異世界
第6話 初陣
(何だ?何が起きた?左腕が痛い、いきなり
世界が回って、痛い、痛い、浮遊感?痛い...)
「痛っ!!」
《スキル 痛覚耐性を獲得しました》
物凄い速さで反転を繰り返す視界。
痛みでまともに回らない思考。
聞こえて来る幻聴
浮遊感....浮遊感?
「....は?」
衝撃から数秒後、ほんの少しだけ痛みに慣れた脳が
叩き付けた現実は、俺が宙に投げ出された....正確に言うならば、殴り出されたという有り得ない物だった。
「何だ、一体何がっ!」
回転が収まり始めた俺の視界に映ったのは、
全長5m程ある土色?の四足歩行の恐竜のような
化け物だった。
「あいつに打ち上げられたのか!」
だが、今はそれよりも....
「っ....落ちる!」
俺の体は地面に引っ張られる。
(どうする...貰った能力は、【魔眼】
【剣と魔法の才能】【スキル入手】、魔法なんて
使った事無いし....そうだっ!俺は肉体のレベルや
身体能力も上がってるってディアナ様が...)
俺は目を閉じ、意識を研ぎ澄ませる。
「ふぅ.....」
息を吐き、青く光る目を開ける。
(情報は要らない、動体視力の向上だけを考えろ)
途端に、世界が減速する
(動体視力って次元の話じゃねーぞ!
体感だけど、落下速度が半減したしたぞ!?)
能力の優秀さに驚くが、直ぐに思考を切り替え、
迫り来る地を見据える。
下にあるのは木に覆われた森だ。
俺は、丁度真下に有る木の枝を注視する。
(まだだ....あと3秒...2...1....)
「今だッ!!」
俺は木の枝に両手を伸ばし、そのまま鉄棒の様に
木の枝を綺麗に2回転し、その勢いのまま、
恐竜(仮)に飛び掛る
《スキル 身体能力上昇を獲得しました》
また幻聴...耳でもやられたか!?
「鑑定っ!」
◇◇◇◇◇◇◇◇
地竜 D
状態 空腹 興奮
◇◇◇◇◇◇◇◇
(あいつは地竜って言うのか。C..剣にもあったが、
強さのランクみたいな物か?)
◇◇◇◇◇◇◇◇
ランク
主に人族が定めた魔物の脅威度。
又、それに基づいた地位や性能。
主に、冒険者のランクや武器の性能の良さを表す。
SからGまであり、それぞれの基準は
S 伝説
A 1つの国を壊滅させられる
B 複数の街を壊滅させられる
C 1つの街を壊滅させられる
D 努力で辿り着ける限界
E 戦いに慣れている
F 一般的な兵士
G武器を持った素人
H殆ど無害
となっている
◇◇◇◇◇◇◇◇
「D....才能無しの最強的なもんか?転生した
ばっかの俺にはかなりやばい相手かもな...」
俺はゴクリと唾を飲む。ただ、ここで逃げるのは、
違うなと思った。
きっと、そこに大した意味は無い。自分ですら、
何故逃げないのか分からないのだから。
「鑑定!」
今度は先程よりも、深く、力を込めて。
◇◇◇◇◇◇
碧 悠太 17
状態 左腕負傷〔骨折・出血〕
能力
【鑑定の魔眼】【剣魔の才能】【天賦の才】
【身体能力上昇】【痛覚耐性】
◇◇◇◇◇◇
新しいスキルが増えてる!?
恐らく【天賦の才】のお陰だろう。
【痛覚耐性】...痛みに慣れたのはこれの効果か。
「使える魔法はあるか...?」
◇◇◇◇◇◇
魔法
強化魔法 付与魔法
――強化魔法―――
人や物を強化する。
使用可能な魔法
・自己強化
自身の身体能力を上昇する
――付与魔法―――
物に特性を付与する
使用可能な魔法
・斬鉄
鉄の硬度を上げる
◇◇◇◇◇◇
「思ったよりも使えそうだな....っ!」
考えているうちに、地竜の目の前まで来ていた。
俺は咄嗟に剣を取り出し、両手で構える
『
全力で近くの木を蹴る。
瞬間、景色が一気に変わった。
(想像より疾い!このまま..)
「喰らえっ!」
右下から左上へ、剣を振り上げる。
シュッという風切り音とほぼ同時に、
ザシュッ!!
剣が何かを切る音と、血が舞う音がする。
剣は10cm程地竜の腹を開いて止まっていた。
地竜の右前脚が物凄い速度で左から迫り来る。
「っ!!」
俺は咄嗟に剣を引き抜き、後ろへ跳び、
地面に着地する。
《スキル 跳躍を手に入れました》
《スキル スラッシュを入手しました》
(よしっ!【天賦の才】のお陰で戦闘中も新しい
スキルを入手出来る)
そして、スキルとは違って明確な知らせがある訳
では無いが、頭の中に新しい魔法が浮かび上がる。
『強化っ!』
俺は強化した小石を地竜に投げる。
当然ダメージは入らないが、一瞬俺から意識が
途切れれば充分だ。
《スキル 投擲を入手しました》
『跳躍』
俺は地竜を飛び越え、後ろに回る。
力強く、剣を両手で構える
『
(切断...新しく手に入れた、
切れ味を上げる付与魔法...)
『スラッシュ!!』
そう唱えると、俺の剣が淡く、白く光った。
『跳躍ッ!』
地竜が振り向くと同時に、俺の剣が先程の傷と
全く同じ位置に当たる。
勿論、偶然では無い。
俺の青く光る眼が可能にする技だ。
「うおぉぉぉぉぉッ!!!」
俺は剣を振り抜く。先程よりも大きな剣の音、
ドバドバと流れ出る鮮血。
『鑑定』
◇◇◇◇◇◇
状態 死体
◇◇◇◇◇◇
完全に死亡した事を確認すると...
「いよっっしゃぁぁぁぁぁ!!」
俺は剣を高く掲げ、勝鬨を上げた。
叫び終わると同時に、俺は倒れるよう地面に
寝転がった。
「はぁ、はぁ....疲れたし左腕痛いけど、勝てた!」
この勝利で、俺はここ3年間忘れていた
感情を思い出した。
きっと、この感情の為だけに、
俺は逃げなかったんだ。
俺は、筆舌に尽くし難い達成感を味わいながら、
他の魔物が来ないうちに地竜の死体を解体し、
皮袋に入れていった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
数ある作品の中から、この小説を読んで頂き、ありがとうございます!
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