EPISODEⅩⅡ 翡翠の少女

 短期間に幾度となく瞬間移動パラノイア・モンドを発動させ、

 大人数を移動させた影響で蒼月あるなは息を切らして青白い顔をしている。

「こ、ここは、アストラル…。ボクの創った世界…。」

 この場と皆の状況を3人に説明を行った。

 デュナミスのこと、紅輝こうき蒼月あるなの異能力のこと。

 或空あるくは細かく3人に教えて、皆にもデュナミスとなって戦ってほしい事を伝える。


「デュナミスの儀はオレと紅輝こうきでやる。蒼月あるなは少し休んどけ。」

 蒼月あるなの頭を小突いて優しく笑いながら3人に向き直った。

「…つまり、私達を異能力者にしようってこと?」

「へぇ~!なんか、楽しそうじゃん!!」

「じゃあ架恋かれんからやりなよ…。僕、怖いし…。」

 そんな会話の中、何かを決意したすい架恋かれん結藍ゆらんを制して或空あるくの前へと歩み出た。

「…私から、やって。その力で、あの怪物と戦うんでしょ?」

 震える身体は恐怖から来るものか、目の前で人間を殺された怒りから来るものか。


「…デュナミスを、すいの名の下に。」

μετενσάρκωσηメテンプスューコースィス…!」

 輪廻転生を唱えた或空あるく

 突如、すいの身体に衝撃が走った。

 痛みを感じる様子が無いにも拘らず、衝撃波に依り四肢はあらぬ方向に折り曲がる。

「どういうこと…?!私、全然痛くないんだけど!!」

「こ、これ…!見てる俺らの方が痛い…!!」

 紅輝こうきすいを見つめながら眉間にしわを寄せながら目を細める。

 少しして衝撃は止み、次にすいの髪の毛先から水に濡れていく。

 その水分が身体をまるごと飲み込んだ時、身体は正常な容に戻った。

「おぉ、私は水を自在に操れるみたいね。」

 掌の上に、雫を揺らめかせたまますいはスマホを取り出した。

 或空あるくが入れたQUASARクエイサーを起動した。


【Καλωσήρθατε στον-η-ο Σουι.】

 §翡翠輝石〖ネフリティス・カルテリアー〗

  強いダメージを受けても軽傷に変化させられる能力。その怪我で死ぬことは無い。

 §水星誕生〖エルミス・ギグネスタイ〗

  水を操る能力。水の無い場所でも空気中や上空の水分を集めて操る事が出来る。

 §・・・・・

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 §・・・・・

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


すいは水の球を掌の上で転がしながら、QUASARクエイサーの説明を眺める。

「あ、そういうこと…?だから痛くなかったんだ…。」

「えー!すい、すごぉい!!或空あるくくん、架恋かれんにもやってよ!」

水を自在に操るすいを見て目を輝かせた架恋かれんは、或空あるくにずいっと駆け寄った。

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