ホームビデオ【俺とミカと三郎(文字が潰れている)】


 固定カメラ、豪華な病室、ベットに寝る女、その横で赤子を抱く男。

・男、年若く知的な雰囲気がある好青年。身なりから金に不自由は無いように見える

・女、年若く何処か憂いを持つ女性。病院着をつけている


「ミカ、ありがとう。本当にありがとう。男の子を生んでくれて本当にありがとう。これで俺は神旦那になれる」


 感謝する男。


「いいんですよ。私もあなたのお家の事は知ってますから男の子が生まれると分かって私も飛び跳ねちゃった」


 笑う女。


「ああ、後はうぶなさまに認められたら俺は村長だ。そしたら何もかもが手に入る。俺を舐めた事務所も父さんも全員見返せる。ミカ、本当にありがとう」


 涙する男。


「ほんと、あなたは、そればっかね。でもいいわ。最後まで見届けるわ」


 同じく涙する女。



 固定映像・傾いた遺影、先程の女性。カメラが誤作動で起動した様。


「なんで、なんで死んだ」

「病死です」

「そんなこと分かってます!!なんでなんで!!」

「病名を言いましょうか」

「いらん!!!もうあんたに聞いても何も変わらん」

「葬儀の方は」

「焼いてくれ、出来る限り早く焼いてくれ」

「近くのダンジョンで死霊使いのイレギュラーモンスターが出ましてね。それの死傷者処理で今使ってるので難しいかと」

「いや、金はあるとにかく頼む」

「何をそんなに急いでるんです?」

「うぶなさまが来る、あの人は飢えておられる。今なら何でも食う」

「はあ?」

「俺の身体にはあの村の血が流れてる。それが呼び血になって現れる。村から出た人間はそういう役目なんや」

「あの、何をさっきから」

「きた」


 以降映像終了



 手持ち映像・夏の空の下に女性。持っているのは声から男性。

・女、何処か水商売の雰囲気を出している。ブランド品を身に着けサングラスを付けている。

・男、前文の男性。時折、手が震えている。


「金崎さん、それは本当か?」


 焦る口調の男


「ええ、あなたの話を信じるわ。三郎さんだっけ?その子の人嫁に私の子を使いましょう。旦那の連れ子だったから処分に困ってたの」


 タバコを吸う女。後ろにピントが合う。初心名村にようこその文字。


「助かった、その子大丈夫か?」


 震える男。


「ええ、私に似ず本当に頭が回る子。父親似かしらね。回りすぎて気持ち悪いぐらい。直ぐに祖父母の家から引き取ってくる」


 タバコを吸い終えて地面に落とす女。カメラがそっちを向く。足元の影がゆらめいている。


「三郎のこと気にいるか?」


 カメラが戻る。女の背後、遠くの方に影がある。


「さあ?でも、三郎さんはこの村で可愛がられてるんでしょ?別に好きだ惚れたなんてどうでも良いでしょ。あの子は賢いから権力持ってる子に媚びうって股開くぐらい出来るわよ」


 女、二本目を取り出す。


「そんな言い方…」


 言い淀む男。


「何?あなたはうちの子を買いたいって言ったんでしょ?子供も村に渡して奥さんと楽しくやってたんでしょ?今更父親面する方がおかしいわよ」


 睨む女、その背後に白無垢の女性が立っている。


「…」


 黙る男。


「いいわ、私としてもお金さえ手に入れば良い。でなれるの?その神旦那に」


 馬鹿にした態度の女。白無垢の女の手が女の首に回る。


「それに関しては考えがある。必ずなる、それで金は渡せる」


 男の震えが止まる。


「そう、お金さえ貰えたらそれでいいわ。じゃあ、今日からあなたが旦那って事で」


 女が振り返って村に向かっていく。白無垢の女は男に近づく。


「ああ、よろしく」


 男はカメラを地面に向ける。以降は映像はそのままで音声だけ変化。


「どいつもこいつも舐めやがって、この田舎モンが」

「俺は演技派でいけるんだ」

「ダンジョン探索だって止められてたがやればAぐらい簡単に取れる」

「どいつもこいつも馬鹿ばっかだ」

「金崎も利用したら他の女みたいにまた捨てればいい」

「ミカが死んだせいでこんな目に、全くこの時までは生きてろよ」

「まあ、うぶなさまだって結局女だ。外見だろ?適当に声かければそれでいける」


「ああああああ…あ?」(うぶなさまと呼ばれる存在の声)




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