第5話 転移

「ん.....ここは.....」


頬を撫でる風、草木の匂い、小学生以来の

原っに寝そべる感触。


体を起こし、太陽を手で遮りながら、

足元を確認する。


「これは....草?確か魔法陣に包まれて....」


余りに強烈な光に目を瞑り、気づいたら

原っぱに寝そべっていた?


眼が太陽に慣れて来て、周囲を四顧すると...


「ここは...森の中か?これまたテンプレだな」


辺りは木に包まれた草原....俺の居る付近だけ

丁度木が生えておらず、

太陽の光を遮蔽する物が無かったようだ。


「さて、テンプレ通りだって云うなら、近くには大きめの町と魔物...恐らくゴブリンとかスライムが居るだろうな」


取り敢えず魔物に出くわす前に、

持ち物とディアナ様から下賜された

能力を確認することにした。


「服は....異世界っぽい感じになってるな。持ち物は皮袋が一つか」


恐らくディアナ様が気を使ってくれたのだろう。長袖の白いシャツに、膝辺りまで続く

長い抹茶色のマント...ローブ?が、首の辺りに紐で結ばれている



正にファンタジーって感じだ。


下は少しゆったりしている黒いズボンに、ブーツ?と言うのだろうか。スネの当たりまで続いており、これまた紐で結ばれている。


「おぉ...何か感動するな..」


(元の世界地球で着れば、間違いなく

コスプレと呼ばれる類の物だな)


「さて、皮袋の中は....!?」


触れた感触的に、恐らく中には何も無いと

思いながらもら皮袋の中に手を入れると、

底が無く、するすると手が入っていった。


魔法道具ってやつか?よく小説で読むが、

実際に見てみると感動のあまり手が震える。


「この中には何も入ってないのか....ん?」


何かないかと皮袋の中をまさぐっていると、

少し細長い棒状の物と、小さい円形の物に触れる。


棒状の物を取り出してみると、それは

80cm程の剣....形状的に恐らくロングソード西洋剣だろう。


鞘から抜いてみると、出てきた物は、

歪み1つない、綺麗な鋼色の刀身だった。


「おぉぉぉぉぉ....」


又もや感動によって全身を?ワナワナさせるが、

もう1つ何か入っていた事を思い出し、

皮袋から取り出す。


「金貨と銀貨!こっちの世界の硬貨か。

ディアナ様は、俺を興奮死させるつもり

なのだろうか」


皮袋から出てきたのは

金貨が3枚、銀貨が30枚だった。


「ふむ...日本円にすると幾ら位何だろうか?」


そう思いながら硬貨を睇視していると、

硬貨のすぐ横に、板...ファンタジー風に言うと、

メニュー画面の様な物が出てきた。


◇◇◇◇◇◇◇◇

金貨:100000G


銀貨:10000G

◇◇◇◇◇◇◇◇


「何だこれっ!?」


俺は驚いて思わず後ろに飛び退いてしまった。


その板と睨めっこをしていると、

1つの仮説を思い付いた。


「これが【魔眼】の効果か?」


そう、ディアナ様から貰った【魔眼】だ。


「この仮説が正しいなら...」


俺は近くに置いてあった剣を持ち上げ、見つめる。

今度は情報を得るという気持ちを込めながら。


◇◇◇◇◇◇◇◇

ロングソード D


状態: 新品


効果

所有者の成長に合わせて強くなる

◇◇◇◇◇◇◇◇


「ビンゴだ!」


思った通り、状態や名前が出てきた。

これは魔眼の効果で間違いないだろう。

恐らく、その時欲しいと思った情報が出てくるようだ。


「これはかなり有能だな......ん?」


中々優秀な魔眼の効果に喜んでいると

刀身に違和感を感じた。


刀身に小さな、が反射していた。

そして、位置的にその光の発生源は....


「俺....嫌、俺の眼か?」


刀身をよく見てみると、やはり俺....

正しくは俺の右目が青く光っていた。


「これが【魔眼】って事か?

めっちゃかっこいいな!」


能力を使う時に目の色が変わる....

あの女神、やはり分かってるな


何度目か分からない事を考えていると、

森の奥から気配を感じた。


はて?俺はいつから気配なんぞというものを

感じられる様になっていたのだろうか。


魔眼の影響か?


「...まぁ、なんにせよずっとここにいる訳にもいかないし、他の能力の確認がてら行ってみるか」


俺がこの世界で、何を成すのか、何を為せるのか、そんな物は知らないし、知りたいとも思わない。


俺はただ、元の世界地球で出来なかったことを、俺がやりたい事を全力で楽しむだけだ!


「さぁ、新しい世界への1歩を...」


俺は、右足を大きく前に出し、

地面を、旅立ちの1歩を踏みしめようとする。


だが、その足が地面に着くことは無かった。









世界が







嫌、回っているのは....








「ぐぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!」



俺だ!!







◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

数ある作品の中から、この小説を読んで頂き、ありがとうございます!

もし、面白いと感じて頂けたら、

ブックマークや、いいね、感想等して

頂けると、凄く励みになります!





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る