EPISODEⅩⅢ 火炎の猫と瑠璃の石

「…デュナミスを、架恋かれんの名の下に。」

μετενσάρκωσηメテンプスューコースィス…!」

或空あるくは再び輪廻転生を唱える。

架恋かれんの瞳が仄かに輝いて、そして、赤い炎が身体を纏った。

「ん…、なに…これぇ?!」

「自分の中に、炎を抑えつけてみろ…!」

或空あるく幽体空間メタ・アイオーンで幽体を遣って架恋かれんから出る炎を一緒に抑え込む。

次第に炎は小さくなり、小さな炎の塊が架恋かれんの足元に落ちた。

「ニャア…!」

そこには炎で出来た長い耳を持つ、猫が居た。

架恋かれんの肩に飛び乗って甘えるように頬に擦り寄ると、猫の首には花の首輪が付いた。

「え、なになに?!すっごい可愛いんだけど…!!」

架恋かれんのスマホにもQUASARクエイサーを入れておいた。確認してみるといい。」

架恋かれんは言われるがまま、スマホに入っていたQUASARクエイサーを起動した。


【Καλωσήρθατε στον-η-ο Καρεν.】

 §火炎纏猫〖フォティア・アイルーロス〗

  炎を纏った猫を従える事が出来る能力。自らが猫と同化して炎を操る事も出来る。

 §色彩花乱〖クローマ・リリィ〗

  傷を負わせた相手に精神を操る花の種を植え付ける能力。花が開花し全身に行き渡ると死ぬ。

 §・・・・・

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 §・・・・・

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「キミ、アイルーロスっていうんだ。」

「ニャアッ!」

架恋かれんの声に猫は満足そうに鳴くと、小さな火の玉となって消えていった。

すぅっと消えていった猫を物憂げな瞳で見上げた結藍ゆらんが、ぽつりと呟いた。

「僕も、特別になれるのかな…。」

それを聞き逃さなかった或空あるくが、結藍ゆらんの元へ近付く。

ひぃっと小さな悲鳴を上げて結藍ゆらんは後退り、架恋かれんすいに泣き付いた。

架恋かれん結藍ゆらんを真っ直ぐ見つめて瞳に炎を宿し、すいは掌に水の球を作って結藍ゆらんの眼前に突き出した。

「わ、わかった!やるよ…!!」

2人に無言の圧を掛けられて、結藍ゆらん或空あるくの前に首を垂れる。

「…デュナミスを、結藍ゆらんの名の下に。」

μετενσάρκωσηメテンプスューコースィス…!」

また、或空あるくは輪廻転生を唱えた。

その瞬間パキパキと何かが割れる音がして、結藍ゆらんの身体が砕け散った。

「あ、やば。砕けちまったか。」

碧く煌めく欠片を集めて身体の形に戻していくと、指先がぴくりと動いた。

そして、ゆっくりと結藍ゆらんとしての生命活動を再開した。

「…死んだかと、思った。」

結藍ゆらんは肩で息をしながらスマホに手を伸ばす。

QUASARクエイサーが起動した。


【Καλωσήρθατε στον-η-ο Ιυραν.】

 §瑠璃石鎧〖ラピス・パノプリア〗

  身体を結晶化させる能力。砕けても再生する事が出来る。

 §燃凍活力〖ケオパゴノ・エネルゲイア〗

  温度変化の能力。あらゆる物質の温度を自在に変化させる事が出来る。

 §・・・・・

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 §・・・・・

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


デュナミスとなって人成らざる存在になろうとも、負けることは許されない。

彼らの敗北は、この世界の終焉を意味するのだから。

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