第3話 男装って案外ばれる

私はギルさんに連れられ奥の部屋に来ていた。

ギルさんの部屋はギルドマスターという事もあり整理されていて本がすごい数置かれている。

まぁ大半は埃が被った様子だが。


「すまんのぉ埃まみれで、女の子を呼ぶ部屋じゃないんじゃが他に部屋が無くてのぉ」


申し訳無さそうにギルさんは椅子の埃をはたく。


「おかまいな!?」


女性だとばれている!?


「じ、女性なんてどこにいるんだ?」


動揺しながら男らしい口調にして私はごまかそうとする。


「別に誤魔化さんでもいいわい。わしクラスになると身体の動かし方や姿勢なんかで色々分かるもんじゃ。」


流石ギルドマスターただものではないと再認識する。


「それにいいお尻しとるしの!」

「きゃっ!」


突然お尻を触ってくるギルさんに驚き悲鳴をあげてしまう。


「なにするんですか!?」

「そうやって身を守るのも証拠の一つじゃ。いや、男も守るか...」


そう言いながら笑う。

このセクハラジジイが本当はお尻を触りたかっただけじゃなかろうか?

と思いながらもその感情を押し殺す。


「まぁ、別に性別を偽ってることで責めたりせんよ。我々の業界では良くあることじゃ。女じゃと舐められて報酬減らされたり、暴力振るわれて無理やりパーティに加入させられるとかあるからのー ワシが許さんが。」

「今更好感度上げは無理ですよセクハラ爺さん。」

「ホホッ お主本当は毒舌じゃの。そういうのもいいのぉ。」


少し身体が震えた。


「通報して憲兵さんに来て貰いますよ?」

「冗談じゃ冗談。これ以上憲兵に目をつけられたくないしの。」

「どれだけセクハラしたんですか全く。」

「いやいや、わしのせいではない。無限に酒を飲むくせに金を持っとらん鬼や男嫌いで依頼人なぐるエルフとか色んなメンバーがいてのぉ...」


ギルさんは少し遠い目をしていた。

この人も苦労してるんだなぁと思って少し優しくしてあげようとも思ったがセクハラ爺さんだしなぁ。


「そんな話よりギルドの説明をせんとな!」


私の可愛そうなものを見る目を察したのかギルさんは急いで話題をそらす。


「まずお主ギルドについてどれぐらい知っとる?」

「全然知りません。」

「珍しいのー さては結構田舎出身じゃな?」

「まぁ、そうですね。」


その逆なのだがばらしたら腰が抜けそうなのでそういうことにしておく。


「ギルドというのは分かりやすくいうと仲介業者じゃ。」

「仲介業者?」

「そう昔は依頼を自分で受けて仕事をしておったんじゃが依頼主が金を払わないとか冒険者が依頼価格を吊り上げたりが横行しておっての。

そんな無法許せんということでギルドが出来たんじゃ。」

「なるほど」


確かに個人同士ならそういったトラブルが起きてしまうだろう。

だから組織に管理して貰うということか。


「まぁ、その代わり依頼料の二割はこっちが貰うがの。」

「二割ですか...」


大きなお金がいる私には二割は大きい。


「まぁ、これでも良心的な方じゃよ。闇ギルドとか大手じゃと半々だったりするからの、後一人で依頼をうけようなんて考えるなよ。それは今は違法でばれたら賞金がかかってしまうからの」


違法なのか。

仕方ない。

地位やお金の為にやろうとしているのに指名手配なんてされたら本末転倒だ。


「後ギルドの利点としてはパーティが組みやすいという所じゃの。」

「パーティ?」


私は貴族時代に嫌々ながら良く出ていた舞踏会を思い浮かべる。


「なんじゃパーティも知らんのか?パーティは難しい依頼なんかを四人で受けたりして負担を軽減できる素晴らしいシステムじゃ。その代わり報酬も皆で山分けじゃがの。」

「そんなものが...」


確かにいいシステムだがお金がほしい私からしたらあまりピンとこないシステムだ。


「ピンと来てないようじゃの。 まぁ、初心者はそう思うじゃろう。じゃが命があっての金じゃ死んだらなんにもならん。それにパーティで一生の友が出来たり家族が出来たりする面もある。ワシは初心者はパーティを組むことをおすすめしとる。」


