EPISODEⅨ 平穏の終焉

「とりあえず、すいの家に向かうか。」

そう言った紅輝こうきに連れられて、住宅街を歩く3人。

紅輝こうきにとっては、いつもの道、変わらない風景、平穏な毎日と同じ。

後ろから小学生男子数人の笑い声が聞こえる、平和な日常。


「…ん?…あれ?なんか揺れてないか…?」


そう気付いた、瞬間。

揺れる視界、穏やかな日々が音を立てて崩れ去る。

大規模な地震、大きく蠢いた世界が揚げた物凄い叫び声が響き渡った。

「ちっ!もう来たのかよ…!!」

「ちょっと!2人とも上を見て!!」

揺れに気付いた紅輝こうきと、何かの襲来を察した或空あるく蒼月あるな

そんな3人の頭上にギラッと閃く鋭い光。

まだ、昼間だというのにも関わらず、眩しく光るソレはいかづちのような速さで落下する。

「おい!何か落ちてくるぞ…!!」

そのいかづちのような光は、3人の真後ろに落下した。

『σκοτώνουν ανθρώπους.』

「…え?」

紅輝こうきの目線の先には、この世界のものと思えない悍ましい姿をした物体。

怪物、そう表現するのが最適と思える程に異様なソレは、謎の言語を発してこちらに近付いた。

紅輝こうきっ!!」

その場に立ち竦む紅輝こうき、前に居た小さな少年の中の1人が泣きながら逃げてくる。

『うわぁぁぁぁあああ!!』

逃げ遅れた2人の少年がソイツに捕まってしまった。

大きく口を開いたソレは長い舌でベロリと少年を舐めると、頭を噛み千切って咀嚼し始めた。

その子の頭蓋骨を嚙み砕く音が周囲に不快音として轟いた。

「い、いやだ…!!お、れも…っ?!」

叫びかけた少年も頭を喰われて、首無し死体となってしまった。

ソイツはゴクリと鈍く喉を鳴らして少年の頭を飲み込んだ。

首の無くなり絶命した少年たちの体は、無残にも投げ捨てられて道路脇に転がった。

「…っあ、あ、ぁ…」

紅輝こうきが声にならない声を発する。

「い、一旦逃げるよ!紅輝こうき!!」

或空あるくと手を繋いだ蒼月あるなが、手を伸ばす。

震える脚でなんとかソイツから離れて3人はその場からアストラルに移動した。


=アストラル=

「あ、ぁあ…あれ、なんなんだよ…っ?!」

興奮冷めやらぬ紅輝こうきが捲し立てるように口を開く。

「あれが説明したこの世界の危機だよ…。」

「だから時間が無いと言っただろ。ディオスクロイは人間の殲滅を開始した。」

何も無いアストラルで3人は立ち尽くす。

その後、誰も言葉を発することが出来ずに、ただただ時間だけが過ぎていく。

そんな中、或空あるくは瞳に這入り込んだクェイサーを取り出した。

「なに、する気なの…?」

「オレの能力も、開放しておくんだよ。」

蒼月あるなの問い掛けに答えた或空あるくは、そっと目を瞑った。


蒼月あるな紅輝こうき。オレが暴走したらよろしくな。」

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