの？うわ、嬉しい。またヤリまくれるわ」

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映像、男が映っている

「あ、えーと、二ヶ月目ですけど特に問題ないでーす。まあ多少身体が臭くなりましたけどまあ、水浴び出来る場所もあるので問題ないでーす。近くにゴブリンがいたのでなぶり殺して遊びましたー。後、スライムってこう色々使えるよな。マジでスッキリしたわ」

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映像、男が映っている。目が少し虚ろ。

「あ、えーと、えーと、三ヶ月？目でーす。近頃、ゴブリン共の声がなんとなく分かるようになってきました。あいつらにも家族いるらしいわ。ウケる。自然発生するんじゃねんだ。ってか、なんか身体がおかしくなってきたわ。もういいだろ。さっさと出せよ」

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映像、男が映っている。唾液を垂らしている。

「あ、えーと、えーと、えーと、よ、な、七ヶ月です。頭が回らなくなってきた。なんか、スライムの声も聞こえる。あいつらも性欲あるんだな。面白、な、なんか居心地良くなってきた。実家みたい、かーちゃん」

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映像、ゴブリンが映っている。唾液を垂らしている。

「あー、あー、あー、一年目？でーす。なんか、なんか、気持ち良いでーす。もう、頭がおかしくなりそうでーす。わかんないでーす。わかんないでーす。でーーーす」

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以降の記録はなし

4. 結果

身体的変化:

三ヶ月を目処に肉体的な変化が開始される。ダンジョン内のモンスター分布はゴブリン・スライムのみであり、それらの情報を元に変化が行われていた。実験後、回収した所、上半身はゴブリン・下半身はスライムになっていた。また、渡していた装備一式は全てD級マジックアイテムに変化。性質はベースとする装備に近いものであった。ただ、該当するマジックアイテムがない場合、ランダムに変化した様子が見受けられる。

精神的変化:

三ヶ月を目処に精神性がモンスターに近くなる。本来、解読が難しいモンスター言語も理解出来る様になる。解剖した所、脳構造が著しい変化をしており、モンスターと人間の中間に近い事が分かった。また発見時、同系統モンスターと交配も行われており子供も発見された。その際に父親としての行動が多数見受けられた。子個体を解剖した所、人間に近い脳構造をしている事が分かった。

5. 考察

一階層かつ超小規模な埼玉185番ダンジョンを用いた今実験はダンジョン内にある情報がダンジョン外生物を汚染すると考えられます。ダンジョンランク外であるこのダンジョンでこの汚染率であることを考慮すればS級ならこの10分の1で同影響があると考えられます。またダンジョン汚染はダンジョン内情報が極めて重要な因子となり、海外モンスターをベースとした現大多数ダンジョン以外のダンジョンが発見された場合、極めて重要な資料になると推測されます。

6. 結論

現在、これらのダンジョン汚染に関する対策はされておらず、定期的な地上への帰還のみが解決策とされています。また、ダンジョン協会理事・金満太による提案である【日本の伝承・信仰をベースとしたダンジョンがあった場合を想定した現実証実験を軸とした思考実験、及びそれらの伝承・信仰が宗教的なメリットのみを取捨選択した合理的かつ独善的な代物だった場合の再思考実験、更にその伝承・信仰とは関係ない超常的的存在が配置された時に起きるダンジョンの変化に関する再々思考実験】に関しては別紙にて記載しております。