確かにそうだ。

死んでしまったらお金を持ち帰ることも家を再興することも出来ない。


「それにお主はライノスとフローゼに気に入られとる。二人は強い いい勉強になるし相性も良さそうだしいいパーティになるじゃろ。」

「フローゼさんにも?」


彼女はすぐに逃げてしまって嫌われてそうと感じたが。


「まぁ、そう感じるのも無理はない。エルフは他者との交流を避けてきた種族じゃからどんな反応すればいいか分からんのじゃよ。」

「他者との交流を避けてきた種族?」

「おっと喋りすぎか。まぁ、わしが教えるのもなんじゃしそこらへんは彼女に聞くといい。」

「そうですか...」


聞けるかな。

そう考えているとギルさんが机を漁り始める。

掃除されていない場所を探しているからか埃がすごい勢いでたつ。


「どこじゃったかな...最近新しいメンバーが増えんから...あった!」


そう言いながらだしたのは魔方陣が書かれた萎びれた紙だった。


「これは誓いの紙と言って契約なんかするときに使うものじゃ。ギルドに入るならここにサインしてくれ。まぁ、一生を決める選択じゃし持って帰って検討して貰っても構わんよ。」


いや、そんな時間はないし答えは決まった。

そういい私は紙にインクで名前を書く。


「即決じゃの。書類で名前を知るのもいつぶりか。これからよろしくのネロ。」

「はい!すみません名乗ってなくて!」


私はまだ名乗って居なかったことを言われてはじめて気づく。

無礼だったかな?


「まぁ、気にするな今日から家族なんじゃから。」

「はい!」

「さて挨拶しにいくとするか。」



「あいつどうすると思う?」

「さすがにこんなギルド入らねぇだろ。」

「でもライノスの酒楽しそうに飲んでたぜ?」

「ただ酒だからだろ?おまえもただ酒なら泣いて喜んで飲むだろ?」

「ちげぇねぇ。」


皆私が入団するかの話題で持ちきりだ。

今まで話題の中心になることが無かったから少し恥ずかしい。


「皆落ち着け!お知らせがある!」


いつの間にか消えていたギルさんがカウンターに乗って叫ぶ。

その声を聞きざわついていた皆が黙る。


「今日から新しい家族が増えることになった!」


「「「おぉ!!」」」


皆喜んだ様子で拍手や指笛を鳴らすしたりする。


「静かにせんか!新人が緊張するじゃろ!」


そう言いながら新人歓迎と書いた服や背中に背負った楽器が鳴り響く。


「「「あんたがうるせぇよ!」」」


その場にいた皆が叫んだ。


「新人さんカモン!」


「無視すんな糞ジジイ!」

「めでたい酒はうまいなー」

「よかった...」


みんなの反応は人それぞれだが皆歓迎してくれていることはわかり少し嬉しくなる。

泣きそうになったがここで立ち止まっているわけにもいかないので私もバーカウンターに乗る。


「はじめまして新人のネロです!冒険者も新人ですが優しくお願いします!」


初めての挨拶にしては決まっただろう。


「バーカウンターにたつんじゃねぇよ二人とも!」


私とギルさんに鉄拳が降り注いだ。


「新人には優しくしてやれよロイ!」

「できるか!ここで俺は飯食ってんだ!」

「「「そりゃそうか!」」」


皆がその光景を見て笑う。

どうやら初っぱなミスったらしい

病むわ。


「ネロ飲めー おまえ飲みっぷりよくて好きだぞー。」


そう言ってライノスさんは紫の瓢箪をを渡してくる。


「ありがとうごさいます!いただきます!」

「ちょ!あんたそれ!!ダメよ!」

「え?なんれす...」


お酒を飲んだすぐフローゼさんが近寄ってきて私の意識はそこで無くなった。


拝啓 お母様初日は失敗ばかりですが楽しいギルドでこれからワクワクします。

できるだけ早く仕送りしますのでお母様も頑張ってください。


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