第2話薬草屋とパーティのファーストコンタクト

ギルド

私が家の再興する手段はそうするしかなかった。

大きな依頼を解決すれば一攫千金。

強大な敵を倒せば名誉が手に入る

これほどちょうどいい物は無い。

だがそんな良いことばかりではなく命の危険も伴う。

そんな仕事だ。


「安いよー 安いよー ドラ草が50G!エリ草100G!」

「新しい武器作りませんかー?」


「賑やかね。」


私はいろんな店から発せられる元気な声に少し気をされながらも楽しさを感じて薬草屋へと進んでいく。


「エリ草100Gか...買っておくべきかなでも今月厳しいからなぁ。」


嘘だいつも厳しい。

でも私にだって恥や外聞もある。

ここで何も買わないと出てしまうと貧乏と思われるのではとか


「おいおいタダで出ていくつもりかよ?」


とか因縁をつけられてしまうのではないかという恐怖が私を襲う。


そうおどおどしていた私の様子を見かねて店の商人がセールスを仕掛けてくる。


「お兄さんエリ草安いヨー これさえあれば何も困らないー 元気溌剌ネェー」


馴れ馴れしい態度でそんなセールスを仕掛けてくる。商人を不快に思ったが商人とはこういうものなのかもしれない。

私は貴族令嬢で世間知らずだからこれが普通だったらと思うと強くいえなかった。

そんな私に商人は色んな商品を進めてくる。


「この復活草があレバー 命大丈夫ヨー この毒消しもあったほうがイイヨー」

「コラーチョウファン!またインチキ商品を旅人に売り付けてんのね!」


おどおどした私をみて褐色の活発そうな女の子が間に入ってくれる。

どうやらカモられそうだったらしい。


「インチキとは侵害ネー 私効果あるものしか売らないヨー」

「へぇーならこのエリ草食べてみなさい!!」

「か、勘弁してヨー 私元気一杯ネー シニタクナイネー」

「死ぬようなもん売り付けんな!全く...」

「相変わらズ 地獄耳エルフネー」


エルフ...彼女の耳は兄から聞いたように尖っていた。


「ほら行くわよ!こんな店の品なんて買っちゃ駄目!私が良い店教えてあげるわ。」


そういいながら彼女は私の手を引いて連れていこうとする。


「これでご飯ナシネーごめんね 娘タチー」


商人が泣きそうな顔でこちらを見てくる。

私はその様子にかわいそうだなと感じた。


「このエリ草?どんな効果なんですか?」

「!? それは五割の確率で体力が多く回復する代物ね!普通のエリ草とは比べ物にナラナイヨー」

「それはすごい!一つください!」

「あ、ありがとウー あなたデビルエルフと違ってエンジェルねー」

「誰がデビルよ! 本当にいいの?そんな悪党から買い物しなくてもいいのよ?」

「どんな悪党でも家族に罪はありません。それになにも食べられない辛さ少し分かるんです。」


そういって私は商人にGを渡す。

商人は泣きながらエリ草?を渡してくる。

それは一つ多かった。


「これ一つ多いですよ!?」

「優しい人にはサービスねー これでご飯買えるねーありがとウー」


そういい商人は私達を追い出してしまう。


「あんたお人好しねぇ。」


「そうでしょうか?私は父の教えに従ったまでです。それに人助けは気持ちいいですしね。」


ノブレスオブリージュ

それが父から教えられた唯一の教え。

貴族としての寛大さを持て。


「嫌、悪人助けるのはどうなんだろ?それにあいつ確か独り身よ。」

「えぇー!! ふざけやがってあのくそ商人!一発ぶん殴ってやる!」


私は寛大さなんてかなぐり捨てて怒る。

家族のためだとかの嘘で騙すなんて許さない!

剣を抜くのも辞さない覚悟で私は急いで店に戻ろうとしたが店は無かった。


「あー あいつらの種族収納魔法ってのが使えてね。売り付けたら店片付けて雲隠れしちゃうのよ。そのドンマイ。」


エルフの彼女は私の肩に手をポンとおいて慰める。


「そんなー」


お父様あなたの教え間違いかもしれません。


 

 私はエルフの彼女に本当の薬草屋まで案内して貰った。

ここまで連れてきて貰った彼女に何かお礼をしようと思ったが彼女は


「お礼なんていいわよ!そんな大したことじゃないし!」


といい彼女は走り去ってしまった。

確かにここは先程の店とは違いちゃんとしている。

それは並べ方や値段がちゃんと明記されていることから良く分かる。

私一人でここに辿り着けたかどうか...


