第14話 特待試験
「おぉ、帰ってきたかっ....ってどうしたんだ!?」
街へ戻ると門番がギョッとした顔で
出迎えてくれた。
「はぁ...ただい...はぁ....ま....」
「めっちゃ息切らして汗だくだけどどうした!?」
「いや、別に...はあ...はぁ...何でもないっ」
あれだな、あんまり魔力纏い使うと疲れるなうん。
「そ、そうか?なら良いんだが...水要るか?」
「はぁ...はぁ.....頼む...」
門番から水を貰い、宿へと戻る。
「今日のメニューはラザニアよ!」
ここの食堂マジで美味い。
あぁ、そういえば飯で思い出したけど、皮袋の
中は時間が進まないらしい。
街で買った昼食が暖かかたったからな。
食堂を出て、服を洗い、宿屋で貸して貰った
寝巻きに着替える。
「俺も寝巻きとか幾つか買った方が良いかなぁ?」
因みにティアナ様から貰った服は、剣と同じく
俺の成長に合わせて強くなるらしいから、
戦闘服を変える気は無い。
「おやすみ〜」
そんな事を考えながら俺は眠りにつく
◇
俺は今走っている。時刻は8:59分、
理由はお察しだ。
「おばさん!まだ食堂空いてるか!?」
「あぁ、今日も遅れて来ると思って作っといたよ」
「そ、そうか...すまない、ありがとう」
申し訳なさと恥ずかしさでいたたまれない。
因みに滅茶苦茶美味しかった。
◇
その後外で寝巻きや日用品を買い漁り、
ギルドへやって来た。
「すまない、特待試験を受けに来た」
「あっ、お待ちしておりました!」
サリナさん、一昨日からギルドに必ず居るけど
ちゃんと休んでいるのか不安になる。
「どうぞこちらへ!今丁度別の方が特待試験を
受けてる最中です!」
サリナさんが案内をしてくれてる。
...ん?別の方?試験は此処でやるのか?
サリナさんに付いていくと、段々と
野次が聞こえてきた。
「うぉー!ぶった斬れ!」
「やれ!そこだ!」
「こんなんでへばってんのかぁ!?」
着いた所は、結界で覆われた学校の校庭の様な所で、
隅に観覧席があり、そこから
冒険者たちが野次を飛ばしていた。
恐らく、戦闘の余波で観覧席、更に言うと街に被害を出さない為の結界だろう。
俺は観覧席の最後列の端を一瞥する。
冒険者たちの視線の先を見ると、大柄で
スキンヘッドの男と、これまた大柄で、赤い
リーゼントヘアの男が剣を打ち合っていた。
...あの赤髪の奴、強いな
スキンヘッドの男の剣を全て軽くいなしている。
それに見ただけで分かる。魔力も気配も
この世界に来てから感じた事が無い程だ。
赤髪の男がこちらを一瞥すると、スキンヘッドの
男を吹き飛ばす。
「そいつぁは不合格だ。おめぇがもう1人の
挑戦者か。とっととかかって来い。
真剣でも木剣でも良いぞ。」
なるほど...これが試験か。
「こちらも真剣で行くからそっちも真剣で来い」
俺がそう言うと、赤髪の男は目を丸くし、
野次を飛ばしていた冒険者たちは静まり返った。
「ガッハッハッハッ..んな事言ったのはおめぇが
初めてだっ!」
赤髪の男は豪快に笑い飛ばすと、こちらを睨む。
「随分と自信過剰じゃあねぇか。安心しろよ、
俺は木刀で充分だ。」
こちらに圧を飛ばしてきた。
それに俺は...
『威圧』
最大限の圧で応えた。
赤髪の男は僅かに目を見開く。
訓練の成果か、俺は流れる様な速さで
魔力を体に行き渡らせる。俺の魔力纏いは5分程度なら持続出来るようになっていた。
『自己強化、跳躍』
俺は極限まで引かれた矢の様に飛び掛る。
だが、赤髪の男は咄嗟に剣で防御の体制に入る。
(ちっ...この速度でも対応してくるか)
俺は剣に魔力を流す。
『スラッシュ!』
剣が淡く光る
「オラァっ!」
相手の剣に力任せの一撃を叩き込む。
「ぐっ!」
赤髪の男は6、7m程吹き飛ぶ。
「随分と自信過剰だな」
俺は精一杯の嘲笑を浮かべてそう言い放つ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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