EPISODEⅩⅣ δ星Wasat.

6人のデュナミスとなった彼らは現世に還る。

無差別に無慈悲に人間を喰らい続けるアイツを倒すために。

『Θέλω περισσότερο αίμα.』

奇妙な言語で呻く奴を見て、或空あるくQUASARクエイサーが勝手に起動して小さな星々を集める。


【δ星 Wasat】

人間の脳を好んで喰らうテラス。

ディオスクロイが差し向けたジェミニのひとつ。

脳を喰らった人間の見た目に擬態できる。


架恋かれん、ほんとにアレと戦うの?!」

「それ以外に生き残る術がないんだ。」

「そ、そんな…俺心の準備も何も…!!」

「いや、私は戦う…!これ以上、殺させないんだから…!!」

戸惑う架恋かれん紅輝こうき、そして黙ったままの結藍ゆらんを連れてアイツの元へ向かう。

「…δ星、ワサト!オレと戦え!!」

大きく叫んだ声に反応して、ワサトは振り向く。

そして少しの沈黙の後、大きな呻き声をあげて身体を縮小させた。

『…やめて、殺さない…で…?』

ワサトは小さな少年の姿に変わり、命乞いを始めた。

「…擬態か、小癪な真似をするんだな。」

「…っ!!」

少年の口についた血の跡、身体にこびり付いた肉片が先程の怪物と同じだと物語る。

それでも人間の容をしたものを殺す事に体が勝手に拒否反応を示す。

「…こ、こんな…の…!!」

「…やるしかねぇよ、死垂れ桜タナトス・ケラソス…っ!!」

紅輝こうきは覚悟を決めて桜の花弁を操る。

死体拍動カダベル・カルディア、δ星ワサトを殺せ…。」

或空あるく紅輝こうきに続くように、そこらに転がっている死体を操り始めた。

「こんなの…、ずるい…っ。」

すいは自身の能力で集めた水でワサトの前に壁を作り、紅輝こうき蒼月あるなの攻撃からワサトを守る。

「なにしてんだ!すい…っ?!」

柘榴ざくろと同じ姿に化けてるんだもん!…っ殺せるわけないでしょ!?」

「は、柘榴ざくろって、すいの弟…?」

困惑する人間たち、すいの作った水壁と紅輝こうきの桜の花弁がぶつかり合う。

「や、やめて…っ!」

すいがワサトの前に立ちはだかった。

桜の花弁がすいの身体を突き抜ける、或空あるくの操る死体がすいを喰らおうとする。

『あはっ、おねぇちゃんのばぁか。』


ずぷんっ


聞いたことのない嫌な音。

ワサトの腕が、すいの身体の中央を突き抜ける。

「きゃぁぁあ!?すいすい…?!」

「…はぁ、瑠璃石鎧ラピス・パノプリア。」

結藍ゆらんが身体を結晶化させて、ワサトの目の前まで突っ走る。

割れた右手の先、露わになったのは綺麗な青色をした石の断面。

その鋭い右手で、ワサトの腕を切り落とした。

解放されたすいの身体、結藍ゆらんはそれを抱き上げて蒼月あるなの元まで身を引いた。

蒼月あるなさん!すいの治療お願い!!」

「う、うん、ありがと。傷病転移ビオス・ユンクティオ。」

ぽわっと、優しい光がすいの身体を包み込む。

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