「あの子が彼氏を連れてくるとはねー珍しいねー 安くしとくから彼女によくしてやってくれ。」

「彼氏なんてそんな!」


私は女性だがあんな綺麗な人の彼氏扱いされて顔が赤くなってしまう。


「そんな謙遜しなさんな。彼女は人を信用しないんだ。そんな子が私の店を紹介するなんて脈アリだよ。」


そういいながらお婆ちゃんは笑う。

私はもっと顔が赤くなる。

次あったときはちゃんとお礼しよう...


 

 「あー馬鹿馬鹿ー 私なんであんな男なんかにあんなに優しくしちゃったんだろ...」


私はギルドの酒場でため息をつきながら管を巻いている。

誇り高きエルフの私があんな顔が綺麗な男なんかに優しくして...


「でもなんかほっとないのよねー」


これが恋って奴?

嫌々、エルフが人間に恋するなんてありえない。そんなのお話の中だけ。  

目を覚ませ私。

そういいながら私は顔を叩く。


「恋かい?」


私はマスターからの突然の一言にお酒を吹き出す。


「汚ねぇなぁ全く。」

「ごめんごめんロイが突拍子もないこと言うもんだから。」

「そうか?おまえのその顔恋する乙女そのものだったぜ?」


そう言いながらロイはテーブルを拭く。

やっぱりそうなのかな?

でも私が一目惚れなんて...

ないない!

私は○○○歳のエルフなのよ!

少女じゃあるまいし。


そんな風に顔を赤くしていると扉の前に大きな斧のシルエットが見える。

このシルエットと上機嫌な歌声は...


「今日も相変わらず百面相だなー フローゼ。」

「ゲッ!ライノス!」

「なんだそのゴミにあったような反応は。

貴様と俺の仲だろうに。」


そういいライノスは隣に座る。

ライノスは良い奴なのだが鬼と言う種族上嘘がつけない。

私が恋をしてるかもなんて知られた日には生きていけない。



「それがなフローゼの奴こい!」


私は店長の口を氷魔法で蓋をする。


「どうしたロイ!?フローゼなんで店長に氷を!?」


ライノスは突然倒れたロイを心配して席から立ち上がる。


「嫌、店長魔風病らしくてね?帰れって言ってるのに帰らないからここで休ませてやろうかと。」

「いやそれでも身体全体凍らせるか?」

「エルフはこうやるのよ?知らない?」

「そ、そうなのか...エルフ変わってんな...」


勿論嘘だ。同族ごめんなさい。


「それより店長コイがどうとかって。」

「あぁー それね!私鯉飼おうかなって話してたのよ!」

「鯉ってサムライ達が買ってるあれか?エルフに譲って貰えんのか?」

「店長もそれ言っててきびしいだろうなーって話よ。」

「そうか...」


誰があんな野蛮な奴らの魚を飼うか。


「それより次のクエスト!」

「おまえからクエストの事言ってくるなんて珍しいじゃねぇかよ!」

「たまにはね!いつも貴方からの提案ばっかだったし。」


私は話題をそらすために壁にはってあるクエストへと向かう。

魔ウサギの討伐や魔草の採取といったクエストが今日も貼られている。

代わり映えがしないラインナップだがそれが平和の証とも言える。

緊急クエストなんてないほうが楽で良い。

ライノスは強い相手とばかり戦いたがるから命がいくらあっても足りないし。

そっちが本音か。


「ねぇーライノスはどれがいい?」

「やべ!」


そう言いながら振り返ると彼女は酒場の酒をしこたま持っていた。


「そんなに買えるわけないでしょ!?」

「いやーおまえが凍らしてくれたおかげで取り放題なもんでー それに見てねぇ店員の方が悪いだろー ヒック!」


彼女はそう言いながら酒をがばがば飲んでいる。

ライノスに常識を求めた事が間違いだった。

そんな事より彼女を止めないと。


「コラ!止めろ!後で払うのいつも私なんだから!」

「止めろと言われて止められりゃ鬼なんかやってねぇよーヒック!」


彼女の顔が赤くなってどんどん出来上がっていく。

私は必死に彼女の酒瓶を奪おうとするが彼女の怪力と抱き抱えているので奪えない。

あぁ、また借金コースか...


「よ!飲酒王!!もっと飲め!」

「このギルドの酒全部飲みきっちまえ!」

「やかましいわ!お前らも止めるの手伝えー!!」


周りが笑いながら茶化してくる。

彼等は冗談のつもりだろうが彼女のいや、鬼の無限とも言える酒蔵いぶくろの貯蔵量が分かっていない。

本当に飲み切るぞ!


