四話
列車から降りた彼女は改札口に向かう。
ホームでは、すれ違う誰もが彼女に対して敬意を示していた。
皆の目には以下のように彼女が見えている。
彼女はざくろ色の瞳の持ち主。
大きく豊かな目は、稔った稲穂が頭を垂れるように優しい形をしており、どこか憂いを帯びている。睫もうは長く、冬には雪達が地に降りたと勘違いをして降り重なり、彼女をきっと困らせる。美しい烏色に光る長髪は、瞳と同じ色が交ざる飴細工が飾られた簪一本で結い上げられている。肌は怖いくらいの白皙。雪解けを待つ素肌の下には、桃染色の棉が仄かに透けて見える。
そして、身に纏うは漆黒と卯の花色から成る上質な小袖。
漆黒が多くを占め、二つの色が肩山から裾まで一度螺旋を描くように認められており、上前には稲穂の形を淡くしたような模様が大きく描かれている。帯は控えめだが凝った刺繍が大小無数に施され、帯揚げと帯締めは彼女の瞳の色に合わせてある。帯の左方には純銀で造られた菊の花細工が飾られている。お太鼓は大きな蝶の形をしており、たれ先の裏には、雅な短刀が横刺しされている。袖は、初雪で作った羽衣のような掛け物がふわりと降り、雪化粧をしている。一枚芯の草履の踵は高く、花緒は瞳と同じざくろ色だ。それらの物は、彼女を好く引き立てている。
雪が深々と降るような様をする麗人。
人々の目には、以上のように見えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます