アクロダの町
第3話 傭兵ギルド
砂漠を横断したグレイハルトとバニラは辺境の町アクロダに着いた。グレイハルトはこの町のギルドで仕事受けているので問題無いが、バニラは他から来た者なので門前で衛兵に調べられていた。
「ここに名前を書いて、町に入るのに2銀貨必要です」
衛兵に銀貨が必要と言われ、バニラはグレイハルトを見た。
「はぁーーー。ほらよ」
グレイハルトがポケットから銀貨を取り出し衛兵に渡した。
「すまんの・・・」
「はぁーーー」
これっぽちも済まなさの感じないバニラの顔を見てグレイハルトは溜息をつくのであった。
アクロダの町は砂漠との境界に木を植え砂が町に入るのを防いでいた。町の砂漠側は高い木塀で、森側は石塀で囲まれている。町には傭兵ギルドと商業ギルドの支店があり、特産品は迷宮から取れる薬草、魔物素材や魔石で多くの傭兵が迷宮に潜っている。この町ではグレイハルトのように戦争に行く傭兵は少ない。戦争に行って命を落とすよりも迷宮に行く方が長い目で見れば実入りが良いのであった。
グレイハルトとバニラは傭兵ギルドへと向かう。グレイハルトは任務完了の報告と報酬の受領。バニラは身分証になるギルドカードの作成であった。グレイハルトは疑問に思った事をバニラに質問した。
「なんで門の魔道具でお前の正体がバレないんだ?お前は人じゃないんだろ」
「ん?妾は騙すのは得意だ。城の近くにある町に入るのも問題無かったぞ」
「あっそぉ。聞くだけ無駄だった・・・」
そんなグレイハルトと見てバニラはケラケラと笑うのであった。
傭兵ギルドは町の中心近くにある石造りの大きな建物であった。2人は扉を開け中に入って行った。ギルドの中は入って左手に依頼の掲示板、右手は椅子とテーブルがある休憩スペース、奥に依頼などの受付カウンター、買取は建物の裏手に搬入口がある。
2人は受付カウンターに向かい、グレイハルトの報告から始まった。グレイハルトが終わるとバニラの登録になるのだが、闖入者が現われた。
「グレイ。どこ行ってた?なんだ?この嬢ちゃんは?てめぇロリコンか?」
話しているのはグレイハルトをライバルだと思い込んでいるロベルトという傭兵で魔法使いの男とパーティーを組んでいつも迷宮に潜っている。グレイハルトはチラッと見ただけで無視を決め込んだ。
「なんだ?ロリコン。無視すんのかよ?」
手続きは終わったがギルドカードを発行するのに少し時間が掛かるという事でバニラが後を振り向いた。
「妾たちに何か用か?相手してやるぞ」
「何だと?俺を誰だと思ってやがる!」
「知らん」
「表出ろ!ギッタギタにしてやる!」
バニラの言葉にロベルトは激怒し、訓練場への扉を豪快に開け出て行った。バニラとグレイハルトは見合わせ、少し遅れてついて行く。
「お前なぁ。あんな奴、相手にすんじゃねえよ。それと殺すなよ。手加減な」
バニラは口の端を少し吊り上げ、笑みを作った。
ギルドの訓練場と言っても弓の的と剣稽古の木人が数個あるだけの広場であった。ロベルトは訓練用の剣を持ち広場の中央に立っていた。バニラが近づいて行く。
「得物は無しか?魔法使いか?」
「妾は剣よりも魔法が得意じゃ」
「ふん!」
ロベルトが仲間の魔法使いに目配せすると前に出てきた。
「では。始め!」
始めの合図で剣を掲げたロベルトが走ってくる。バニラは右手を出しロベルトが走ってくる足元に沼を作った。ロベルトは沼に腰まで嵌った。バニラは両手を上にあげ巨大は氷塊を作り上げていた。それを見た観客は魔力渦に皆絶句し後ずさった。ロベルトも氷塊に気づいた。
「ま、ま、待て。俺が悪かった。この通りだ」
「まだ決闘は終わっとらんじゃろ」
ロベルトの懇願にバニラが言った。慌てて魔法使いが終了の合図を出す。
「そ、そ、それまで」
バニラが手を振ると巨大な氷塊は消えていた。バニラがグレイハルトの所に戻っていく。
「お前なぁ。手加減しろよ」
「あの手の奴にはアレぐらいやらんとダメじゃ」
「・・・さいですか」
グレイハルトはバニラに呆れていた。
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