「コラ!止めんか!」

「いて!誰だ...げっマスター。」


ライノスを蹴飛ばして止めたのはこのギルドのマスターであるギルバートさんだった。

普通なら逆に足が折れているところだ。

それだけ固い鬼の身体を地面につかせるとは流石元Aランク冒険者。


「いてぇよマスター。乙女相手に後ろからなんて紳士失格だぜー」

「そんな酒瓶を抱えながら言われてもなぁ...それに卑猥な風に言うな!ただ蹴っただけじゃろ!」

「ただ蹴ったって乙女に暴力振るっておいてその言いぐさはひでぇよー」

「だからそんならっぱ飲みしながら言っても説得力ないわ!いつまで飲んどるんじゃ!」

「ちぇばれたかー。」


ギルバートさんに酒瓶を奪われて不機嫌そうな顔をする。


「もう十分飲んだでしょ 全く。」

「いやーまだまだ始まったばっかだった!もっと飲みてぇなぁ。」


彼女は酒の棚に向かっていこうとするのではたいて止める。


「普通の人間なら死んでる量よ!全く鬼の内蔵はどうなってんのよ。」

「だろー?それが私達の自慢だ。」

「怪力や堅さ自慢しなさいよ!全く。」


鬼という種族はとことん内蔵や酒を飲んだ量を自慢したがる一族だ。

怪力は全種族の中でもトップクラスだと言うのに自慢しようとしない。

私が言うのもなんだが変わった種族だ。


だからこそ組めているわけだが...

変な種族は変な種族同士と付き合う。

それが定めなのかもしれない。

神様出来ることならまともな仲間をパーティにいれて下さい。

無理か...

そんなことを考えていると扉の開く音がした。

この流れなら彼女が来てそんな良いことないって知らしめられるときか?

だが扉から入ってきたのは私が想像している人物とは全く違う人物だった。


「ギルドってここであっていますか?」


赤い短髪の剣を腰にかけて優雅な雰囲気を醸し出す剣士。

そう朝あった彼だった。


「えぇーーー!?」


私は突然の再会に驚く。


「うるさいぞー 飲み足りない神経が苛立つだろー。」

「だからあんたは飲みすぎよ!」


ライノスのボケたような発言に私は頭をはたいて怒る。

そんな事より彼がこのギルドに!?


「すまんのぉ賑やかなギルドでワシがギルドマスターのギルバートじゃ。ギルちゃんと呼んでくれ。」

「は、はい!ギルちゃんさん?」

「さんはいらんわい。天然じゃのー」


そう言いながらギルバートさんは笑う。


「なぁ新人さんー 歓迎の印に一緒に飲まないかー?」


いつの間にか彼に近づいていたライノスは酒瓶を持ってそう話しかける。


「いつの間に酒を!?」

「いいじゃねぇかマスター 歓迎の印何だしさぁー」

「そうだぜ飲ませてやろうぜー」


ギルドメンバー達はそう言ってライノスの飲みっぷりがみたいのか飲ませようとする。

やっぱり彼等は鬼の胃袋が分かってないようだ。


「お前らもたまには良いこというなー」


「「「たまにはは余計だよ!」」」


そういい皆は笑う。

この元気な感じがこのギルドの魅力ではあるが彼にこれを見せて入ってくれるのだろうか?

彼はもっとお上品な感じが良いような...


「いただきます!」


そういい彼は瓶を受け取りイッキ飲みする。

意外な光景に少し驚く。

彼は優雅に飲むような感じのイメージだったが。


「かぁー効きますねー」

「いい飲みっぷりじゃないか!気に入ったよ!私のパーティに入れてやるよ!いいだろフローゼ!?」


そういいライノスは私に向かって叫ぶ。

彼は叫んだ方をみる。

そこで彼は私の存在にはじめて気づく。


「あ、あなたは!優しいエルフさん!?」


私の恋?終わったかもこんな奴とつるんでるってばれた...


「勧誘もいいがまだ説明もまだじゃろうが。」


そういいギルバートさんはライノスは軽く小突く。

いつもなら本気の拳骨だったが初対面の人がいるからだろう。


「それもそうだなー まぁ、興味あったら話しかけてくれー」

「こらこらその酒瓶置いてけ。」

「ちぇ、ばれてたかー」


どさくさに紛れてお酒をくすねて持っていこうとするライノスに気づきギルバートさんは酒瓶を取り上げる。

これが私達のファーストコンタクトのお話。

我ながら奇想天外でしょ?

これからもっと奇想天外になるんだから覚悟はしておいてね。

覚悟はいい?私は出来てる。

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